The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PB006] 学校危機に遭遇した教師の体験に関する実証的研究(6)

前担任生徒の学校管理外事故死に遭遇した学年主任の事例から

林亜希恵1, 窪田由紀1, 石川雅健2, 山中大貴1, 成田絵吏1 (1.名古屋大学, 2.愛知学院大学)

Keywords:学校危機, 回復過程, 複線径路・等至性モデル

問題と目的
突然の災害,事件・事故に遭遇して危機に陥った学校へより効果的な支援を行うには,自らも大きな影響を受けながら危機対応の中心とならざるを得ない教師の体験を明らかにすることが求められる。本研究は,昨年まで担任であった生徒の学校管理外の事故死に遭遇した学年主任の事例を分析し,学校危機における,より効果的な支援のあり方を検討する基礎資料を得ることを目的とする。
方法
【インタビュー参加者】学校管理外の事故に遭遇したA県B市C中学の学年主任。参加については所定の書式で同意を得た。インタビュー日時は,X+2年9月5日12時~12時55分。
【事件の概要】休日に中3生徒が川で溺れ,数日後に死亡した事案。学年主任は,1~2年時の生徒の担任。緊急支援は,延べ4日間行われた。
【データ収集・分析方法】項目及び分析方法は,丸山ら(2013)参照。研究倫理委員会承認済。
結果と考察
本事例は,生徒との関わりの深さから,他の教員との感情のずれがあった点が特徴的であった。
事故の連絡を受けたときには,緊急性をあまり
感じず学校に戻った。しかし,管理職2人共が病院に行ったため,学校は管理職不在が続き,情報が錯綜した。そんな中で,職員からの「何時まで拘束されるのか」という心無い言葉に,学年主任は傷つきと強い怒りを感じていた。よく知っていた生徒の死への悲しみをより強く感じながらも,立場上管理職不在時でまとめ役にならざるを得ず,「冷静ではいられない」状態で危機対応に当った。緊急支援チームが入ることで,「生徒を見る大人の数が増え,様子を伝えてもらうことができて,助かった」と語っている。
また,亡くなった生徒の見送りについて,当該クラスの生徒の「見送りたい」という気持ちに触れ,自分たち教員のしてきた命の教育が生徒に届いていることを知ると共に,真剣な思いに触れて嬉しいと感じる。他学年の教員やSCの支援を得ながら,喪の作業を行い,学校全体で生徒の死を受け入れていった。その後,学校構成員間における緊急時の連絡対応の整備を行うことや命の教育を続けることを重要視した。
関わりが深い生徒が被害にあった場合,その教師の感情の揺れは大きく,対応は困難である。また,関わりの深さの違いにより,当該生徒への思いや危機対応への温度差が生じ,学校全体としての組織的な対応が妨げられる危険がある。このような事案においては,臨床心理士チームは他の事案にも増して当該生徒と関係の深い教師に対する情緒的なサポートを行うことが求められる。