2022電気化学秋季大会

特別講演一覧

2022電気化学秋季大会の特別講演をご紹介いたします。
会場リンクより講演の概要をご覧いただけます。
 
会場 講演日時 講演者名 所属
S1 9月8日(木)13:45~14:30 高橋 康史 名古屋大学
9月9日(金)10:45~11:30 芝 駿介 愛媛大学
9月9日(金)13:45~14:30 白井 理 京都大学
S2 9月8日(木)12:00~12:30 山方 啓 岡山大学
9月8日(木)15:45~16:15 宮内 雅浩 東京工業大学
9月9日(金)10:45~11:15 西 弘泰 富山大学
S3 9月8日(木)15:45~16:15 山﨑 康臣 東京大学
9月8日(木)16:15~17:00 正岡 重行 大阪大学
9月9日(金)11:30~12:00 諸藤 達也 学習院大学
9月9日(金)14:30~15:15 本倉 健 横浜国立大学
S4 9月9日(金)9:30~10:00 朝倉 則行 東京工業大学
9月9日(金)10:00~10:30 豊田 正嗣 埼玉大学
9月9日(金)10:45~11:15 加藤 優 北海道大学
9月9日(金)11:15~11:45 吉川 佳広 産業技術総合研究所
S6 9月8日(木)12:00~12:30 平山 雅章 東京工業大学
9月9日(金)12:00~12:30 津田 哲哉 千葉大学
S7
 
9月8日(木)10:45~11:30 梅澤 成之 星和電機株式会社
9月8日(木)11:30~12:15 小野 新平 電力中央研究所
9月8日(木)14:45~15:30 大谷 実 筑波大学
9月8日(木)15:45~16:30 折笠 有基 立命館大学
S8 9月9日(金)11:45~12:30 星 芳直 名古屋工業大学
9月9日(金)13:45~14:30 貝沼 重信 九州大学
S10 9月8日(木)13:45~14:30 増田 卓也 物質・材料研究機構
S11 9月9日(金)10:45~11:30 宇恵 誠 早稲田大学
9月9日(金)13:45~14:30 野田 達夫 大阪公立大高専
S12 9月8日(木)15:45~16:15 上野 祐子 中央大学
9月8日(木)16:15~17:00 篠原 寛明 富山大学
9月9日(金)13:45~14:15 上田 太郎 長崎大学
S13
 
9月8日(木)10:00~10:30 尾原 幸治 高輝度光科学研究センター
9月8日(木)12:00~12:30 稲葉 稔 同志社大学
9月8日(木)13:45~14:15 高橋 幸生 東北大学
9月8日(木)15:45~16:15 安部 武志 京都大学
9月9日(金)9:45~10:15 笠松 秀輔 山形大学
S14 9月8日(木)15:45~16:30 伊崎 昌伸 豊橋技術科学大学
9月9日(金)10:45~11:30 邑瀬 邦明 京都大学


【S1 特別講演】
 
S1. 分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
< Molecularly Functionalized Electrodes - Fundamentals and Applications >
9月8日(木)13:45~14:30
高橋 康史(名古屋大学大学院電子工学専攻)
ナノ電極・ナノピペットを用いた電気化学イメージング技術の新展開

 細胞から蓄電材料に至るまで、固液界面では、構造とともに化学物質の濃度が時々刻々と変化している。このような固液界面現象の理解には、液中で化学物質を高い時空間分解能で計測する技術が不可欠である。微小電極やナノピペットをプローブに用いた電気化学イメージング技術は、液中に存在する試料近傍の電気化学活性種や表面形状をマイクロ・ナノスケールで可視化できる。本講演では、これまで開発を行ってきた走査型電気化学顕微鏡、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡などの計測手法の原理からバイオイメージングへの活用までを発表する。

S1. 分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
< Molecularly Functionalized Electrodes - Fundamentals and Applications >
9月9日(金)10:45~11:30
芝 駿介(愛媛大学大学院理工学研究科)
ボトムアッププロセスによる金属ナノ構造薄膜の形成および電極触媒への応用

