The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA041] 就職活動における自己PR文産出に必要な事項の検討(1)

崎濱秀行 (阪南大学)

Keywords:自己PR文, 産出文章

【問題と目的】
本稿の目的は,大学生の就職活動に係る自己PR文を題材に,就職内定者の産出文章について,添削前と添削後(内定獲得につながった文章)ではどのような違いが見られるのかを探索的に検討することである。
自己PR文は,多くの大学生が就職活動の場面で産出を求められる。坂本(2013)は,たとえばアルバイトを題材とする場合,PRの着眼点として①積極的に行動した事例,③目標を達成した事例・成果など6点を挙げており,また,そのような点を活かして文章を書く際,様々な着眼点で(自身の)経験を分析することについて述べている。坂本(2013)では,これらの観点から産出された内定者の自己PR文,中でも,坂本による添削やコメントが加えられる前および後の文章が掲載されている(添削やコメントを加えられた後の文章については,内定獲得につながっている)。そこで,内定獲得につながる文章の産出を行う上で必要なことがらを検討する一環として,本稿では,添削前と後における産出文章の違いについて検討した。
【方 法】
材 料 自己PR文 本稿では,坂本(2013)に掲載されている自己PR文のうち,内定者の実例として紹介されている30名分の産出文章(添削前30編/添削後30編)を材料として用いた。なお,文章産出者は,就職活動中の大学4年生である。
手続き 30名の大学生の自己PR文について,添削前/添削後の文章の違いを検討するため,対象となる文章をデータベース化した。その上で,TRUSTIAを用いた文章の解析を行い,クラスターの分類,文書に関する基本的なデータの算出(1文書あたりの平均語句数,平均文字数),語句トップ10(名詞句・形容詞句・動詞句の頻度),係り受けトップ10(名詞句―形容詞句,名詞句―動詞句の係り受けの頻度)に関する分析を行った。なお,本稿において主な分析対象となるのは,係り受けトップ10に関するデータである。
【結果と考察】
TRUSTIAを用いた文章の解析により,下記に示す結果が得られた。まず,書き手の平均産出字数を検討したところ,添削前は131字,添削後は140字であった。添削前―添削後間で対応のあるt検定を行ったが,字数の差は有意ではなかった。そこで,実際の記述事項にどのような違いが見られるのかを検討するため,係り受けについて,名詞句―形容詞句における事例を基に,以下の検討を加えた。
まず,添削前の文章における係り受けトップ10として挙げられた事項は,「声―大きい(頻度2)」「経験―よい(頻度1)」「人,先生,特訓,結果―厳しい(それぞれ頻度1)」といったものであった。このうち,声に関する文章は一編見られ,アルバイトを例にしていたが,文章の中身を確認したところ,「私の声は大変大きく~」「大きな声と元気のよさで,御社の皆様を明るくします」のように,書き手自身が声が大きいという状態が記されているものであった。また,「経験―よい」についても当該に関する文章が一編見られ,「(テレビ局のカメラアシスタントのアルバイトの経験を踏まえ)荷物がとても重くて辛かったのですが,それもよい経験になりました」といった,書き手自身の経験を踏まえた感想と思われる記述がなされていた。
一方,添削後の文章については,「ベテラン店員挨拶,指導,舞台裏,練習―厳しい(それぞれ頻度1)」「意思,仕事,障がい者,疎通-困難(それぞれ頻度1)」といった係り受けがトップ10に含まれた。このうち,「ベテラン店員―厳しい」ついては当該文章が一編見られ,中身を確認したところ,服屋でのアルバイトの中で,店の売上アップに貢献するためにコーディネート術とセールストーク術をベテラン店員に厳しく指導されたこと,
その結果,客単価を32.8%アップさせたことが記されている。これらの記述を基にすると,添削前の文章では書き手の状態や書き手自身の経験の感想が記される程度であるものの,添削後においては具体的な目的のために具体的な指導をなされ,具体的数値をもって指導の結果が示されているということが考えられる。だたし,ここで検討を加えたのは名詞句―形容詞句に関する係り受けのごく一部にすぎない。今後は名詞句―形容詞句および名詞句―動詞句の係り受け全体に関する詳細な検討が必要であろう。
(注)本研究は,平成25年度 阪南大学産業経済研究所の助成を受けて行われた。