The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA040] 国際理解教育の実践を通した児童の能力の変容

質問紙調査及び行動観察による検討

塙万里奈1, 梶井芳明1 (東京学芸大学)

Keywords:国際理解教育, 変容把握, 指導・評価項目

【問題と目的】
近年,教育現場における国際理解教育の推進が求められる中,国際理解教育の研究上の課題として,指導目標・評価規準が確立されていない点,国際理解教育の実践を通した児童・生徒の変容が検討されてこなかった点が挙げられている(佐藤,2007: 石森,2010: 多田,1998: 佐藤,1997)。
本研究では,対象校における国際理解教育の指導・評価項目の精選(塙・梶井,2013)をもとに,国際理解教育の実践を通した児童の変容を,質問紙と行動観察により明らかにする。なお,児童の変容把握にあたっては,国際理解教育目標構造図(川崎市総合教育センター,2001)のA情動・価値観,B認識・理解,C行動の3観点を参考にする。
【方法】
調査対象:都内の国立大学附属小学校の第4学年の児童93名。なお,行動観察は,A情動・価値観,B認識・理解,C行動のいずれかの1つの観点に弱みをもつ児童3名,A観点に弱みをもつ児童1,B観点に弱みをもつ児童2,C観点に弱みをもつ児童3を対象に行った。
調査時期:2012年10月から12月に実施した。
調査方法:質問紙及び行動観察により行った。
質問紙は,作成された国際理解教育指導・評価項目(A情動・価値観観点16項目,B認識・理解観点15項目,C行動観点18項目,計49項目)を使用し,第4学年の児童93名を対象に行った。また,行動観察では,4・5年生による交流学習活動時の,児童1,児童2,児童3の3名の抽出児の様子を観察した。
【結果】
質問紙調査の結果,対象児3名は,それぞれ弱みであった観点の資質について,標準得点に上昇が見られた(児童1はA観点:Z=-0.41→-0.06,児童2はB観点:Z=-0.11→0.13,児童3はC観点:Z=-0.3→-0.12)。また,行動観察においても,児童1は「グループで作業を進める上で,何をすべきか考え,協力しようとする」(A情動・価値観),児童2は「人によって異なる意見をもっていることを認識し,積極的に人の意見を聞こうとする」(B認識・理解),児童3は「友達同士で動作を確認する,友達に動作を教える」(C行動)といった,弱みとなってた観点に関わる資質に対応する様子が見られた。
また,質問紙調査から,各対象児で標準得点が下降した観点があった(児童1はC観点:Z=0.04→-0.08,児童2はC観点:Z=0.27→-0.36,児童3はB観点:Z=0.2→0.01)。さらに,標準得点が下降した観点について,行動観察では,児童1は「アイディアを提示する,積極的に作業を進める,といったように,必要なことを判断し,実際に行っている」(C行動),児童2は「講師や友だちとの関わりを通して,はじめはできなかった茶道の動作が,実際にできるようになっている」(C行動),児童3は「周りの人の意見を聞き,様々な人の考えを認識している」(B認識・理解)といった,各観点の資質に対応する様子が見られた。なお,児童1では「交流相手の方に挨拶をしにいくことを躊躇する」(C行動),児童2では「交流相手の方への発話はほとんど見られなかった」(C行動)といった,標準得点の下降に一致した様子も見られた。
【考察】
対象児それぞれの元々低かった資質の標準得点が向上したことについては,質問紙への回答が,単元において自らの苦手な資質を意識する契機となって,活動に取り組めたことが一因と推察される。そして,活動を通じて,苦手であった資質について,自信を高めていった様子がうかがえる。
標準得点が下降した観点については,質問紙調査への回答,いわゆる児童による自己評価と,行動観察調査の結果,観察者による他者評価とが,必ずしも一致しないことが,検討課題の一つとして残された。
今後,国際理解教育を通じた児童の変容をより明らかにするためには,例えば,本研究では,項目間で意味の区別がはっきりしないものがあったことから,項目の妥当性を検討することが考えられる。また,児童の変容を指導に役立てるという視点から,本研究で扱ったような質問紙を用いた,児童による自己評価に加え,教師による見取り,いわゆる他者評価を取り入れるなど,多角的に変容,発達を捉えることも重要となるであろう。