The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(501)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PA089] 児童青年期のインターネットおよびゲーム依存に対する心理的介入の効果

宇田川詩帆1, 蓑崎浩史2, 川越杏梨1, 嶋田洋徳3 (1.早稲田大学大学院, 2.駿河台大学, 3.早稲田大学)

Keywords:児童青年, インターネット依存, メタ分析

【問題と目的】
昨今のインターネットの普及によって,生活が便利になった反面,インターネットの活動に従事し続けることが,不登校や引きこもり,失業や離婚などの重篤な心理社会的な問題を引き起こす一因となり得ることが指摘されている(e.g., Du, 2010)。インターネット依存とは,「インターネットやオンラインゲームに関する使用のコントロールができなくなることによって,職業,学業などの日常生活に支障をきたし,社会生活機能が維持できなくなる衝動調節機能障害」(Young, 1998)と定義されており,成人においては,認知行動療法に基づく介入が,インターネットへの従事にかかわる行動的側面,認知的側面,情動的側面の改善に対して有効であることが明らかにされている(e.g., Young, 2007)。
一方で,インターネット依存の問題は,児童青年期から生じていることが指摘されているものの(Gentile et al., 2011),成人のように,有効な介入の方法やその効果の整理がなされておらず,具体的な治療技法に関して,どのような側面への介入技法が有効であるかについても十分な整理が行われていない。そこで,本研究では,児童青年期のインターネット依存に対する介入の効果に関するメタ分析を行い,その効果性を検討する。
【方 法】
文献収集:インターネットおよびゲーム依存の治療に関する論文を検索することを目的に,インターネット依存にかかわるキーワードとして,“Internet Addiction”,“Problematic Internet use”,“Game Addiction”,治療にかかわるキーワードとして,“therapy”,“treatment”を用いて,American Psychological Associationが提供するPsycINFO,National Library of Medicineが提供するPubmedを用いて電子検索を行った。その結果,1,474件が抽出された(2013年3月11日時点)。次に,児童青年期の子どものインターネット依存の治療を目的として介入を行っている文献を抽出するために,1.児童青年期の子どもを対象としていること,2.介入が行われていること,3.統計量が記載されていること,4.査読つき学術雑誌に掲載されていること,5.各測定時期のデータがそろっていること,を選定基準として文献を絞り込み,8件の文献を抽出した。
分類:本研究では,児童青年期の子どものインターネット依存に対する治療の効果および認知行動的介入(以下,CBT)の効果を検討することを目的としたことから,認知行動論的介入とそれ以外の心理学的介入(以下,TAU)の分類について,インターネットへの従事にかかわる1.行動面,2.認知面,3.情動面の変容を具体的な介入対象としているという基準を用いて,児童青年期の子どもに対する認知行動療法を専門とする臨床心理士2名が分類を行った。
分析方法:介入前後の効果の評価について,Cohen’s d値を算出した。また,抽出された研究の均質性の評価については,Cochran’s Q値を用いた。
【結果と考察】
抽出された文献を対象として,CBT,TAU,統制群,薬物治療群についてd 値を算出し,有効性を検討した。その結果,いずれの介入も高い効果を示したが,認知行動的介入の顕著な有効性は示されなかった(Table)。また,心理学的介入(認知行動論的介入とそれ以外の心理学的介入)における,認知面,行動面,情動面に対する効果を検討した結果,認知面(d =1.18)および行動面(d =1.04)に対する介入効果が高いこと,情動面に対する介入効果は中程度(d =.56)であること,環境面に対する介入効果は小さい(d =.26)ことが示された。
本研究は,児童青年期のインターネット依存に対する介入研究を概観することで,有効な介入アプローチの整理,治療において標的とすべき側面の整理を行った。認知行動療法に基づく介入効果の秀でた優位性は示されなかったものの,心理学的介入については,いずれも高い効果が示された。また,介入において認知面および行動面にアプローチすることで高い効果が得られる可能性が示唆された。しかしながら,文献対象数が十分でないため,結果の一般化は慎重に行う必要があると考えられる。