 金属ナノ粒子は従来のバルク構造とは異なる独特の触媒活性が発現することが知られている。さらにナノポーラス金属は、内部のナノ空孔が反応場として働くため、独特の機構で触媒反応が進行する点で面白い。本発表では、共スパッタ法と電析法による新規ナノ構造電極触媒形成法とその電極触媒応用について報告する。具体的には、共スパッタ法による二元金属ナノ材料埋め込みカーボン薄膜の形成、およびエマルション溶液をソフトテンプレートとしたナノポーラス金属膜の電析形成について紹介し、それらを用いた糖やメタノール等の有機小分子の酸化、および酸素や二酸化炭素の還元反応に対する電極触媒作用について報告する。

S1. 分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
< Molecularly Functionalized Electrodes - Fundamentals and Applications >
9月9日(金)13:45~14:30
白井 理(京都大学農学研究科)
細胞体における膜電位変化の伝播-シグナル伝達とエネルギー産生-

カリウムチャネルやナトリウムチャネルの機能を模倣した電気化学セルを考案し、それらを組み合わせることでモデル神経細胞を構築した。各チャネルの特性を考慮し、膜電位変化の新規伝播機構を提案した。また、ホジキン-ハクスレーモデルに基づく電位固定法の解析ではアーティファクトを生じる危険性が高いことも明らかにした。細胞体での膜電位変化は局所的な環電流が引き起こすが、密着した細胞間ではこの環電流が電気刺激となり、膜電位変化を引き起こすこともモデル系で明らかにした。さらに、同一細胞内で局所的に異なる膜電位を発生させて発電する電気魚に着目し、その発電機構についても検討したので、類似の塩分濃度差発電と比較する。

 
【S2 特別講演】
 
S2.光電気化学とエネルギー変換
< Photoelectrochemistry for Energy Conversion >
9月8日(木)12:00~12:30
山方 啓(岡山大学)
時間分解分光計測による光触媒の高活性化因子の解明

太陽光を用いて水から水素を製造できる光触媒が注目されている。しかし、実用的に用いるためには活性を向上させる必要がある。光触媒の活性は、半導体のバンドギャップを光で励起して生成したキャリアの再結合速度と、反応分子への電荷移動速度の比で決まる。したがって、活性を向上させるためには、光励起キャリアの動きやエネルギー状態を理解し、これらを制御することが重要である。そこで、我々は可視から中赤外域の過渡吸収をフェムト秒から秒の時間領域で測定できる装置を製作し、様々な光触媒材料における光励起キャリアの挙動を調べてきた。本講演では、それらの研究成果の一部を発表する。

S2.光電気化学とエネルギー変換
< Photoelectrochemistry for Energy Conversion >
9月8日(木)15:45~16:15
宮内 雅浩(東京工業大学 物質理工学院)
半導体光触媒によるメタンの二酸化炭素改質

光触媒を用いた二酸化炭素還元の研究の多くは水中での反応を前提としていた。本研究では、温室効果ガスである二酸化炭素とメタンを合成ガスに転換できるドライリフォーミング反応(DRM: CH4 + CO2 ➝ 2CO + 2H2)を光照射で進行させることを試みた。半導体の光励起キャリアが活性点となり、格子酸素イオンがメディエーターとして機能する機構により、低温でも高活性、かつ、炭素析出することなく長期間安定にDRM反応を進行させることができた。

S2.光電気化学とエネルギー変換
< Photoelectrochemistry for Energy Conversion >
9月9日(金)10:45~11:15
西 弘泰(富山大学学術研究部理学系)
光電気化学的手法による金属および化合物ナノ構造の作製

金や銀ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)特性は、粒子のサイズや形状、配列、粒子間距離など大きく依存する。思い通りの形や配列のナノ粒子・ナノ構造を作製することができれば、その光学特性を自在に制御でき、光機能を引き出すことが可能となる。制御されたナノ粒子・ナノ構造の作製法として、化学還元法や電子線リソグラフィー法などが広く知られているが、近年、LSPRの緩和過程で生じる電子正孔対によって、ナノ粒子上で局所的に光電気化学反応を駆動し、ナノ粒子を加工できることが明らかになってきた。本講演では、光を用いた種々の金属ナノ構造の作製に関する最近の研究成果について述べる。また、偏光照射によって形成される金属酸化物の周期構造に関する研究成果も紹介する


