電気化学会第90回大会

特別講演一覧

電気化学会第90回大会の特別講演をご紹介いたします。

下記会場より講演の概要をご覧いただけます。
 
会場 講演日時 講演者名 所属
S2 3月27日(月)13:00~13:45 吉田 司 山形大学
3月27日(月)13:45~14:30 松田 翔風 弘前大学
3月27日(月)14:45~15:30 中村 龍平 理化学研究所
3月27日(月)15:30~16:15 春山 哲也 九州工業大学
S3 3月27日(月)10:30~11:00 伊藤 省吾 兵庫県立大学
3月27日(月)11:45~12:00 オレグ・ディミトリエフ ウクライナ国立学士院半導体物理研究所
3月27日(月)14:45~15:30 堂免 一成 東京大学・信州大学
3月28日(火)11:15~11:30 川脇 徳久 東京理科大学
S4 3月27日(月)15:45~16:15 橋本 卓也 理化学研究所開拓研究本部
3月27日(月)16:15~17:00 矢島 知子 お茶の水女子大学
3月28日(火)10:15~10:45 生長 幸之助 産業技術総合研究所・触媒化学融合研究センター
3月28日(火)10:45~11:30 石船 学 近畿大学理工学部 応用科学科
S5 3月27日(月)13:00~13:30 末永 智一 東北大学
3月28日(火)9:15~9:45 富井 健太郎 産業技術総合研究所
3月28日(火)9:45~10:15 難波 啓一 大阪大学大学院生命機能研究科
3月28日(火)10:15~10:45 小倉 卓 日光ケミカルズ株式会社
3月28日(火)10:45~11:15 佐藤 英俊 関西学院大学生命環境学部
S6 3月28日(火)11:30~12:00 上田 幹人 北海道大学
S7 3月28日(火)11:30~12:00 兵頭 潤次 九州大学
S8 3月27日(月)11:30~12:00 金村 聖志 東京都立大学
3月28日(火)11:30~12:00 井手本 康 東京理科大学理工学部
S9 3月29日(水)15:15~16:00 徳増 崇 東北大学流体科学研究所
S10 3月27日(月)11:15~12:00 松本 太 神奈川大学
3月27日(月)13:45~14:30 三尾 巧美 株式会社ジェイテクト
3月27日(月)15:30~16:15 加藤 秀実 東北大学金属材料研究所
3月27日(月)17:00~17:45 内田 悟史 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
S12 3月27日(月)11:15~12:00 秋山 英二 東北大学金属材料研究所
3月27日(月)13:00~13:45 菊地 竜也 北海道大学大学院工学研究院
S13 3月27日(月)16:30~17:15 清水 康博 長崎大学大学院工学研究科
3月29日(水)10:30~11:15 珠玖 仁 東北大学大学院工学研究科
S14 3月27日(月)11:15~11:45 鳥本 司 名古屋大学大学院工学研究科
S15 3月27日(月)13:00~13:30 松井 淳 山形大学理学部
S16 3月27日(月)13:00~13:45 叶 深 東北大学理学研究科化学専攻
S17 3月29日(水)14:00~14:45 片倉 勝己 奈良工業高等専門学校 物質化学工学科
S18 3月27日(月)13:00~13:45 田中 晃司 東京電力エナジーパートナー株式会社
3月27日(月)13:45~14:30 中島 啓介 日本ガイシ
3月27日(月)14:30~15:15 重松 敏夫 住友電気工業株式会社
3月27日(月)15:15~16:00 鈴木 義人、石川 貴詞 株式会社ユーラスエナジーホールディングス/北海道北部風力送電株式会社
S19 3月27日(月)16:30~17:00 齊藤 丈靖 大阪公立大学工学研究科
3月27日(月)17:00~17:30 木野 久志 東北大学
3月28日(火)10:30~11:00 安藤 康夫 東北大学大学院工学研究
3月28日(火)11:00~11:30 大場 隆之 東京工業大学
3月28日(火)11:30~12:00 遠藤 和彦 東北大学


【S2 特別講演】
 
S2. 分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
< Molecularly Functionalized Electrodes - Fundamentals and Applications >
吉田 司(山形大学)

持続可能社会のための無機有機薄膜電析とデバイス応用

ありふれた元素と低エネルギーな手法により高機能性材料を得る手段として、構造制御された化合物半導体、無機有機ハイブリッド、導電性高分子薄膜などを電解析出法を中心とする溶液プロセスによって得ることに取組んできた。本講演では、最近の例を中心に製膜原理解明や制御手段の構築、エネルギー変換を主眼としたデバイス応用について紹介する。

S2. 分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
< Molecularly Functionalized Electrodes - Fundamentals and Applications >
松田 翔風(弘前大学)

