The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA016] 心理的支援活動を通した大学院生の気づき(2)

教師像の変容に着目して

鈴木悠介1, 長谷志津恵1, 江角周子1, 新井雅1, 庄司一子2, 石隈利紀2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:学生ピアサポーター, 心理的支援

問題と目的
近年,学校教育における児童生徒のニーズの多様化を背景に,スクールカウンセラーといった専門家だけでなく,心理学や教育学専攻の大学生や大学院生が学生ボランティアなど様々な役割で学校に入り,学習支援や心理的支援活動などの実践が行われている(杉本, 2013)。
筆者らも,様々な困難を抱える生徒が多く通う高校において学生ピアサポーター(以下,学生PS)として数年間心理的支援活動に携わり,活動を通した自らの変化を感じてきた。しかし,こうした活動を通した学生の変化や心理的成長について研究が不足しており(黒沢ら, 2008),活動に参加した学生の変化の契機,変化・成長の内実は明らかにされていない。こうした活動が学校と学生にとって互恵的な活動である必要があると指摘されること(杉本, 2013),また,児童生徒への支援活動を学生のキャリア教育の視点から検討する必要性があるという指摘(黒沢ら, 2008)から,この点を検討することが重要である。
そこで,江角ら(2014)では心理的支援活動を通した学生PSの変化のうち「生徒理解や支援方法の変化」の分析を行ったが,本研究では,調査対象者が語った「教師志望者が目指す教師像の変化」に着目して検討を行うことを目的とした。
方法
対象:A県内の高等学校において学生PSとして活動した教育学を専攻する大学院生女性3名(B,C,D)。活動期間:半年~2年間。面接時期:2014年2月から3月。内容:黒沢ら(2008),杉本(2013)の研究を参考に1「活動参加の目的と活動を行った感想」,2「活動を通じて学んだこと」,3「活動を通じた変化・成長」とした。手続き:個別に約1時間の半構造化面接を実施した。面接内容は,対象者の許可を得て録音した。
結果・考察
教師志望の対象者(C, D)により語られた内容の中から「教師像の変容」に焦点をあてた。ここで言う「教師像」とは,教師志望の学生にとって思い描く理想的な教師の姿のことを指す。学生PSの教師像が活動を通してどのような変容が生じたかを抽出した。なお,一般総称をさす場合には教員を用いることとする。
C「活動以前は教科の専門性に重きをおいていたが,心理的支援について深く考えるようになった。」「教科の専門性と生徒の心理的支援のバランスがとれた指導ができるような教師になりたい。学生PS活動を行ったからこそ両方を大事にする考え方が身についたと感じる。」「活動の中で自らの力不足に直面することもあったが,これまで向き合って来なかった部分に向き合う良い機会として活動を捉えていた。」
D「高校では教科の知識を教えることが大事だと考えていたが,様々な生徒に出会い,生徒の得意なことや好きなことを一緒に見つけていくことの重要性に気づいた。」「塾講師など教科専門の教師になることを目指していたが,今は心理的支援が必要な生徒が多く集まるような学校で働くことを志望している。学生PS活動の経験がなければ選ばなかった道だと思う。」「教師になったら,勉強が苦手な子には勉強面のフォローをするなどしっかりと教科を教えられるようにしつつ,生きる楽しさ,学校に来る楽しさ,友達の重要さなどを教えられる教師になりたいと考えている。」
以上の語りから,様々なニーズをもつ生徒との関わりを通して,教科指導だけでなく生徒指導,特に心理的支援の重要性への気づきが共通して見られる。また,そのような気づきから目指す教師像の変化が見られ,さらにDについては,進路選択への影響をも見られる。
このように,教師志望の学生にとって学生PS活動の経験はインターンのような機能も果たしており,様々な生徒への支援を通して教師像が更新され,自らのキャリアを形成していく上で大きな影響を与えるものとなっていることが示唆される。
文献
黒沢幸子・日高潤子・張替裕子・田島佐登史 (2008). 学校教育支援ボランティアを体験した学生の変化・成長―その様相とキャリア教育の視点からの考察― 目白大学心理学研究, 4, 11-23.
杉本希映 (2013). 大学生による学校支援ボランティアの現状と課題 目白大学心理学研究, 9, 107-119.
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