【S3 特別講演】
 
S3.有機電子移動化学が創り出す新合成・新機能・新材料
< Organic Electrochemistry for Novel Synthetic Methodologies, Functions, and Materials >
9月8日(木)15:45~16:15
山﨑 康臣(東京大学大学院工学系研究科 応用化学専攻)
金属錯体を用いたCO2還元光触媒反応における溶媒効果

金属錯体を用いたCO2還元光触媒反応は、反応選択性や分子設計の自在さの観点から注目されている。一般的な反応系は、主に「光増感錯体」、「触媒錯体」、「還元剤」から構成されており、様々な組み合わせが試行されてきた。一方、反応場である「反応溶媒」は、光触媒反応の効率を大きく左右することが知られているものの、その要因は詳細に検証されてきていない。それは、触媒上でのCO2還元反応、構成要素間の光誘起電子移動反応、還元剤の酸化反応等の全ての素過程が溶媒の影響を受けてしまう複雑系であるためと考えられる。本研究では、様々な有機溶媒やイオン液体を反応溶媒に用いた光触媒系における各素過程の効率を系統的に調査することで、複雑な光触媒系における「溶媒効果」の本質を考察する。

S3.有機電子移動化学が創り出す新合成・新機能・新材料
< Organic Electrochemistry for Novel Synthetic Methodologies, Functions, and Materials >
9月8日(木)16:15~17:00
正岡 重行(大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻)
金属錯体を触媒とする光/電気化学的小分子変換

エネルギー・環境問題の解決は人類が直面している喫緊の課題である。この状況下で、太陽光などの再生可能エネルギーやそれにより得られる電気化学エネルギーを用いて、二酸化炭素や水などの地球上に豊富に存在する小分子(遍在小分子)を高付加価値分子へと変換する反応系の開発は重要な研究課題であるといえる。我々は、生体内での小分子変換に対して中心的な役割を担っている「金属錯体」に着目し、金属錯体を対象とした触媒開発基礎研究を展開してきた。本発表では、遍在小分子を光/電気化学的に変換可能な金属錯体触媒の設計と機能について、最近の研究成果を中心に紹介する。

S3.有機電子移動化学が創り出す新合成・新機能・新材料
< Organic Electrochemistry for Novel Synthetic Methodologies, Functions, and Materials >
9月9日(金)11:30~12:00
諸藤 達也(学習院大学)
特異な求電子的アリール化試薬:S-アリールフェノチアジニウム

有機電子移動反応は、電子の授受を駆動力とした他の手法では難しい分子変換が可能となり、古くから研究されている。また、近年では光触媒や電解装置を用いた電子移動反応が、化学酸化還元剤を用いないアプローチとして注目を集めている。このような背景のもと、申請者はイオン性化合物の特異な電子状態および反応性を期待して、イオン性化合物が原料または生成物となる電子移動反応開発に取り組んだ。
 より具体的には、エネルギー的に不利な電子移動を利用した光触媒的アニリン合成法の開発、C,O-二座配位子を有するシリカートを用いた光触媒的ラジカル反応、キノリンとアルケンの脱芳香族的光環化付加におけるプロトン化による反応促進効果、電気化学的手法によるS-アリールフェノチアジニウムの合成とその有機合成的応用について発表する。

S3.有機電子移動化学が創り出す新合成・新機能・新材料
< Organic Electrochemistry for Novel Synthetic Methodologies, Functions, and Materials >
9月9日(金)14:30~15:15
本倉 健(横浜国立大学 大学院工学研究院)
機能集積型触媒を用いる高効率・高難度分子変換反応

 高機能触媒の開発と化学反応促進に関する下記の3つのトピックスに関して講演する:(1)固体表面に金属錯体・有機分子・担体表面官能基を集積した固定化触媒による協奏的触媒作用、(2) 触媒粒子間の水素逆スピルオーバー現象を活用したアルカンC-H結合活性化反応、(3)分子触媒とケイ素系還元剤を用いる二酸化炭素の還元反応・還元的機能化反応。例えば、Rh錯体と第三級アミンをシリカ表面に共存させた触媒は、オレフィンのヒドロシリル化反応に極めて高い活性を示し、Rh基準の触媒回転数は190万回に達した。各種固体酸触媒と担持Pdナノ粒子触媒の混合系では、ベンゼンと単純アルカンとの直接的脱水素カップリング反応を実現した。これらの触媒系における高活性発現のメカニズムに関しても紹介する。