Pt基電極触媒上で起こる低過電圧CO2還元反応

2050年カーボンニュートラル実現へ向けてCO2電解還元技術が注目を浴びている。なかでもCO2電解還元によるCH4生成(電解メタネーション)技術は天然ガスの脱炭素化というイノベーションを実現するにあたり重要な位置づけにある。従来ではCu電極触媒を用いることが有効であると経験的に知られていたが、我々はPt基電極触媒を採用しそのCO2還元反応条件を戦略的に制御することで、これまで高い過電圧が必要であった電解メタネーション反応を理論電極電位付近で観測できることを見出した。また、この低過電圧で起こるCO2還元反応とH2酸化反応を組み合わせることで、H2-CO2燃料電池として発電することも見出した。

S2. 分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
< Molecularly Functionalized Electrodes - Fundamentals and Applications >
中村 龍平(理化学研究所

天然イオン勾配が作り出す構造秩序と化学浸透圧発電

自然界には、温度、酸化還元、イオン濃度など勾配が存在する。生命システムでは、細胞膜を介して作り出される勾配をエネルギー源として、多様な化学反応が進行する。また、最近では、2次元材料やナノ構造体を用いることで、海水-淡水が作り出すイオン勾配を、効率的に電気エネルギーに変換することが報告されている。本講演では、地球が作り出す無機構造体である深海熱水噴出孔において見つかった秩序構造体と選択的なイオン輸送により発現する化学浸透圧発電能について報告する。

S2. 分子機能電極-界面電子移動制御とその応用
< Molecularly Functionalized Electrodes - Fundamentals and Applications >
春山 哲也(九州工業大学)

相界面反応による大気と水の元素循環 ~ 窒素と水からアンモニア、酸素と水から高濃度ヒドロキシラジカル

 相界面反応は、活性化した気体が水から水素原子を引き抜くことによって気体が還元される無触媒の気体還元反応である。
窒素と水の相界面反応ではアンモニアを生産することが出来、酸素と水の相界面反応ではヒドロキシラジカルを生成することが出来る。相界面反応は水を直接の水素源とするところに大きなアドバンテージがあり、水素ガス製造を必要としない。したがって、プロセス全体としてのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量を削減でき得ることが見込まれる。
 アンモニアは肥料・脱硝還元剤・人絹などの工業用途に加えて、CO2を出さない燃焼燃料としての用途、そして燃料としての水素キャリア分子としても注目される広い使途と需要がある化合物である。ヒドロキシラジカルはその強い酸化力により様々なプロセスをケミカルフリーに出来得る。
 本講演では、相界面反応の反応機構と、その応用・製品化の事例までを解説する。

 
【S3 特別講演】
 
S3.光電気化学とエネルギー変換
< Photoelectrochemistry for Energy Conversion >
伊藤 省吾(兵庫県立大学 大学院工学研究科)

光電気化学とペロブスカイト太陽電池

新しいエネルギー源として注目されているペロブスカイト太陽電池ですが,その始まりは光触媒および色素増感型太陽電池であり,最初のペロブスカイト太陽電池の発表は電気化学会の「光電気化学とエネルギー変換」のセッションで実施されました.電気化学を学問的機軸として生まれたペロブスカイト太陽電池ですが,現在ではペロブスカイト太陽電池の論文は年間4000件以上(人類初の出来事)が発表されており,発見者の宮坂力先生(桐蔭横浜大学)はノーベル賞候補としてノミネートされております.本発表では,ペロブスカイト太陽電池の開発の歴史および最新動向と,それに関わる兵庫県立大学伊藤省吾研究室の研究開発についてご紹介します.

S3.光電気化学とエネルギー変換
< Photoelectrochemistry for Energy Conversion >
オレグ・ディミトリエフ(ウクライナ国立学士院半導体物理研究所)

Immobilization of near-infrared dyes on the surface of nanoparticles for energy conversion purposes

Near-infrared (NIR) dyes which are spectrally active in the NIR range, can also be "brightened" in the visible by lifting the anti-Kasha emission ban, and by hot-band absorption assisted anti-Stokes emission. Here, we report an investigation of how the immobilization of NIR dyes on the surface of nanoparticles can assist in the above photophysical processes.

S3.光電気化学とエネルギー変換
< Photoelectrochemistry for Energy Conversion >
堂免 一成(東京大学・信州大学)

微粒子光触媒を用いる水からの水素製造の現状と展望

水分解微粒子光触媒を用いて、いわゆるグリーン水素を製造する方法の現状と今後の課題について講演する。半導体光電極を用いる水分解法は実験室レベルでは比較的容易に高効率が得られるが、大面積への展開が難しい。一方、微粒子光触媒を用いる水分解は、大面積への展開は可能であるが、高効率化が課題である。最近、チタン酸ストロンチウムをベースとして紫外光応答型であるが内部量子収率がほぼ100%の光触媒の開発に成功した。また、この光触媒を用いて受光面積100m2のソーラー水素製造用パイロットシステムの構築を行った。本講演では、これらの経験をベースに微粒子光触媒を用いる大規模水素製造法開発の現状と今後の課題について紹介する。

S3.光電気化学とエネルギー変換
< Photoelectrochemistry for Energy Conversion >
川脇 徳久(東京理科大学)

