[PA027] 論理的な文章の作成過程における重要な学習活動の検討
小中接続に対応するメタ認知方略尺度の作成
Keywords:説明文, 意見文, 考えの明確化
【目的】小学高学年と中学1年の,論理的な文章の作成過程における重要な学習活動を明らかにする。文種は,飛田(1975),平成20年1月中教審答申をふまえ,記録文,解説文,報告文,紹介文,説明文,意見文を含める。【調査1】目的:(1)メタ認知方略質問紙,(2)学習指導要領質問紙を作成し,項目の信頼性を検討し各尺度を作成する。方法:(1)の作成 井口(2008)のメタ認知方略質問紙の項目と,小学校5・6年と中学校1年の現行の教科書教材に記された学習活動との重複箇所を削除,整理し質問紙を作成した。(2)の作成 現行の学習指導要領の小学校高学年と中学校1年の「書くこと」と一部の「読むこと」の指導事項をもとに質問紙を作成した。各質問紙の項目は,専門家によって表現と内容が検討された。質問紙を冊子にし,公立小学校6年と同中学校1年を対象に調査を実施した。教示は「質問の内容がどれくらい大切だと思うか,思わないかを答えてください」であり,文種を定義した。5件法で回答を求めた。結果と考察:401名分を分析した。(1)の質問紙 探索的因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行い,固有値の推移と解釈可能性から因子数を指定し,因子負荷量.40以上の11項目が採用された。各因子の内的一貫性と項目の信頼性が確認された〔表1〕。(2)の質問紙 対応する指導事項毎に,内的一貫性と項目の信頼性が確認された。以上より(1)(2)は尺度として適切であると判断された。(1)の尺度の項目は,学習指導要領の指導事項「課題設定や取材」「構成」「記述」に対応し,指導事項の下位学習活動といえる。特に,自分の考えを明確にする記述前の活動と関係する。【調査2】目的:メタ認知方略尺度の教育的妥当性を認知面と情意面について検討する。方法:井口(2008)が使用した動機づけに関する(3)自己効力感尺度,(4)内発的価値尺度,情動に関する(5)作文不安尺度の項目の表現が専門家によって検討され,質問紙が作成された。これと調査1の(1)(2)の尺度を併せて冊子を作成し,公立小学校6年と同中学校1年を対象に調査を実施した。教示は「質問の内容について,どれくらいしているか,していないかを答えてください」であり,文種を定義した。5件法で回答を求めた。結果と考察:825名分を分析した。(3)(4)(5)の尺度毎に探索的因子分析(主因子法)を行った結果,いずれも1因子性が高く,因子の内的一貫性と項目の信頼性が確認された。メタ認知方略尺度の下位尺度毎に(2)~(5)との相関係数を算出したところ,(2)~(4)は有意な正の相関が,(5)は有意な負の相関が見られた。以上よりメタ認知方略尺度を指導に用いると,認知面と情意面によい効果が期待できるといえる。【考察】メタ認知方略尺度の各項目は,小学高学年と中学1年の論理的な文章作成の記述前段階で,自分の考えを明確にするなどの指導に用いることで,学習者は作成する文章の質や動機づけを高めるとともに,不安感が軽減される可能性があるといえる。(本研究はJSPS科研費25381227の助成を受けた)