[PB017] 高校における総合的な学習の時間・特別活動をつなぐ包括的SST
Keywords:ソーシャルスキルトレーニング, 高校生
問題と目的
近年,ソーシャルスキルは学校教育現場で多く実践されるようになり,高等学校でも実践されるになってきた(原田・渡辺,2011ら)。生徒の対人関係トラブルを解決することを目的とするだけでなく,社会に出る準備として進路教育の一環として,またネットいじめの予防など幅広い視点からコミュニケーション力向上が目指されている。一方,学校教育において学校教育課程における授業のどの時間で実施するかといった体系化,校内支援体制の整備といった定着に向けた実践上に課題が残る。これについては,リスク要因の低減だけでなく社会的コンピテンスの向上を目指した包括的な介入を目的とする学校危機予防教育のPBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports)における「個別だけでなく最適な学校環境そのものの健全性の確立」を創成していくという視点が参考となる(渡辺,2014)。つまり,SSTを実践する時,学校教育環境を整え,他教科等と体系的な枠組みの中で教育目標に向けてSSTが導入される必要があるといえよう。そこで本研究では,学校教育課程の中にSSTを位置づけ,全クラスを対象としたSSTを実施し,その効果を検証する。
方法
(1)対象者:公立高校1年生8学級326名のうち欠損値を除く有効回答220名。(2)測定尺度:ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田,2005),自尊心尺度(星野,1970),共感的感情反応尺度(櫻井他,2011)。(3)SST手続きと内容:授業者は教師(8名)と心理学専攻,あるいは教職課程の学生TA(6名),教師によるTA(2名)。1・5回目は第一筆者が全クラスを対象に実施した。(4)実施授業;特別活動におけるLHRの道徳を学ぶ時間(5時間)に実施。(5)実施期間と授業年間計画;2013年10月中旬から12月上旬。総合学習,特別活動,道徳の年間計画において社会性をキーワードとし、1学期は対人関係が学校生活等に影響することを重視した内容,2学期は共感性の視点から対人関係を捉える内容とSSTの実施,3学期はいじめを中心とした内容と同時に,情報の授業で情報リテラシーを学ばせ,ネットいじめと並行で学ばせた。ターゲットスキル;ソーシャルスキルとは,考えと気持ちを伝えるⅠ・Ⅱ(コミュニケーションとは・聴く)・感情のコントロール・共感する。授業構成;原田・渡辺(2011),原田(2013)の指導案に基づき,プログラムを修正して作成した。
結果と考察
各尺度の各因子別における実践時期についてt検定を行った結果を表1に示す。主張性,自尊心は向上したが,共感性は変化が見られなかった。感情教育は注目を浴びているが,効果測定については検討の余地があると考えられる一方,教員や生徒の多くからは道徳の授業として行ったSSTに対して「1学期からの実施希望」等,肯定的な意見が挙げられた。今後は,学校環境に注目する観点から学校が所要するデータがSSTの導入によりどう変化するかも詳細に検討することが課題である。
本研究は,平成25年度科学研究費助成事業学術研究助成基金助成金基盤研究(C)「教職課程の学生のためのソーシャルスキル教育の開発(課題研究番号:20623961,研究代表者:原田恵理子)の助成を受けた。
近年,ソーシャルスキルは学校教育現場で多く実践されるようになり,高等学校でも実践されるになってきた(原田・渡辺,2011ら)。生徒の対人関係トラブルを解決することを目的とするだけでなく,社会に出る準備として進路教育の一環として,またネットいじめの予防など幅広い視点からコミュニケーション力向上が目指されている。一方,学校教育において学校教育課程における授業のどの時間で実施するかといった体系化,校内支援体制の整備といった定着に向けた実践上に課題が残る。これについては,リスク要因の低減だけでなく社会的コンピテンスの向上を目指した包括的な介入を目的とする学校危機予防教育のPBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports)における「個別だけでなく最適な学校環境そのものの健全性の確立」を創成していくという視点が参考となる(渡辺,2014)。つまり,SSTを実践する時,学校教育環境を整え,他教科等と体系的な枠組みの中で教育目標に向けてSSTが導入される必要があるといえよう。そこで本研究では,学校教育課程の中にSSTを位置づけ,全クラスを対象としたSSTを実施し,その効果を検証する。
方法
(1)対象者:公立高校1年生8学級326名のうち欠損値を除く有効回答220名。(2)測定尺度:ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田,2005),自尊心尺度(星野,1970),共感的感情反応尺度(櫻井他,2011)。(3)SST手続きと内容:授業者は教師(8名)と心理学専攻,あるいは教職課程の学生TA(6名),教師によるTA(2名)。1・5回目は第一筆者が全クラスを対象に実施した。(4)実施授業;特別活動におけるLHRの道徳を学ぶ時間(5時間)に実施。(5)実施期間と授業年間計画;2013年10月中旬から12月上旬。総合学習,特別活動,道徳の年間計画において社会性をキーワードとし、1学期は対人関係が学校生活等に影響することを重視した内容,2学期は共感性の視点から対人関係を捉える内容とSSTの実施,3学期はいじめを中心とした内容と同時に,情報の授業で情報リテラシーを学ばせ,ネットいじめと並行で学ばせた。ターゲットスキル;ソーシャルスキルとは,考えと気持ちを伝えるⅠ・Ⅱ(コミュニケーションとは・聴く)・感情のコントロール・共感する。授業構成;原田・渡辺(2011),原田(2013)の指導案に基づき,プログラムを修正して作成した。
結果と考察
各尺度の各因子別における実践時期についてt検定を行った結果を表1に示す。主張性,自尊心は向上したが,共感性は変化が見られなかった。感情教育は注目を浴びているが,効果測定については検討の余地があると考えられる一方,教員や生徒の多くからは道徳の授業として行ったSSTに対して「1学期からの実施希望」等,肯定的な意見が挙げられた。今後は,学校環境に注目する観点から学校が所要するデータがSSTの導入によりどう変化するかも詳細に検討することが課題である。
本研究は,平成25年度科学研究費助成事業学術研究助成基金助成金基盤研究(C)「教職課程の学生のためのソーシャルスキル教育の開発(課題研究番号:20623961,研究代表者:原田恵理子)の助成を受けた。