The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA052] 日常生活における論理性に対する価値観の日米比較

中野瑠美子1, 三宮真智子1 (大阪大学大学院)

Keywords:論理性, 日米比較, 価値観

目的
 論理的思考や批判的思考は,学問,ビジネス,そして一般社会のあらゆる領域で必要とされるスキルであり(深堀,2013),欧米ではこの育成が重視されている(渡辺,2004)。わが国においても文部科学省は高校の英語や国語等の科目で論理的思考力の育成を求めている。日米両国の教育現場で求められている論理的思考の要である論理性に対し,日本および米国の人々はどのように考えているのだろうか。本研究は,日常生活における論理性に対する考え方や価値観を日米間で比較検討することを目的とする。
方法
調査協力者 日本人成人 10名(男女各5名)および米国人成人10名(男女各5名;米国在住8名,日本在住2名)であった。なお,調査協力者の年齢は日米ともに20歳代から60歳代であった。
調査手続き 英語版および日本語版の質問紙を作成し個別に依頼した。主な質問内容は表1に示す7項目であり,「5.非常にそう思う」から「1. 全くそう思わない」の5件法で回答を求め,項目により自由記述の欄も設けた。

結果と考察
 t検定を行った結果,項目1に示す論理性追求行動に対する満足度の平均値は,米国人の方が有意に高かった(t (15)=2.67, p<.05)。米国人においては,たとえ好ましい結果とならなくても,自らが納得できるような解決法を模索し続ける行動自体に満足感を抱いていることが,自由記述からも示唆された。項目2でも米国人の平均値が有意に高く(t (18)=3.81, p<.01),米国人は論理的であると思われることを好んでいると推測される。これは,米国では小学生にも論理的な文章を書くことが求められているため,「論理的=知的」というイメージもあり,論理性をより肯定的に捉えていることに起因するのかもしれない。項目4で示される有意傾向も米国人の論理性の重視を示すものであろう。一方,項目6の自由記述では,日米に共通して「友情は論理に基づいていない」や「良い人間関係を保つために非論理的なことも行う」など,論理性が必ずしも優先されるわけではないことが示唆された。
 以上のことから,本研究では対象者は少数であったが,日常生活における論理性に対する考え方や価値観にみられる日米間の相違や共通点が示された点は興味深い。