金属ナノ粒子・クラスター合成と光電気化学的応用

金属のサイズを小さくしていくと、そのサイズに応じた特異的な物性を示すようになる。粒径が数nm-数百nmのものと1 nm前後のものは、それぞれ「金属ナノ粒子」および「金属クラスター」と呼ばれ、物性も大きく異なる。
金属ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴によって粒子の周囲に近接場光を生じ、その近接場光によって色素や半導体の光励起効率を増強し、太陽電池や光触媒の特性を向上することができる。一方の金属クラスターは、量子サイズ効果に基づく分子的な電子構造を持ち、バルク金属より高い触媒活性を持つことが多い。そのため、光触媒などにおける増感剤や助触媒として利用できる。
発表では、これらの新規な金属ナノ粒子・クラスターの合成や光電気化学的な応用を行ってきた研究内容を述べる。


【S4 特別講演】
 
S4.有機電子移動化学が拓く次世代のものづくり
< Next-Generation Manufacturing Enabled by Organic Electron Transfer Chemistry >
橋本 卓也(理化学研究所開拓研究本部)

直接電解による新規窒素官能基化法の開発

直接電解は古くから有機合成の一手法として認知されていたが、副反応の多さや基質分解などが起こりやすく、実用性のある合成手法としての広がりはいまだに見せていない。当研究室では最近、N-(フルオロスルホニル)カルバミン酸エステルという新たな窒素官能基化剤を開発することで、これまで困難とされてきた有機合成の具現化に成功してきた。今回、その新たな展開としてこの窒素官能基化剤を用いた直接電解による芳香環やアルケンの効率的変換法が開発されたので報告する。

S4.有機電子移動化学が拓く次世代のものづくり
< Next-Generation Manufacturing Enabled by Organic Electron Transfer Chemistry >
矢島 知子(お茶の水女子大学 基幹研究院)

環境適応型可視光ペルフルオロアルキル化反応の開発

フルオロアルキル基を有する化合物は医農薬品、機能性材料として欠かすことのできない化合物であり、その合成法の開発は待ち望まれている。その合成法として、ハロゲン化ペルフルオロアルキルをフッ素源とするラジカル反応は有効な手法である。このような中我々は重金属を使わない反応にこだわり、可視光照射による電子移動を伴う反応による、ペルフルオロアルキル基の導入反応の開発を行ってきた。本講演では、我々のこれまでの有機物を触媒とする環境適応型可視光ペルフルオロアルキル化反応について紹介する。

S4.有機電子移動化学が拓く次世代のものづくり
< Next-Generation Manufacturing Enabled by Organic Electron Transfer Chemistry >
生長 幸之助(産業技術総合研究所・触媒化学融合研究センター)

電気化学的なトリプトファン選択的タンパク質化学修飾法

タンパク質の化学修飾法は、機能拡張によって新たな医薬品や診断法を提供する。我々のグループでは、有機ラジカルketo-ABNOを反応剤として用いる、水中でも実施可能なトリプトファン選択的生体共役反応を報告していた。しかし変性を引き起こす酸性媒体および交差反応性のある試薬の使用が必要であり制限が生じていた。そこで、電気化学的に反応剤を活性化することにより、室温・中性条件下におけるNOxフリー反応を達成できると考えた。本講演ではこれまでの進捗について紹介したい。

S4.有機電子移動化学が拓く次世代のものづくり
< Next-Generation Manufacturing Enabled by Organic Electron Transfer Chemistry >
石船 学(近畿大学理工学部 応用科学科)

熱応答性高分子修飾電極の調製と水中での分子認識・電解反応への応用

 炭素電極の電解表面改質とリビングラジカル重合を用いたグラフト重合手法により、熱ならびにpH応答性を有し、光学活性点など種々の機能性部位も導入した高分子グラフト炭素電極の調製法を確立した。電極近傍に光学活性点や反応性部位を配置し、その外側に長鎖の熱応答性高分子鎖を配置したブロック共重合体グラフト電極が、水溶媒中での立体選択的分子認識や有機電解反応に有用なツールとなりうることを示した。講演では、電極調製法とそのキャラクタリゼーション、ならびに、代表的な分子認識や反応例をまとめて発表する。

 
【S5 特別講演】
 
S5.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
末永 智一(東北大学)

電気化学と歩んできた道:小さな電極で何ができるか?

私が電気化学に出会ったのは, 1975年に東北大学の長哲郎先生の研究室に配属された時である.それから約半世紀,電気化学に深く関わってきた.私のライフワークは,米国留学時に目にしたことをきっかけに始めたマイクロ電極の利用に関する研究である.これまで研究環境が変化する転機を利用し,この研究に新しい視点を取り入れるようにしてきた.いろいろな機能性材料を研究対象としたが,中でも細胞,タンパク質などの生体材料の局所機能評価のためのデバイス・システム開発が主要な研究テーマであった.現在は研究の一線から退いているが,これまでの研究や当時考えていたことを振り返りたい.

