The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PA061] 中・高生の音楽聴取行動とストレス・コーピングとの関係Ⅱ

岩井佳子1, 沢崎真史2 (1.梅花女子大学, 2.聖徳大学)

Keywords:中・高生, 音楽聴取行動, ストレス・コーピング

目的 中・高生の音楽聴取行動とストレス・コーピングについて,音楽聴取行動の頻度とストレス・コーピングとの関係,音楽聴取行動による気分とストレス・コーピングとの関係を検討する。学校差(中・高)・性差についての比較も試みる。
方法 2011年12月~2012年3月に大阪府内の中・高生 計1401名(有効回答者1106名,中学生829名,高校生277名/男子551名,女子555名)に,①音楽聴取行動頻度に関する項目(選択法)②音楽聴取行動による気分尺度4因子14項目(4件法,2013報告)③中・高生のストレス・コーピング尺度(4件法,「日常ストレス対処行動尺度」辻ら(1999)と「ストレス対処方略尺度」神藤(1998)を参考に作成)について回答を求めた。
結果 1)中・高生の音楽聴取行動の頻度とストレス・コーピングとの関係:①音楽聴取行動の頻度:中・高生がストレスを感じた時の音楽聴取行動について,音楽を「よく聴く」43.58%,「時々聴く」31.83%,「あまり聴かない」11.12%,「全く聴かない」13.47% という結果が得られ,中・高生の約75%(3/4)が,ストレス・コーピングの一方略として音楽聴取行動を行っていることが確認された。②学校差と音楽聴取行動の頻度によるストレス・コーピング行動の関係:音楽聴取行動の頻度「よく聴く」「時々聴く」「あまり聴かない」「全く聴かない」と中学生・高校生の学校差を独立変数,コーピングの下位尺度である「問題解決への積極的取り組み」「遊び・気分転換」「援助要請」「時間経過・回避的対処」の4得点を従属変数とした二要因の分散分析を行った結果,4つの下位尺度得点については有意な交互作用はみられなかった。学校差の主効果については「問題解決への積極的取り組み」と「時間経過・回避的対処」は高校生の方が「遊び・気分転換」は中学生の方が高く,「援助要請」は学校差は認められなかった。音楽聴取行動の頻度の主効果については「よく聴く」群は4つの下位尺度全てにおいて高い得点がみられた。③性別と音楽聴取行動の頻度によるストレス・コーピング行動の関係:音楽聴取行動の頻度と性別を独立変数,コーピングの下位尺度4得点を従属変数とした二要因の分散分析を行った結果,4つの下位尺度得点については有意な交互作用はみられなかった。性別の主効果については「問題解決への積極的取り組み」「援助要請」「時間経過・回避的対処」は女子の方が,「遊び・気分転換」は男子の方が高かった。
2)音楽聴取行動による気分の学校差と性差:学校差(中・高)と性別を独立変数,音楽聴取行動による気分の下位尺度である「意欲促進」「高揚感」「共感・感動」「安心感」の4得点を従属変数とした二要因の分散分析を行った結果,「意欲促進」と「共感・感動」について有意な交互作用がみられた。音楽聴取行動による気分の「意欲促進」は女子中学生が,「共感・感動」は男子高校生と女子中・高生が高かった。性別については女子の方が4つの下位尺度全てにおいて高く,高校生の方が「高揚感」が高い傾向にあった。3)ストレス・コーピングの学校差と性差:学校差(中・高)と性別を独立変数,コーピングの下位尺度4得点を従属変数とした二要因の分散分析を行った結果,4つの下位尺度得点については有意な交互作用はみられなかった。学校差について,「問題解決への積極的取り組み」と「時間経過・回避的対処」は高校生の方が,「遊び・気分転換」は中学生の方が高く,性別については,女子の方が「問題解決への積極的取り組み」「援助要請」「時間経過・回避的対処」について高い傾向にあった。4)音楽聴取行動による気分とストレス・コーピングとの関係:音楽聴取行動による気分がストレス・コーピングに及ぼす影響を検討するために,対象者全体,中・高別,男女別に重回帰分析を行った。①対象者全体の重回帰分析:音楽聴取行動による気分の「意欲促進」は「問題解決への積極的取り組み」「遊び・気分転換」「援助要請」に,「高揚感」は「遊び・気分転換」に,「共感・感動」は「問題解決への積極的取り組み」「援助要請」「時間経過・回避的対処」に影響し「遊び・気分転換」には影響しない,「安心感」は「時間経過・回避的対処」に影響する傾向にあることがわかった。②中・高別の重回帰分析:「意欲促進」は中・高生ともに「問題解決への積極的取り組み」に影響する傾向が強く,高校生について「時間経過・回避的対処」に影響しない傾向にあった。中学生については「遊び・気分転換」「援助要請」にも影響がみられた。「高揚感」は中・高生ともに「遊び・気分転換」に影響する傾向にあり,高校生の方がその傾向が強かった。「共感・感動」は中・高生ともに「時間経過・回避的対処」に影響する傾向にあり,高校生の方がその傾向が強かった。中学生では「問題解決への積極的取り組み」「援助要請」にも影響する傾向にあるが,「遊び・気分転換」には影響しない傾向にあった。「安心感」は中学生は「時間経過・回避的対処」に影響する傾向にあった。③男女別の重回帰分析:「意欲促進」は男女ともに,「問題解決への積極的取り組み」「遊び・気分転換」に影響する傾向にあり,特に「問題解決への積極的取り組み」に強く影響する傾向にあった。男子は「援助要請」にも影響する傾向にあった。「高揚感」は,女子は「遊び・気分転換」に影響する傾向にあり,「共感・感動」は,男女ともに「時間経過・回避的対処」に影響する傾向にあり,男子の方がその傾向が強く,女子は影響しない傾向にあった。男子は「問題解決への積極的取り組み」「援助要請」にも影響する傾向にあった。「安心感」は男子は「問題解決への積極的取り組み」には影響しない傾向にあった。
考察 音楽聴取行動の頻度の高い生徒がストレス・コーピングについても使用頻度が高く,ストレスの解消や軽減に積極的であることが示された。音楽聴取行動による気分とストレス・コーピングとの関係について,中・高生ともに,音楽を聴いて気分を落ち着かせたり,安心感を得て直接問題解決をしない場合があるが,音楽聴取行動により意欲を高めて,前向きに取り組もうともしていることが推察できる。高校生については音楽聴取行動によって「意欲促進」できれば,「時間経過・回避的対処」を行わなくなる傾向にあり,ストレス・コーピングに対する明確な意図をもって音楽聴取行動を行い,積極的にストレスに対処している様子が窺える。