 
【S4 特別講演】
 
S4.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
9月9日(金)9:30~10:00
朝倉 則行(東京工業大学)
酸化還元タンパク質の分子内電子移動における指向性の解析

生物のエネルギー生産はタンパク質の酸化還元反応の連鎖の中で行われている。これらに関わる酸化還元タンパク質間およびタンパク質内の電子移動反応には指向性があり、秩序を保った高効率な反応が進行していると考えられる。そこで、「電子はタンパク質の中をどのように流れているのか」について注目し、ヘムタンパク質シトクロムc3および酵素ヒドロゲナーゼの電子移動反応のメカニズムを明らかにしてきた。本講演では、配向を制御したタンパク質単分子層を利用した分光電気化学、プローブ電気化学、電気化学水晶振動子マイクロバランス法によって明らかにした電子移動指向性について紹介する。

S4.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
9月9日(金)10:00~10:30
豊田 正嗣(埼玉大学大学院理工学研究科)
植物の全身を高速伝播する電気化学シグナル

植物に神経や筋肉は存在しない。しかし、オジギソウやハエトリソウのように、触れられたことを感じて、瞬時に葉を動かす植物種も存在する。近年、バイオセンサーやライブイメージングの技術躍進を背景に、植物にも動物と変わらないような長距離・高速・電気化学シグナルが存在することが見えてきた。本講演では、植物がグルタミン酸受容体やカルシウムシグナルのような進化的に広く保存された仕組みに、植物特有の組織や機能を組み合わせることで、接触や傷害などの様々な機械刺激を感知して、その情報を全身に伝えていることを紹介する。

S4.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
9月9日(金)10:45~11:15
加藤 優(北海道大学大学院地球環境科学研究院)
膜貫通型金属酵素の電気化学と振動分光計測

 膜タンパク質の中でも,遷移金属錯体を内包する膜貫通型金属酵素は生体内電子移動や高難度物質変換に関与しているため,それらの動作原理の理解は生体内反応理解,人工触媒やセンサー開発等の観点で極めて重要である.本発表では,タンパク質フィルム電気化学と表面増強赤外吸収(SEIRA)分光測定の融合により明らかにしてきた膜貫通型金属酵素の電極表面での酵素活性,酵素-電極界面電子移動経路,人工脂質二分子層形成過程,脂質–タンパク質間相互作用等について紹介する.

S4.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
9月9日(金)11:15~11:45
吉川 佳広(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
表面分子集積と走査型プローブ顕微鏡による解析

我々は、トップダウン手法では到達が困難な微細構造を形成する手法の開拓を目指し、分子内に相互作用部位を導入した集積用分子の合成による二次元パターン制御を試みている。形成された二次元構造は、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて評価・解析してきた。このような取り組みの中で、ハロゲン結合の導入や分散力の調節により、ハニカム構造やジグザグ構造など多様な二次元構造の形成や多成分集積が可能であることを明らかにしてきた。最近では、バイオベース原料から集積用分子を合成し、金属錯体形成による大面積分子集積についても取り組んでおり、これらの内容について当日紹介させて頂く。

 
【S6 特別講演】
 
【特別講演】
S6.電池の新しい展開

< New Aspects of Battery Technology >
9月8日(木)12:00~12:30
平山 雅章(東京工業大学 物質理工学院)
薄膜型全固体電池における光リチウム脱離現象

光照射によるイオン脱離・挿入現象は半導体光電極で古くから知られるが,電極の光腐食や電解液分解を伴うことが,反応機構の理解やデバイス応用を妨げてきた.本研究では,リチウムイオン輸率が1で,電位窓が広い固体電解質を用いた薄膜型全固体電池を作製し,副反応を抑制することで,光照射下におけるリチウム脱離・挿入現象を調べた.光電気化学測定と構造解析から,LixTiO2がn型半導体光電極として機能し,紫外光照射でリチウム脱離反応が促進されることを見いだした.サイクル可逆性にも優れ,全固体電池が光電気化学デバイスに適することを明らかにした.