S5.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
富井 健太郎(産業技術総合研究所)

AlphaFoldによるタンパク質の立体構造予測

タンパク質立体構造予測の手法は,演繹的あるいは帰納的アプローチのいずれかに大別される。大量のタンパク質アミノ酸配列情報の蓄積とタンパク質立体構造パターンの有限性(と構造情報の蓄積)および深層学習技術の発達を背景に,AlphaFold(2)を含む帰納的アプローチの有効性は一層明瞭となった。本発表では,AlphaFoldの入力であるアミノ酸配列のMSA(Multiple Sequence Alignment)と鋳型構造情報の意義,およびAlphaFoldで用いられている深層学習技術を概説する。また,われわれのグループのBINDSでの支援や高度化研究の成果を含め,AlphaFoldによる予測構造モデルを利用した研究の利点や注意点等を紹介する。

S5.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
難波 啓一(大阪大学大学院生命機能研究科)

クライオ電子顕微鏡による生体高分子立体構造解析技術の最近の進歩と将来展望

生体高分子の立体構造は生命科学のみならず医学・創薬などに必須な基盤情報である。複雑な生体機能メカニズムを生体高分子の構造・ダイナミクス・分子間相互作用に基づいて解明するには、様々な生体機能に関わる数多くの生体高分子が形成する安定あるいは過渡的な複合体の構造を様々な状態で可視化することが必須である。そして可視化すべき構造の数は数百万から数億あるいはそれ以上に上る。クライオ電子顕微鏡法は最近の技術進歩により高分解能構造解析法として極めて強力なツールとなり、わずか数μgの水溶液試料から数日以内に構造解析を可能にした。以前は数日を要した数千枚の電顕像撮影も数時間以内に完了する高速化を実現した。その最近の進歩と生命科学や創薬科学への今後の貢献について展望を述べる。

S5.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
小倉 卓(日光ケミカルズ株式会社)

溶液構造解析が切り開く生物電気化学研究の新展開
〜小角X線散乱法による酵素等の分子認識素子の新評価〜

体内動態を司る酵素等の分子認識素子は、“生体機能”と密接な関係があるため、その構造状態詳細を紐解くことは生命現象の解明に重要な役割を果たす。近年、分析装置・解析技術の著しい進歩に伴い、実状態に則したpH・温度範囲等での各種環境条件で、直接的に溶液中の構造状態を測定・解析可能な技術が飛躍的に進展してきている。そこで本講演では、「溶液構造解析が切り開く生物電気化学研究の新展開」と題し、 “コロイド”領域の大きさの両親媒性分子会合体(酵素等)の溶液中での電気化学的状態解析の研究事例について、小角X線散乱測定解析を主に溶液中での酵素の構造状態解析について提案させていただき、今後の当該分野の技術展開へ向けた議論の場としたい。

S5.生命科学と電気化学
< Life Science and Electrochemistry >
佐藤 英俊(関西学院大学生命環境学部)

生組織と細胞のラマン分光分析

ラマン分光法を用い,生きた組織と細胞の分析を行った。疾病組織,細胞,細胞の変化などを生きたまま分析できる。スペクトルの測定技術,分析技術を含めて紹介する。

 
【S6 特別講演】
 
S6.溶融塩およびイオン液体の化学・技術の新展開
< Advances in Chemistry and Technology for Molten Salts and Ionic Liquids >
上田 幹人(北海道大学)

溶融塩を用いたアルミニウムのアップグレードリサイクル

低温および高温溶融塩を用いた溶融塩電解によるアルミニウムのアップグレードリサイクルについて紹介する。低温溶融塩では原料となるアルミニウム合金と精製される高純度のアルミニウは固体であるが、高温溶融塩ではそれらが液体になる。また、アルミニウムイオンの溶存形態も異なるため、電析挙動についても比較しながら精製アルミニウムの純度についても説明する。

 
【S7 特別講演】
 
S7.固体化学の基礎と応用-固体材料の合成・物性・反応性
< Fundamental and Application of Solid Chemistry-Synthesis, Properties, and Reactivity of Solid Materials > 
兵頭 潤次(九州大学)

高速プロトン伝導性ペロブスカイト創製を志向した材料探索空間の拡張

燃料電池などを活用した水素エネルギー社会の実現に向け、300~450℃の中温度域で高速プロトン伝導性を示す固体電解質の開発が望まれている。本講演では、近年開発した2つの高速プロトン伝導性ペロブスカイトBaZr0.4Sc0.6O3-δおよびSrSn0.8Sc0.2O3-δを発見した成果について紹介する。BaZr0.4Sc0.6O3-δは、「高濃度アクセプタードープは高プロトン伝導性の材料設計指針とならない」という定説を覆す材料の発見である。SrSn0.8Sc0.2O3-δは実験データと機械学習を活用することで探索化学空間の拡張と少ない実験試行回数による効率的開発に成功した材料である。これらの材料の発見は、新規高速プロトン伝導性ペロブスカイトの探索空間を拓くものであり、更なる高性能材料の発見が期待される。

 
【S8 特別講演】
 
S8.電池の新しい展開
< New Aspects of Battery Technology >
金村 聖志(東京都立大学)

