[PA078] 親性準備性の発達に影響を及ぼす要因の検討
Keywords:親性準備性, 自尊感情, 青年
目 的
近年,青年期における親になるための資質に対する関心が高まり,青年の親性準備性の育成が重要視されている。
親性準備性は,子どもに対する親としての役割を遂行するための資質,つまり「養育役割」として捉えられてきた(伊藤,2003)。親性準備性の形成には,乳幼児期から青年期までの経験が関わっており,子どもの誕生後,現実に親となるまでの経験と学習が重要な意味を持っていると指摘されている(久世,1995)。親性準備性の発達にかかわる要因として,自分が親から受けた養育経験が大きな影響を及ぼすこと(松岡ら,2000)や子どもとの接触経験が多い者は,親性準備性や乳幼児への好意感情が高いとする研究もある(牧野・中西,1998,青木・松井,1988)。
これまでの研究では,乳幼児期から青年期までの経験とともに積み上げられてきた自己観と親性準備性との関連についてはほとんど検討されてこなかった。青年が自分自身を悲観的に捉えているならば,親になることの自信は低いかもしれないし,逆に,自分に自信がある青年は,子育てに対しても前向きに捉えられているかもしれない。そこで本研究では,青年の自己観と親性準備性の関わりについて検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 H県内の大学に在籍する学生88名(平均年齢21.1歳,SD=1.17歳 男性32名(36.4%),女性56名(63.6%))
調査時期 2013年5月に1回目(Time1),2ヶ月後である2013年7月に2回目(Time2)を実施。
基本的属性 調査対象者には,性別および年齢,大学入学後において小さな子どもと触れ合う機会(1.よくある,2.一度ないし数回ある,3.全くない) がどの程度であったのかということについて回答してもらった。
質問紙における測定尺度
親性準備性についての項目選定
項目の収集・選定にあたっては,伊藤(2003),佐々木(2007)を参考にして,16項目を選出した。
本来感尺度 伊藤・小玉(2005)による本来感尺度を用いた。全7項目,5件法。
Rosenbergの自尊感情 Rosenberg尺度の日本語版である,山本・松井・山成(1982)による自尊感情尺度を用いた。全10項目,5件法。
自己嫌悪感尺度 水間(1996)の自己嫌悪尺度のうち,因子負荷量が大きい5項目を選定,5件法。
自己価値の随伴性尺度 伊藤・小玉(2006)の自己価値の随伴性尺度のうち,因子負荷量が大きい5項目を選定,5件法。
結 果
Time2の親性準備性を従属変数とし,独立変数としてTime1の親性準備性(Step1),Time1の子どもとの触れ合い及びTime2のそれぞれの個人特性(Step2),その交互作用項(Step3)を投入した階層的重回帰分析を行った。その結果,子どもとの触れ合いと自尊感情において有意な交互作用項が示された(Fig.1)。
考 察
本研究の結果,自尊感情が高ければ子どもとの触れ合いが増えるほど親性準備性が高くなることが示された。このことから,自分に対して肯定的な評価をしている青年は,子どもとの触れ合いが増えるにつれて,子どもとの関わりに対する自信を高め,親になるための資質に関する自己評価も高まることが予測された。本研究の結果から,親性準備を高めるためには子どもとの触れ合い経験を増やすだけではなく,自己に対する肯定的な態度を育てる必要があることが示唆された。
近年,青年期における親になるための資質に対する関心が高まり,青年の親性準備性の育成が重要視されている。
親性準備性は,子どもに対する親としての役割を遂行するための資質,つまり「養育役割」として捉えられてきた(伊藤,2003)。親性準備性の形成には,乳幼児期から青年期までの経験が関わっており,子どもの誕生後,現実に親となるまでの経験と学習が重要な意味を持っていると指摘されている(久世,1995)。親性準備性の発達にかかわる要因として,自分が親から受けた養育経験が大きな影響を及ぼすこと(松岡ら,2000)や子どもとの接触経験が多い者は,親性準備性や乳幼児への好意感情が高いとする研究もある(牧野・中西,1998,青木・松井,1988)。
これまでの研究では,乳幼児期から青年期までの経験とともに積み上げられてきた自己観と親性準備性との関連についてはほとんど検討されてこなかった。青年が自分自身を悲観的に捉えているならば,親になることの自信は低いかもしれないし,逆に,自分に自信がある青年は,子育てに対しても前向きに捉えられているかもしれない。そこで本研究では,青年の自己観と親性準備性の関わりについて検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 H県内の大学に在籍する学生88名(平均年齢21.1歳,SD=1.17歳 男性32名(36.4%),女性56名(63.6%))
調査時期 2013年5月に1回目(Time1),2ヶ月後である2013年7月に2回目(Time2)を実施。
基本的属性 調査対象者には,性別および年齢,大学入学後において小さな子どもと触れ合う機会(1.よくある,2.一度ないし数回ある,3.全くない) がどの程度であったのかということについて回答してもらった。
質問紙における測定尺度
親性準備性についての項目選定
項目の収集・選定にあたっては,伊藤(2003),佐々木(2007)を参考にして,16項目を選出した。
本来感尺度 伊藤・小玉(2005)による本来感尺度を用いた。全7項目,5件法。
Rosenbergの自尊感情 Rosenberg尺度の日本語版である,山本・松井・山成(1982)による自尊感情尺度を用いた。全10項目,5件法。
自己嫌悪感尺度 水間(1996)の自己嫌悪尺度のうち,因子負荷量が大きい5項目を選定,5件法。
自己価値の随伴性尺度 伊藤・小玉(2006)の自己価値の随伴性尺度のうち,因子負荷量が大きい5項目を選定,5件法。
結 果
Time2の親性準備性を従属変数とし,独立変数としてTime1の親性準備性(Step1),Time1の子どもとの触れ合い及びTime2のそれぞれの個人特性(Step2),その交互作用項(Step3)を投入した階層的重回帰分析を行った。その結果,子どもとの触れ合いと自尊感情において有意な交互作用項が示された(Fig.1)。
考 察
本研究の結果,自尊感情が高ければ子どもとの触れ合いが増えるほど親性準備性が高くなることが示された。このことから,自分に対して肯定的な評価をしている青年は,子どもとの触れ合いが増えるにつれて,子どもとの関わりに対する自信を高め,親になるための資質に関する自己評価も高まることが予測された。本研究の結果から,親性準備を高めるためには子どもとの触れ合い経験を増やすだけではなく,自己に対する肯定的な態度を育てる必要があることが示唆された。