【特別講演】
S6.電池の新しい展開

< New Aspects of Battery Technology >
9月9日(金)12:00~12:30
津田 哲哉(千葉大学 大学院工学研究院)
アルミニウム金属負極アニオン二次電池の現状と課題

二次電池に対する社会からの期待は増大する一方であり、二次電池の開発競争は年々激しさを増している。その多くは、次世代を担う超高性能二次電池に関するものであるが、現行のリチウムイオン二次電池に迫る性能を有する安価な汎用元素のみで構成される二次電池をターゲットとするものも存在する。我々はアルミニウムの優れた資源性と高い理論容量に着目し、アルミニウム金属負極を利用したアニオン二次電池の開発に取り組んできた。本講演では、アルミニウム金属負極アニオン二次電池の研究開発状況とこの電池系が社会実装に向けて克服しなければならない課題について概説する。

 
【S7 特別講演】
 
【特別講演】
S7.キャパシタ技術の新しい展開

< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors > 
9月8日(木)10:45~11:30
梅澤 成之(星和電機株式会社 研究開発部)
金属有機構造体、共有結合性有機構造体の焼成過程における多孔質炭素化メカニズムの分析 ~キャパシタ電極への応用~

 本講演では、金属有機構造体(MOFs)、共有結合性有機構造体(COFs)の焼成過程における、炭素化、細孔形成メカニズムの分析から、得られた炭素の電気二重層キャパシタ電極としての評価までの一連の研究内容について報告する。前半では、亜鉛含有MOFsの高温領域での、炭素、酸素、亜鉛の挙動に着目し、出発物質の組成が如何にして多孔質化に寄与するのか、後半ではボロン含有COFs由来炭素のキャパシタ電極としての可能性について、それぞれ報告する。
MOFs/COFsは焼成前駆体として、組成、結晶構造が明確であるため、これらの焼成過程を詳細に調べることが、今後のキャパシタ電極用活性炭の開発に応用できると考えている。

【特別講演】
S7.キャパシタ技術の新しい展開

< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors > 
 9月8日(木)11:30~12:15
小野 新平(一般財団法人電力中央研究所)
電気二重層エレクトレットの新展開

 一般に電池やコンデンサなどのイオントロニクス開発では、イオン伝導は重要なパラメータの一つである。電池やコンデンサは、蓄積したエネルギーを速やかに放出する必要があり、イオン伝導の向上が性能の鍵を握っている。
本講演で紹介する電気二重層エレクトレットは、イオン液体に電圧を印加した際に形成される電気二重層をあえて固定化し、エレクトレット(永久電荷)とするところに特徴がある。電気二重層をエレクトレット化することで、電気二重層が作り出す超強電界を貼り付けるだけで利用することができるなどさまざまな応用展開が考えられる。講演では、電気二重層エレクトレットの振動発電素子などのへの応用展開についても紹介する。

【特別講演】
S7.キャパシタ技術の新しい展開

< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors > 
9月8日(木)14:45~15:30
大谷 実(筑波大学計算科学研究センター)
密度汎関数法と溶液論のハイブリッド法を用いた電気二重層キャパシタの電極界面シミュレーション

電極と電解液の界面は、金属電極と液体である電解液の界面であり、固体と液体という異なる相が接している。ここで起こる電気化学反応は、早い電子移動と遅い液体の緩和を同時に考慮する必要があり、理論的に扱うには計算時間や規模の面で課題が多い。我々は、密度汎関数法を用いて化学反応に関与する電子を量子力学的に扱い、液体の緩和現象は古典溶液論を用いて記述する方法論の開発を行なっている。この手法を用いることにより、電気二重層の厚みなどを定量的に評価することが可能となる。講演では、方法論の簡単な説明を行ったのち、電気二重層キャパシタへの最近の応用例を紹介する

【特別講演】
S7.キャパシタ技術の新しい展開

< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors > 
9月8日(木)15:45~16:30
折笠 有基(立命館大学)
多価イオン蓄電反応の高速化とキャパシタ技術

多価イオンの蓄電反応では、その遅い固相反応の影響で、リチウムイオン電池のようなインターカレーション反応が、進行しにくい。そこで、キャパシタ技術を応用した電気化学反応を用いて、多価イオン蓄電反応の高速化を試みた。