リチウム金属蓄電池の開発―3DOMセパレータの開発―

リチウム金属を負極とする蓄電池の開発について、セル内の電流分布の均一化を目指し、3DOMセパレータを応用した研究について述べる。特に、リチウム金属の析出形態と電流分布の均一化の関係を示すとともに、リチウム金属二次電池のサイクル特性の改善について紹介する。

S8.電池の新しい展開
< New Aspects of Battery Technology >
井手本 康(東京理科大学理工学部)

マグネシウム金属二次電池用正極材料の開発および充放電過程における結晶・電子構造解析

マグネシウム金属二次電池用正極材料について、種々の正極材料の開発のコンセプト、開発動向、これらの室温,90℃における電池特性について報告する。また、電池特性を支配する平均・局所構造および電子構造の充放電過程に伴う構造変化についても触れる。


【S9 特別講演】 
 
S9.燃料電池の展開―材料からシステムまで
< Development of Fuel Cells from Materials to Systems >
徳増 崇(東北大学流体科学研究所)

PEFC内部の構造・輸送特性の解明に資する大規模分子シミュレーション

近年、化石燃料に変わるエネルギー供給源として固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell: PEFC)が注目されている。このPEFCには一層の耐劣化性・高性能化が求められるが、そのためには、燃料電池の膜電極接合体における反応物質の輸送特性と内部のナノスケールからメゾスケールの構造特性との相関を詳細に解析する必要がある。当研究室では、分子シミュレーションを用いた燃料電池内部の反応物質輸送現象に関する研究を大規模に展開している。本講演では、この研究テーマの中から特に高分子電解質膜内部およびアイオノマー内部の物質輸送特性の解明および触媒層形成プロセスの解明について概略を述べる。
 

 
【S10 特別講演】
 
S10.キャパシタ技術の新しい展開
< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors >
松本 太(神奈川大学)

レーザー加工穴あき電極を用いた次世代エネルギーデバイスの入出力特性とエネルギー密度の向上

入出力特性とエネルギー密度の向上を両立する次世代エネルg-デバイスの開発のためにレーザーによる正極、負極の穴あき加工技術を検討している結果を紹介する。正極においては、リチウムイオン電池用の正極材料とキャパシタ正極材料の活性炭をハイブリッド化したハイブリッド正極により、新たな入出力特性を有する電極を開発した。負極においては積層セル内で負極にリチウムイオンプレドープを行う手法を検討し、プレドープ時間の短時間化のためにレーザーによる正負極の穴あけ加工が有効であることを明らかにした。

S10.キャパシタ技術の新しい展開
< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors >
三尾 巧美(株式会社ジェイテクト)

高耐熱リチウムイオンキャパシタの耐久性・安全性と応用事例

カーボンニュートラル実現に向け、モビリティの電動化が急速に進んでいる。大型モビリティの電動化は、極めて高い出力性能・耐久寿命が求められ、過酷な温度環境にも耐えねばならないことから、出力型デバイスであるキャパシタの高耐熱化が必要である。
当社はリチウムイオンキャパシタの耐熱性を改善し、自動車室内の温度要求(-40~85℃,世界初)に適合させた。また、高耐熱化に伴って耐久寿命が飛躍的に向上し、安全性も改善した。
本講演では、前述した特長を有する高耐熱リチウムイオンキャパシタの応用事例を紹介するとともに、従来技術に対する性能面のアドバンテージについても解説する。

S10.キャパシタ技術の新しい展開
< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors >
加藤 秀実(東北大学金属材料研究所)

金属溶湯脱成分法を用いた金属の共連続ナノポーラス化と電解コンデンサへの応用

TaやNb等の電解コンデンサは小さく周波数特性に優れ、寿命が長い等の利点がある。静電容量を拡大し、レアメタル使用量を低減するには、焼結体の比表面積を拡大する必要があり、原料粉末粒の微細化、焼結粒成長の抑制の他、開気孔の導入等の工夫が求められる。これらが指向する形態は、共連続ナノポーラス体化に他ならないが、その簡便な作製法として知られる酸・アルカリ水溶液中の脱成分法は、原理上、卑な金属を酸化・イオン化してしまう。発表者らは2011年、水溶液の代替として金属液体を用いる金属溶湯脱成分法を提案し、卑・半金属の共連続ナノ~マイクロポーラス化に成功した。本発表では、金属溶湯脱成分法を説明した後、ナノポーラスNbの作製(リガメント~100 nm, 比表面積~4.3 m2/g)と電解コンデンサへの応用(~0.88 FV/g)、更には、ハイエントロピー合金(リガメント~10 nm)への展開の可能性について報告する。

S10.キャパシタ技術の新しい展開
< Evolution of New Technologies in Advanced Capacitors >
内田 悟史(国立研究開発法人産業技術総合研究所)

EDLCの電気化学インピーダンス測定の実際

EDLCの抵抗は非常に小さいため、EDLCの電気化学インピーダンスを適切に測定・解析するためには、セル構成や測定セットアップに由来する不要なインピーダンスを可能な限り除去する必要がある。本講演では、不要なインピーダンスが解析に与える悪影響やそれらを除去するための実験セットアップとはどのようなものかを例示して解説する。また、実験でよく得られる理想的なEDLCのものとは異なるインピーダンスデータについて、等価回路を用いたシミュレーションとともにその原因と考えられる物理現象を例示して解説する。


