[PA081] 遡及的自我同一性地位面接の信頼性を検討する試み
自我同一性地位とその移行経路の再検査法による検討
Keywords:アイデンティティ, 同一性地位, 青年期
問題・目的:Erikson(1950)による“自我同一性”を実証的に捉える方法の一つに,Marcia(1966)による自我同一性地位面接(以下EISI)が挙げられる。1度目の評定が自我同一性達成であった者が6年後2度目の調査時に早期完了と評定されるケースが発見され(Marcia,1976),それ以後自我同一性地位(以下EIS)の移行は多くの研究で認められている(小沢, 1989:園田他,1996)。今日ではEISは移行を繰り返し,生涯を通して自我同一性は発達して行く事が明らかにされているが(岡本,1986),EISIの信頼性の検討は結局される事は無かったようである。眞鍋(2013)は無藤(1969)のEISIを改良し,過去のEISを遡って評定し移行を類型化することができる,遡及的自我同一性地位面接(Retroactive Ego Identity Status Interview:REIEI)を考案した。REISIではまず現在の選択の評定に無藤の項目を実施し,さらにそれ以前の直近の選択を問う。直近の選択について,無藤の項目のうち過去形に変えて妥当である項目を実施し,さらにそれ以前の直近の選択,選択の変化が何によってもたらされたのかを問い,これらの質問からEISを評定する。これを遡及的に繰り返し行い,EISの移行を類型化する面接調査法である。REISIはEISIをベースにしており,1年を空けて2度実施した場合,time1(眞鍋,2013)で評定したEISがtime2(今回)にも含まれることになる。そのため time1とtime2の重複部分の一致の程度を確認する事で,REISIで求める移行の類型化の有効性と,EISIで求めるEISの信頼性も検討する事が可能であると考えられる。
方法:調査時期:time1は2012年8月から11月に行われ今回のtime2は2013年10月に行われた。
協力者:3名の協力者の結果を分析した。属性はTableの左欄に性別・time1,2時の職種を記した。
手続きと倫理的配慮:調査目的の説明,質問への回答をパスしたりいつでも調査を終えられる事などを説明し,質問を受け付け,同意書への署名によって協力の意志を確認した上でREISIを行った。場所は大学の相談室など,協力者のプライバシーが十分に確保された場所で行った。なお面接は同意を得て録音し,調査者が逐語化を行った。
結果の整理:自我同一性という発達課題の特性と,EISの移行の流れを捉えるために,中学3年生時点の選択からEISとして評定する事にした。逐語を基に調査者と臨床心理学を学んでいる大学院生1名が別々にEISを評定した。
結果:EISの評定者間一致率は68%であった。一致しなかったEISは協議され,それでも合意しなかった場合は筆者の評定が採用された。各EISの選択内容と,選択のきっかけをTableに示す。
考察:AさんとBさんはtime1ではAであったが,大学院に進学してMに移行していた。これ自体は発達的変化と言えるが,“現在の職業選択”についてEISを評定するEISIの特性から,以前のAが捉えられていない。一つの職業選択についても,環境の変化(進学,卒業)などで区切って評定する方法が有効である事が示唆された。Aさんの価値観が選択・EISともに変化したが,これは現在の職業選択と連関して変化したことが想定される(植之原,1993)。 Cさんは想起した選択は異なるがEISは一致していた。現在のEISがAだと想起された選択・EIS共に安定し,現在のEISがMだと想起された選択・EISは不安定であり,現在のEISがより未発達だと想起された選択は不安定だがEISは安定することが示された。今後はより多くの協力者の発達経過を調査する事が必要だと考えられる。
文献:眞鍋(2013).教心総会論文集,p279
方法:調査時期:time1は2012年8月から11月に行われ今回のtime2は2013年10月に行われた。
協力者:3名の協力者の結果を分析した。属性はTableの左欄に性別・time1,2時の職種を記した。
手続きと倫理的配慮:調査目的の説明,質問への回答をパスしたりいつでも調査を終えられる事などを説明し,質問を受け付け,同意書への署名によって協力の意志を確認した上でREISIを行った。場所は大学の相談室など,協力者のプライバシーが十分に確保された場所で行った。なお面接は同意を得て録音し,調査者が逐語化を行った。
結果の整理:自我同一性という発達課題の特性と,EISの移行の流れを捉えるために,中学3年生時点の選択からEISとして評定する事にした。逐語を基に調査者と臨床心理学を学んでいる大学院生1名が別々にEISを評定した。
結果:EISの評定者間一致率は68%であった。一致しなかったEISは協議され,それでも合意しなかった場合は筆者の評定が採用された。各EISの選択内容と,選択のきっかけをTableに示す。
考察:AさんとBさんはtime1ではAであったが,大学院に進学してMに移行していた。これ自体は発達的変化と言えるが,“現在の職業選択”についてEISを評定するEISIの特性から,以前のAが捉えられていない。一つの職業選択についても,環境の変化(進学,卒業)などで区切って評定する方法が有効である事が示唆された。Aさんの価値観が選択・EISともに変化したが,これは現在の職業選択と連関して変化したことが想定される(植之原,1993)。 Cさんは想起した選択は異なるがEISは一致していた。現在のEISがAだと想起された選択・EIS共に安定し,現在のEISがMだと想起された選択・EISは不安定であり,現在のEISがより未発達だと想起された選択は不安定だがEISは安定することが示された。今後はより多くの協力者の発達経過を調査する事が必要だと考えられる。
文献:眞鍋(2013).教心総会論文集,p279