 
【S8 特別講演】
 
【特別講演】
S8.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術

< Corrosion Science and Surface Control Engineering Supporting Social Infrastructure >
9月9日(金)11:45~12:30
星 芳直(名古屋工業大学)
電気化学インピーダンス法を駆使した自動車・エネルギー材料の腐食劣化機構解析

電気化学インピーダンス法の特長を最大限に生かした自動車・エネルギー材料の腐食評価・モニタリングに関する講演をおこなう。本グループが展開している3Dインピーダンス法による特定環境下における自動車材料の腐食劣化モニタリングや燃料電池自動車材料の高耐食化に向けた新規表面処理法の開発など、注目研究分野における高耐食材料開発に関連した研究内容を紹介する。

【特別講演】
​S8.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術

< Corrosion Science and Surface Control Engineering Supporting Social Infrastructure >
9月9日(金)13:45~14:30
貝沼 重信(九州大学大学院工学研究院)
鋼構造物の重度腐食等に対する表面処理技術の開発

 大気環境に曝される鋼構造物では,飛来海塩などの塩類が付着し,雨洗されない部位に重度腐食が多数報告されている.重度腐食が一旦,生じると塗替え塗装前の鋼素地調整で腐食孔底部の塩類や腐食生成物を完全に除去することは困難になる.その結果,塗替え後の早期に進行性の早い塗膜下腐食が局部的に発生・進行する場合が多く,部材破断や構造物の崩壊に至った事例もある.本講演では,鋼構造物の重度腐食事例とそのブラストによる表面処理の課題について概説する.また,ブラスト処理では蘇生困難な重度腐食部材に対して,経済的かつ効果的な表面処理を実現する研削材を超高圧水に混入した混相流体による新技術(AWT(Abrasive Water-jet Treatment))の基礎的検討と構造物への適用性について紹介する.


【S10 特別講演】 
 
【特別講演】
S10.ナノスケール界面・表面の構造とダイナミクス

< Structure and Dynamics on Nano-scale Interface and Surface >
9月8日(木)13:45~14:30
増田 卓也(物質・材料研究機構)
全固体電池の界面プロセス・電極反応を対象としたマルチモーダル解析

車載を見通した酸化物型全固体電池の実現に向けて、高性能な酸化物系固体電解質材料の創出に加え、1.優れたイオン伝導性を有する界面の構築、2.充放電時における電極相での反応理解、3.イオン輸送抵抗に影響する界面因子の解明が課題となっている。本講演では、1-3の課題への取り組みのうち、X線吸収微細構造法およびX線回折法による界面接合プロセスの観察、独自に開発したオペランドX線光電子分光法による充放電動的挙動の追跡、さらにはイオン輸送時における固固界面その場構造観察について、計測システムの紹介を交えつつ、最新の成果を発表する。

 
【S11 特別講演】
 
【特別講演】
S11.明日をひらく技術・教育シンポジウム

< Symposium of Technology and Education for the Future >
9月9日(金)10:45~11:30
宇恵 誠(早稲田大学)
車載用リチウムイオン電池の現状と動向

全世界における新車販売台数において、完全電気自動車(BEV)がハイブリッド車(HEV)を越した2021年をEVシフト元年ということができる。我が国においても、EV専用プラットホームを採用したBEVがOEM各社から販売されるようになり、ハイブリッド車王国からの変化の兆しが現れてきた。本講演では全世界の主要BEVを紹介するとともに、その性能向上を支えている車載用リチウムイオン電池について、技術的観点から現状と動向について、私見を交えて解説をしてみたい。

【特別講演】
S11.明日をひらく技術・教育シンポジウム

< Symposium of Technology and Education for the Future >
9月9日(金)13:45~14:30
野田 達夫(大阪公立大高専)
電気化学に基づくセンサ・電池・着色法・教材の開発

酵素膜電極を用いたバイオセンサ,貴金属めっき電極でのグリセリン酸化,アルミニウムの電解着色について,本研究グループで取り組んできた内容を報告する.また,所属機関において実施している電気化学関連の実験実習についても紹介する.