 【S12 特別講演】
 
S12.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術
< Corrosion Science and Surface Control Engineering Supporting Social Infrastructure >
秋山 英二(東北大学金属材料研究所)

高強度鋼の水素脆化と腐食誘起水素侵入

応力が負荷された金属材料中に環境から水素が侵入すると脆性的な破壊が引き起こされる。この現象は水素脆化と呼ばれ、一般に鋼の強度が1.2 GPa程度を超えると水素脆化感受性が顕在化し、鋼の強度に伴って高くなる。高強度の鋼の場合、大気腐食のような環境での比較的低濃度の水素が侵入する環境でも破壊する。講演では、腐食環境から侵入する水素を考慮した水素脆化特性の評価について解説する。また、電気化学的水素透過試験法を用いた、耐環境環境からの水素侵入挙動のモニタリングや、新規に開発した水素可視化法を用いた、腐食による水素侵入挙動の位置分解能を有するモニタリングについても説明する。

S12.社会基盤を支える腐食科学と表面処理技術
< Corrosion Science and Surface Control Engineering Supporting Social Infrastructure >
菊地 竜也(北海道大学大学院工学研究院)

新規な電解質を用いたアルミニウムのアノード酸化によるナノテクノロジー

アルミニウムのアノード酸化(陽極酸化)は、アルミニウム表面に耐食性不動態皮膜であるアルマイトを形成する手法としておよそ100年前に見出されて以来、工業的に幅広く用いられる電気化学プロセスである。発表者らは、アノード酸化における電解質化学種を今一度見つめ直し、幅広いナノ領域で規則配列するポーラス構造や高速超親水・滑落性制御型超撥水/超撥油表面、高硬度・高耐食性皮膜など、さまざまな新しい特性を発現するアノード酸化法の開発を試みてきた。本講演においては、アノード酸化によって表面のナノ構造を高度に制御し、そのナノテクノロジーに基づいて発現する新しい機能について、概要をご紹介いたします。

 
【S13 特別講演】
 
S13.化学センサの新展開
< The Latest Development in Chemical Sensors >
清水 康博(長崎大学大学院工学研究科)

メソ・マクロ細孔構造と触媒活性の制御による半導体ガスセンサの高性能化

内部に一対の電極を有する厚膜型半導体ガスセンサのガス検出特性を改善するためには、センサ材料の触媒活性の制御のみならず、センサ材料のメソ・マクロ細孔構造を制御して、被検ガスの拡散性を厳密に制御する必要がある。
 本講演では、主に、ポリメチルメタクリレート球状粒子をテンプレートに用いた酸化物の前駆体溶液の超音波噴霧熱分解法で、In2O3、WO3およびSnO2粒子内部にマクロ細孔を導入し、かつ、触媒材料の共添加による相乗効果で、NO2、メチルメルカプタンおよびアセトン応答を大幅に改善できることを紹介する

S13.化学センサの新展開
< The Latest Development in Chemical Sensors >
珠玖 仁(東北大学大学院工学研究科)

生体模倣システムの細胞機能評価に資する電気化学センシング

生体模倣システム(microphysiolopgical system, MPS)では培養技術と細胞機能の評価系の融合が必須であり、今後は実際の生体内の現象がMPSによりどの程度再現されているか定量的に考察することが求められる。動物実験系の代替としてオルガノイド培養系やorgan-on-a-chip関連の技術革新が顕著に進展するなかで、3次元的な細胞集合体の機能をリアルタイムで観測する電気化学センサ技術への期待も高まっている。
我々のグループでは、2000年代から3次元培養系の細胞チップを作製し、電気化学的な細胞機能評価に取り組んだ。今回の講演では、血管MPSにおける薬剤スクリーニングやプロテアーゼカスケード反応を利用した高感度イムノアッセイなどの研究例を紹介する。

 
【S14 特別講演】
 
S14.マイクロ~ナノ構造材料・デバイス形成の最先端技術
< The state of the Art in Fabrication of Micro- and Nano-Structure Materials and Devices >
鳥本 司(名古屋大学大学院工学研究科)

サイズ・組成により自在に制御できる多元量子ドットの光機能

サイズが約10 nm以下の半導体ナノ粒子は量子ドットと呼ばれ、バルク半導体とは大きく異なる物理化学特性をもつ。特に、三元素以上の低毒性元素からなる多元量子ドットは、実用可能な材料であり、その光機能は粒子サイズと組成によって自在に制御できることから、活発な研究対象となっている。本講演では、私たちが最近、発光スペクトルの尖鋭化に成功したAg系のI-III-VI族量子ドットについて、その液相化学合成法を紹介し、光化学特性の組成・サイズ依存性について述べる。さらに、これら多元量子ドットの光機能を利用する新規な発光材料や光エネルギー変換システムの開発について報告する。


