The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA050] 生徒の怠学行動に関する研究(1)

怠学行動尺度の作成

湯浅英幸1, 大久保智生2 (1.香川大学大学院, 2.香川大学)

Keywords:怠学行動, 中高生, 逸脱行動

問題と目的
学校現場では,授業中の私語や居眠り,授業欠席をはじめとする,生徒の学習上の行動が問題視されている。多くの場合,そうした逸脱行動をする生徒は,教師から「怠け者」というレッテルを貼られてきたといえる。
これまでの学習上の逸脱行動に関する研究は,私語などの特定の逸脱行動に焦点を当てた研究がほとんどである(e.g., 本間, 2000;松本・松嶋, 2008;卜部・佐々木, 1999)。また,大学生を対象とした研究も多い(e.g., 出口・吉田, 2005;小林, 2009;小林, 2012)。しかしながら,現実には学習上の逸脱行動は多様であり,中高生においても日常的にみられる行動である。したがって,中高生に焦点を当て,学習上の逸脱行動を全般的に捉える必要があるといえる。
学習上の逸脱行動を表す既存の概念としては「怠学」がある。これまで怠学は,不登校だけでなく,非行とも捉えられてきた。また怠学は,「病気やケガなどの理由がないのに,さぼって学校に行かないこと」であるが(社会安全研究財団, 2001),「勉強しないこと」も怠学とされている(e.g., 佐々木, 1991)。このように怠学は,その捉え方や定義が曖昧であるため,研究を進めるにあたり,新たに怠学を定義する必要がある。本研究では,「教師から怠けているとみなされる,学習にかかわる生徒の逸脱行動」を怠学行動と定義する。
以上をふまえ,本研究では,怠学行動尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とする。

方法
怠学行動尺度の作成:予備調査として,中学校の教師14名,高校の教師14名を対象に,「学校や授業場面においてなまけていると感じる生徒の行動」についての自由記述を収集した。収集した自由記述を心理学専攻の大学生3名と大学教員1名が検討し,20項目からなる怠学行動尺度を作成した。回答形式は4件法である。
妥当性のための尺度:(1)無気力感尺度:笠井・村松・保坂・三浦(1995)の作成した無気力感尺度20項目を使用した。回答形式は4件法である。(2)「学業への意識」,「校則への意識」:岡田(2008)の作成した学校生活の下位領域に対する意識の下位尺度のうち,「学業への意識」因子4項目,「校則への意識」因子4項目を使用した。回答形式は4件法である。(3)「学業」:大久保・青柳(2004)の作成した中高生用学校生活尺度の下位尺度のうち,「学業」因子4項目を使用した。回答形式は4件法である。
調査対象者:中学校1校の1~3年生203名(男性109名,女性94名),高校1校の1~3年生240名(男性99名,女性141名)


結果と考察
怠学行動尺度20項目に対して,因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った(Table 1)。因子負荷量の絶対値0.4以上を示した項目を参考に2因子16項目が妥当であると考えられた。第1因子は「学習態度の欠如」因子,第2因子は「授業からの離脱」因子と解釈した。
尺度の信頼性を検討するため,クロンバックのα係数を算出したところ,第1因子は.826,第2因子は.762であり,内的整合性の観点から一応の信頼性は確認できた。
次に,尺度の妥当性を検討するため,怠学行動尺度と各下位尺度との相関係数を算出した。その結果,「授業からの離脱」と「消極的友人関係」との間には有意な相関がみられなかったが(r=.020, n.s.),それ以外の「無気力感」尺度の下位尺度との間には有意な正の相関が認められた(r=.104~.487)。また,「学業への意識」,「校則への意識」,「学業」との間に有意な負の相関が認められた(r=-.465~-.351)。
以上の結果から,怠学行動尺度は一定の信頼性と妥当性を備えた尺度であるといえる。