 【S12 特別講演】
 
【特別講演】
S12.化学センサの新展開

< The Latest Development in Chemical Sensors >
9月8日(木)15:45~16:15
上野 祐子(中央大学理工学部応用化学科)
分子認識機能材料の創生とマイクロ空間における微小化学・バイオセンシング応用

本講演では、清山賞受賞の理由となった二つの研究テーマおよび、最近取り組んでいるテーマについて紹介する.一つ目は、メソポーラスシリカを用いたベンゼンを高感度に選択吸着する分子認識素子の研究で、携帯型マイクロガスセンサに応用し、排気ガスモニタリングで有用性を実証したので、紹介する。二つ目は、単層グラフェンに蛍光標識したアプタマを修飾した機能材料の研究で、マイクロ流路と組み合わせてガンマーカなどのタンパク質を簡便に検出可能なバイオセンサに応用したので、紹介する。最後に、単層グラフェンを電極に用いた場合に、カリウムイオン濃度に依存した特徴的な電気化学検出特性を見出したので、報告する。

【特別講演】
S12.化学センサの新展開

< The Latest Development in Chemical Sensors >
9月8日(木)16:15~17:00
篠原 寛明(富山大学学術研究部工学系)
バイオセンシングの要素技術の進展と今後の展望

 バイオセンサが誕生し50年以上になるが、この間に遺伝子工学を利用する生体材料の設計、トランスデュ―サと情報処理技術の発達などバイオセンサ・センシングの要素技術の著しい進展があった。
本報では、非天然アミノ酸導入タンパク質の合成、表面プラズモン共鳴イメージングやケミカルCCD、界面導電現象を利用するバイオセンシングなど、著者とその共同グループの研究を中心にこうした要素技術の進展と今後の展望について述べたい。

【特別講演】
S12.化学センサの新展開

< The Latest Development in Chemical Sensors >
9月9日(金)13:45~14:15
上田 太郎(長崎大学)
機能性セラミックスのガス検知機能最適化による高感度ガスセンサの開発

 固体電解質型と半導体ガスセンサの応答特性を改善するためのガス検知機能の最適化について、筆者の最近の研究成果を中心に紹介する。固体電解質型センサについては、電極反応場である3相界面での被検ガスに対する電気化学的な反応活性を向上できるように、検知極の組成と構造を最適化することで、トルエンやCOの検知特性を高感度化できた結果を報告する。また、半導体ガスセンサは、感ガス体の構造を多孔質化することで、被検ガスが酸化物内を効率的に拡散でき、高分散添加した貴金属の触媒効果も同時に向上できたことにより、NO2やメチルメルカプタン、アセトンを高感度検知できた結果を報告する。

 
【S13 特別講演】
 
【特別講演】
S13.蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学

< Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices >
9月8日(木)10:00~10:30
尾原 幸治(高輝度光科学研究センター)
結晶化ガラス界面の分子振動に基づくイオン輸送解明

Li3PS4ガラスは蓄電固体デバイスの固体電解質として有力な候補であり、さらに一部結晶化させることによりイオン伝導性が向上する。一方AIMDシミュレーションからは、PS4アニオンの分子振動がLiイオン輸送に深く関係している可能性が近年示唆された。我々もガラス中の分子振動を考慮し、結晶化ガラス界面の構造評価を試みた。分子振動に基づいて、Bader charge計算からLiイオンの電荷を評価した結果、Liイオンの電荷がPS4アニオンに呼応して振動し、ガラス中で一見無秩序に見えていたLiイオンが振動の大きいものと小さいものに分類されることを確認した。講演ではこれらの詳細と、イオン輸送との相関性について議論する。

【特別講演】
S13.蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学

< Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices >
9月8日(木)12:00~12:30
稲葉 稔(同志社大学理工学部)
リチウムイオン電池負極とSEI形成

代表的なリチウムイオン負極(黒鉛、シリコン、リチウム金属)上に生成するSolid Electrolyte Interphase (SEI)の形成機構とその機能に関して研究の歴史を含めて概説する。また、演者のこれまでの経験をもとに、シリコン、リチウム金属のような高容量負極を用いる際にどのような電解質溶液を選択し、どのようなSEIを形成すべきかを論ずる。

【特別講演】
S13.蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学

< Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices >
9月8日(木)13:45~14:15
高橋 幸生(東北大学)
X線タイコグラフィによる蓄電固体材料のナノスケール微細構造・化学状態イメージング