【S15 特別講演】
 
S15.クロモジェニック材料の新展開
< New Development on Chromogenic Materials >
松井 淳(山形大学理学部)

高分子薄膜の自在集積によるクロミズム材料の多色化

静電吸着や酸化還元特性をペンダントに有する高分子薄膜を自在集積する事でエレクトロクロミズムの多色化を実現する新たな原理の提唱とその視認化手法を発表する。これまでエレクトロクロミズムの多色化はデバイスの重ね会わせや、多酸化還元分子の合成が主眼となっていた。本研究では高分子薄膜の自在積層により1電極で、エレクトロクロミズムの色の足し合わせが可能な原理を紹介する。また、高分子薄膜とナノ粒子の自在制御により見る角度によって金属光沢が大きくことなる薄膜についても紹介する。


【S16 特別講演】
 
S16.ナノスケール界面・表面の構造とダイナミクス
< Structure and Dynamics on Nano-scale Interface and Surface >
叶 深(東北大学理学研究科化学専攻)

電極溶液界面の構造制御による反応機構の解明と機能性の開拓

電極反応は電極の表面で起こり,電極と電解質溶液界面の微視的構造評価と制御は,電極反応の本質的理解および機能性の創出に極めて重要である。その目標の実現を目指し,電極と電解質溶液との界面構造を選択的に観測できる高度な界面計測技術を開発・適用し,電極反応機構の解明や界面構造制御による機能性の開拓等の研究に取り組んだ最近の研究進捗について報告する予定。


【S17 特別講演】
 
S17.明日をひらく技術・教育シンポジウム
< Symposium of Technology and Education for the Future >
片倉 勝己(奈良工業高等専門学校 物質化学工学科)

⽔溶液電解質を⽤いた⼆次電池正負極反応系の試⾏

演者は、⾦属やMn,Ni 系⾦属酸化物を⽤いた⽔溶液電解質中における酸化還元反応系の⼆次電池への応⽤検討を⾏っている。講演では、電解沈降法によるマンガン系LDH の合成とその電気化学挙動と、LDH を前駆体とするマンガン系酸化物を中⼼に⽔溶液電解質中でアルカリ⾦属イオンをゲストとする正極材料の酸化還元挙動等について紹介するとともに、炭酸カリウム溶液電解質中における⾦属亜鉛の酸化還元挙動並びに電解質の特徴を紹介し、⽔溶液系電解質を⽤いた⼆次電池の可能性について講演する。


【S18 特別講演】
 
S18.電力貯蔵技術の新しい展開
< New Developments of the Electric Energy Storage Technology >
田中 晃司(東京電力エナジーパートナー株式会社)

最近のエネルギー情勢を踏まえた蓄電池活用技術について

我が国では,「安定供給の確保」「電気料金の抑制」「需要家の選択肢や事業機会の拡大」と「S+3E」(Safety +Energy Security・Economic Efficiency・Environment)の同時達成を目指し,広く需要側電力資源も含めた電力市場の構築が進められている。一方,全世界的なカーボンニュートラルの実現に向けた動きや度重なる地震・風水害などを踏まえたレジリエンス向上,さらにロシアのウクライナ侵攻を背景としたエネルギー供給の不安定化等を受け,電力システムの制度や電力系統の運用が複雑化・困難化してきている。このような状況の中で蓄電池システムにおける課題を明確にしつつ,マルチユ―ス活用を含めた今後の方向性等について紹介する。

S18.電力貯蔵技術の新しい展開
< New Developments of the Electric Energy Storage Technology >
中島 啓介(日本ガイシ株式会社)

カーボンニュートラル実現に向けたナトリウム硫黄電池の活用事例

ナトリウム硫黄電池(NAS電池)は、大容量、高エネルギー密度、高速応答性、長寿命(20年、7300サイクル)といった特徴を有しており、当初は、大口需要家側に設置しピークカットによる電気料金削減、非常用電源代替を主目的に導入された。近年では、風力発電や太陽光発電の大量導入により電力系統の短周期の周波数変動対策や長周期の余剰電力吸収等が顕在化しており、これらの問題を解決すべく、様々な用途への適用が進んでいる。本講演では、最新のNAS電池活用事例を紹介する。

S18.電力貯蔵技術の新しい展開
< New Developments of the Electric Energy Storage Technology >
重松 敏夫(住友電気工業株式会社)

レドックスフロー電池の最近の動向

・レドックスフロー電池は、電力貯蔵用蓄電池として、1970年代に米国および国内産総研殿にて開発が始まり、住友電気工業では、2000年頃から事業化を推進している。
・発表では、北海道電力殿で稼働中の二つの設備(15MW×4h, 17MW×3h)および米国加州においてNEDO殿の実証事業にて設置された2MW×4hのシステムを紹介する。
・今後カーボンニュートラルを目指して蓄電池は必須の技術であり、レドックスフロー電池もさらなる高性能化、低コスト化の開発が求められており、世界中で多くの研究開発が進められている。発表では、こうした最近の新規な開発動向についても触れたい。

