[PB012] 児童の「仲間外れ」を規定する要因についての検討
Keywords:仲間外れ, 日常ストレッサー, 居場所感
問題と目的
「仲間外れ」は,「意図的な操作や仲間関係にダメージを与えることによって他者を傷つける行為」である「関係性攻撃」のうちの具体的行動であり(Crick & Grotpeter, 1995),児童期における心理社会的不適応行動との関連が示唆されている(Crick, Ostrov, & Werner, 2006)。
ストレス過多社会と言われる現代において,大人だけでなく子どもたちも日々さまざまなストレッサーを体験している(西野・小林・北川,2009;岡安・嶋田・丹羽・森・矢冨,1992)。石本(2010)は,中学生において「居場所感」が心理的適応や学校適応を促進する影響を及ぼすことを示唆した。「居場所感」とは「心の拠り所となる関係性,および,安心感があり,ありのままの自分を受容される場」(則定,2008)と定義されている。こうしてみると,日々のストレッサーを体験しても「居場所感」があることにより攻撃行動を起こしにくいのではないかと予想される。以上のことから,本研究では,日常ストレッサーが「仲間外れ」といった攻撃行動に及ぼす影響を「居場所感」が緩衝するであろうという仮説モデルを検討する。
方 法
調査対象 小学4・5年生 604名(男子318名,女子286名)。
使用尺度 小学生用日常ストレッサー尺度 (西野・小林・北川, 2009)から6項目(4件法),居場所感尺度(則定2007,を参考に新たに作成)(5件法;13項目),関係性攻撃尺度(坂井・山崎,2004を参考に新たに作成)(4件法;5項目)。
結果と考察
基本統計量 新たに作成した居場所感尺度について,内包する項目の因子負荷量は全て.55以上あり,α係数は.92であった。関係性攻撃尺度について因子分析した結果,2因子構造を確認したが,第2因子は項目数も少なく(2項目),今回は第1因子のみを以降の分析に用いることとし,内包する項目の内容から「仲間外れ(3項目:α=.68)」と命名した。各因子の平均値,SDおよび学年と性による差の検定結果をTable 1に示す。 Table 1の結果より,「友人関係ストレッサー」において4年生の平均得点が5年生より有意に高く,「居場所感」において女子の方が男子より,「仲間外れ」において男子の方が女子よりそれぞれ平均得点が有意に高いことが確認された。
「仲間外れ」を規定する要因 次に、「仲間外れ」を従属変数とする階層的重回帰分析を行った結果をTable 2に示す。先行要因である「友人関係ストレッサー」と「学業ストレッサー」(Step 1),緩衝要因である「居場所感」(Step 2),交互作用項として「居場所感×友人関係ストレッサー」と「居場所感×学業ストレッサー」(Step 3)を順次投入した。その結果,4年生男子においてのみ「友人関係ストレッサー」と「学業ストレッサー」が「仲間外れ」を促進する可能性が示唆された。また,5年生男子においてのみ「居場所感」が「仲間外れ」を抑制する可能性が示された。本研究の結果から,日常ストレッサーが仲間外れに及ぼす影響に対する「居場所感」の緩衝効果は確認されなかった。
総合的考察 本研究における仮説モデルは棄却されたが,「居場所感」が「仲間外れ」を抑制する可能性は一部確認された。そのため,今後,仲間外れといった関係性攻撃を抑制する心理的プロセスを解明するためには,本研究で想定した要因以外に「居場所感」と「仲間外れ」を媒介する第3の要因を想定することが必要かもしれない。
「仲間外れ」は,「意図的な操作や仲間関係にダメージを与えることによって他者を傷つける行為」である「関係性攻撃」のうちの具体的行動であり(Crick & Grotpeter, 1995),児童期における心理社会的不適応行動との関連が示唆されている(Crick, Ostrov, & Werner, 2006)。
ストレス過多社会と言われる現代において,大人だけでなく子どもたちも日々さまざまなストレッサーを体験している(西野・小林・北川,2009;岡安・嶋田・丹羽・森・矢冨,1992)。石本(2010)は,中学生において「居場所感」が心理的適応や学校適応を促進する影響を及ぼすことを示唆した。「居場所感」とは「心の拠り所となる関係性,および,安心感があり,ありのままの自分を受容される場」(則定,2008)と定義されている。こうしてみると,日々のストレッサーを体験しても「居場所感」があることにより攻撃行動を起こしにくいのではないかと予想される。以上のことから,本研究では,日常ストレッサーが「仲間外れ」といった攻撃行動に及ぼす影響を「居場所感」が緩衝するであろうという仮説モデルを検討する。
方 法
調査対象 小学4・5年生 604名(男子318名,女子286名)。
使用尺度 小学生用日常ストレッサー尺度 (西野・小林・北川, 2009)から6項目(4件法),居場所感尺度(則定2007,を参考に新たに作成)(5件法;13項目),関係性攻撃尺度(坂井・山崎,2004を参考に新たに作成)(4件法;5項目)。
結果と考察
基本統計量 新たに作成した居場所感尺度について,内包する項目の因子負荷量は全て.55以上あり,α係数は.92であった。関係性攻撃尺度について因子分析した結果,2因子構造を確認したが,第2因子は項目数も少なく(2項目),今回は第1因子のみを以降の分析に用いることとし,内包する項目の内容から「仲間外れ(3項目:α=.68)」と命名した。各因子の平均値,SDおよび学年と性による差の検定結果をTable 1に示す。 Table 1の結果より,「友人関係ストレッサー」において4年生の平均得点が5年生より有意に高く,「居場所感」において女子の方が男子より,「仲間外れ」において男子の方が女子よりそれぞれ平均得点が有意に高いことが確認された。
「仲間外れ」を規定する要因 次に、「仲間外れ」を従属変数とする階層的重回帰分析を行った結果をTable 2に示す。先行要因である「友人関係ストレッサー」と「学業ストレッサー」(Step 1),緩衝要因である「居場所感」(Step 2),交互作用項として「居場所感×友人関係ストレッサー」と「居場所感×学業ストレッサー」(Step 3)を順次投入した。その結果,4年生男子においてのみ「友人関係ストレッサー」と「学業ストレッサー」が「仲間外れ」を促進する可能性が示唆された。また,5年生男子においてのみ「居場所感」が「仲間外れ」を抑制する可能性が示された。本研究の結果から,日常ストレッサーが仲間外れに及ぼす影響に対する「居場所感」の緩衝効果は確認されなかった。
総合的考察 本研究における仮説モデルは棄却されたが,「居場所感」が「仲間外れ」を抑制する可能性は一部確認された。そのため,今後,仲間外れといった関係性攻撃を抑制する心理的プロセスを解明するためには,本研究で想定した要因以外に「居場所感」と「仲間外れ」を媒介する第3の要因を想定することが必要かもしれない。