The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA025] 児童の社会的能力自己評定の個人差と教師評定との関係

三渕剛1, 米山祥平2, 小泉令三2 (1.福岡教育大学大学院, 2.福岡教育大学)

Keywords:社会的能力, 児童自己評定, 教師評定

【問題と目的】
近年,児童の問題行動の増加・多様化に対する早期対応または予防の観点から,「社会性と情動の学習(SEL-8S学習プログラム)」による児童の社会的能力向上の取組が進められている(小泉,2011)。本研究では,SEL-8S導入の予備段階として,特定の心理教育プログラムによる介入を行わなかった場合の,児童の社会的能力自己評定の個人差と,教師評定との関係を調査した。

【方法】
調査対象者 公立小学校2校の5・6年生計74名
質問紙 小学生版「社会性と情動」尺度(田中・真井・津田・田中,2011)の児童自己評定及びこれにもとづく教師評定を用いた。本尺度は「自己への気付き」「他者への気付き」「自己のコントロール」「対人関係」「責任ある意思決定」「生活上の問題防止スキル」「人生の重要事態に対処する能力」「積極的・貢献的な奉仕活動」の8因子から成る。各因子は児童自己評定が3項目,教師評定が1項目から構成されている。前者が4件法,後者が5件法で回答を求めた。
調査手続き X年7月に第1回目の調査を,同年12月に第2回目の調査を行った。
【結果と考察】
第1回目の児童自己評定をもとにクラスター分析を行い,児童の社会的能力の傾向を5つのグループに分けた。その後,児童自己評定・教師評定それぞれについて,グループ(A:5)×時期(B:2)×能力(C:8)の3要因による分散分析を行った。その結果,児童自己評定においては全ての主効果及び交互作用が有意であり,教師評定においてはCの主効果及びA×C,B×Cの交互作用が有意であった。また,図・表のような特徴が示された。
2次の交互作用についての検定の結果,グループⅤにおいては,児童自己評定4因子(「自己への気付き」「他者への気付き」「対人関係」「積極的・貢献的な奉仕活動」,教師評定4因子(「自己への気き」「他者への気付き」「責任ある意思決定」「積極的・貢献的な奉仕活動」)で,第2回目の方が有意に高かった。一方で,グループI~ⅠⅤにおいては,児童自己評定・教師評定共に,第1回目と第2回目の間で4因子以上の有意差は確認できなかった。また,児童自己評定と教師評定との間に,相関は示されなかった(r=-0.02~0.30)。しかし,児童自己評定・教師評定ともに,グループIIに関する評定が全体的に低いことと,グループⅤに関する評定が因子間でばらつきがあることは共通していると言える。
第2回目の評価点の方が有意に高くなったのは,グループⅤのみであった。さらに,グループⅤの成員数は4名と,調査対象全児童のわずか5%であり,特別な介入を行わなかった場合に,多くの児童の社会的能力は向上していなかった。
今後,全ての児童を対象とした一次的教育援助サービスとして,心理教育プログラムの導入による児童の変容を調査していきたい。
【付記】本研究は,(独)JST 研究開発成果実装支援プログラム「学校等における犯罪の加害・被害防止のための対人関係能力育成プログラム実装」の助成を受けた。