S18.電力貯蔵技術の新しい展開
< New Developments of the Electric Energy Storage Technology >
鈴木 義人(株式会社ユーラスエナジーホールディングス)、石川 貴詞(北海道北部風力送電株式会社)

ユーラスエナジーにおける電力貯蔵用蓄電池への取組

ユーラスエナジーは1987年に風力発電事業に、2008年に太陽光発電事業に参入し、日本・欧州・米国などでグローバルに事業を展開しています。
カーボンニュートラルの実現に向け再エネの導入が進められていますが、北海道北部地域は国内でもとりわけ風況がよく風力発電の適地であるにも関わらず、送電網が弱いため、風資源を有効活用できていませんでした。そこで、ユーラスエナジーは子会社の北海道北部風力送電を設立し、北海道北部地域の送電網の整備・運営を行うとともに、風力発電の出力変動に対応するため240MW/720MWhの大規模蓄電池の運用も行います。本講演では、北海道北部地域における風力発電事業と、北海島北部風力送電の取組についてご紹介します。
また、再エネの導入促進に向け、2022年より参入した系統用蓄電池事業に関しても紹介いたします。


【S19 特別講演】
 
S19.電子材料及びナノ機能素子
< Electronic Materials and Nano-Functional Devices >
齊藤 丈靖(大阪公立大学工学研究科)

乾式および湿式プロセスによる最先端半導体デバイス用極微細配線形成プロセスの現状

現在の最先端半導体デバイスではCMOS直上の配線幅が10nm未満になると推測されており、Cu配線の限界が語られている。Cu配線代替材料として、Co、Ru、MoやRh、Ir等の貴金属、MAX化合物と呼ばれるセラミックス系の材料が候補としてあげられている。極微細配線形成プロセスの現状と前述の材料技術の現状について著者の研究と合わせて報告する。

S19.電子材料及びナノ機能素子
< Electronic Materials and Nano-Functional Devices >
木野 久志(東北大学)

人工網膜およびスピントロニクスデバイスへの三次元集積化技術の応用

集積回路の三次元集積化技術は素子の微細化に依存することなく集積度を向上させる方法として期待されている。すでにイメージセンサやメモリの分野を筆頭に市場も拡大しつつある。そして、三次元集積化技術の応用分野はさらなる広がりを見せている。
例えば、視細胞の死滅により視覚を失った患者の視覚再建デバイスとして期待されている人工網膜では、人の網膜と同様の積層構造を実現することで高性能化が期待できる。
一方、電荷の量だけではなく、電子のスピンの情報も活用するスピントロにクスデバイスにも高い関心が寄せられており、三次元集積化による高集積化も期待できる。
本講演では三次元集積化技術の応用例として人工網膜とスピントロにクスデバイスを挙げ、それぞれの利点や特有の課題について詳説する。

S19.電子材料及びナノ機能素子
< Electronic Materials and Nano-Functional Devices >
安藤 康夫(東北大学大学院工学研究)

超高感度量子トンネル磁気抵抗素子を用いた室温動作生体磁気センサの現状と展望

巨大磁気抵抗効果およびトンネル磁気抵抗(TMR)効果の発見以来、それまで磁気学として発展してきた学問分野は半導体の学問分野と一部共創することにより、新しい研究領域「スピントロニクス」を形成した。ここでは磁性体と半導体の両技術の複合により得ることができる新しいデバイスの創製および学問の確立が期待され、実際に多くの成果をあげて発展した。中でも量子トンネル磁気抵抗素子を用いた磁気センサはここ数年で著しい特性向上を実現し、生体磁場検出が現実的なターゲットとなってきていた。現在は、いくつかの技術革新を取り入れることにより感度はサブpT領域に達してきている。最新の結果では心磁のリアルタイム測定および脳磁の体性感覚誘発磁場測定に成功している。

S19.電子材料及びナノ機能素子
< Electronic Materials and Nano-Functional Devices >
大場 隆之(東京工業大学)

BBCube次世代三次元高集積化技術

微細化と歩留まりが頭打ちとなりチップレット化が進んでいる。このためデバイスを部品とした大規模集積市場が拡大している。しかしながら、これまで実装技術の生産性と配線接続は前工程に比べ悪く、コストと実装されたシステムの低消費電力・性能向上がカギになっている。本講演では、新たなアーキテクチャーBBCube (Bumpless Build Cube)を実現する量産向けWOWとチップレット集積可能なCOWプロセスについて述べる。

S19.電子材料及びナノ機能素子
< Electronic Materials and Nano-Functional Devices >
遠藤 和彦(東北大学)

先端ナノデバイスの開発動向

近年、先端ナノデバイスのスケーリングによる性能向上は、その微細化限界を迎えつつも、精力的に進められている。本講演では、先端ナノデバイスの性能向上に必須である、立体チャネルデバイス化と、更なる将来のスケーリングに備えた高移動度チャネルや二次元チャネル材料、およびそれらを用いたナノデバイスの開発動向を概説する。





 
3月27日(月)13:00~13:45