X線タイコグラフィは、試料に干渉性の良いX線を照射した際に遠方で観測される回折強度パターンに位相回復計算を実行することで試料像を再構成する顕微イメージング技術である。X線タイコグラフィはナノスケールの高い空間分解能を有し、電子顕微鏡では観察の難しい厚い試料を非破壊で観察できることが特長である。X線タイコグラフィを蓄電固体材料の観察に適用すると界面含む試料全体の微細構造と化学状態を可視化することできる。本講演では、X線タイコグラフィの原理と第三世代放射光施設SPring-8において開発してきたX線タイコグラフィ計測システムの概要に加え、蓄電固体材料の微細構造・化学状態イメージングに応用したいくつかの例について紹介する。

【特別講演】
S13.蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学

< Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices >
9月8日(木)15:45~16:15
安部 武志(京都大学)
フッ化物シャトル電池の現状と展望

RISINGプロジェクトで研究開発をしているフッ化物シャトル電池についての現状と展望を述べる。

【特別講演】
S13.蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学

< Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices >
9月9日(金)9:45~10:15
笠松 秀輔(山形大学)
第一原理基機械学習モデルによる蓄電固体材料中イオン分布のモンテカルロシミュレーション

蓄電デバイス創成のためには、蓄電固体材料中の元素配置の規則・不規則性や界面イオン蓄積現象の微視的理解が欠かせない。そして、「原子スケールで何が起こっているのか」を理論的に可視化するための手法として、第一原理計算への期待は大きい。しかしながら、蓄電固体材料は多数のイオン・欠陥種による膨大な配置自由度を有しているため、熱力学・電気化学の原理に基づいたモデリングを計算コストの大きい第一原理計算だけで行うのは困難である。そこで我々は、第一原理計算、機械学習、そして高並列統計熱力学計算手法を組み合わせるabICS (ab Initio Configuration Sampling)フレームワークを開発し、この問題に取り組んでいる。講演では、本手法およびいくつかの適用例について紹介する。

 
【S14 特別講演】
 
【特別講演】
S14.材料電気化学が拓く金属・半導体の技術革新

< Innovation in Metals and Semiconductors Pioneered by Materials Electrochemistry >
9月8日(木)15:45~16:30
伊崎 昌伸(豊橋技術科学大学大学院工学研究科機械工学専攻)
熱力学に立脚した酸化物形成のための水溶液電気化学プロセス設計

熱力学に立脚して計算・描画した水溶液中の溶解化学種、電位-pH図、溶解度曲線を活用することによって、酸化物半導体・強磁性体の直接形成、酸化物の物性制御のための不純物添加・制御、太陽光エネルギーを活用して電力や水素を生成する光電変換素子形成のための水溶液電気化学プロセスを設計し、その有効性を実証してきた。本講演では、ZnOやCuOなどの電気化学的直接形成、ZnOへのClやFeなどの不純物添加による伝導性・強磁性の付与と制御、単一水溶液からのCuO-Cu2O積層体やナノ混合体の直接形成、などの実例を引きながら、熱力学に立脚した酸化物形成のための水溶液電気化学プロセス設計、について考える。

【特別講演】
S14.材料電気化学が拓く金属・半導体の技術革新

< Innovation in Metals and Semiconductors Pioneered by Materials Electrochemistry >
9月9日(金)10:45~11:30
邑瀬 邦明(京都大学工学研究科)
超濃厚電解液を活用した電析・電気めっき

金属や化合物を電解液から電気化学的に析出させる「電析」は材料工学のさまざまな場面で用いられる要素技術である。電析技術では一般に、濃度1 mol L–1レベルの金属塩を含む電解液が使われる。水溶液系では、この濃度はモル分率2% 程度に相当し、溶媒の水分子の多くはイオンとの相互作用が小さい自由水として存在する。これに対して最近、金属塩濃度をさらに高め、自由な溶媒分子が少ない環境にある超濃厚電解液が電気化学分野で再認識されている。超濃厚化による副反応(水溶液系では水素発生)の低減や、このような特殊環境でのみ安定に生じる錯体種の活用が期待される。本講演では、超濃厚電解液を用いた、演者の最近の電析研究事例を紹介する。