日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PB019] 大学生の抑うつ傾向に対する介入効果の検討(1)

LAC法を用いて

中島奈保子1, 松本麻友子2 (1.愛知教育大学, 2.名古屋大学大学院)

キーワード:抑うつ, LAC法, レジリエンス

<問題と目的>
近年,軽度の抑うつ状態は大学生でも日常的に経験されることが多く,その予防的介入の重要性が指摘されている(及川・坂本,2007)。本研究では松原(2003)による生活分析的カウンセリング(LAC法)を大学生に実施し,抑うつやレジリエンスに対し介入効果がみられるかについて検討を行う。LAC法は行動療法の一種であるが,現在の生活を重視し,目標を数量化・視覚化することで実現可能性を高め,意欲を高めることを目的とするものである。また,近年は適用範囲も拡大され,集団での適用も研究されており(大島,2010),大学における心理学教育と並行して行う介入法として実施しやすいものであると考えられる。
<方法>
【対象者】介入群:4年制大学で心理学関係の講義を受講する学生を対象とした。講義は選択科目で,ガイダンス時に講義にそった内容でLAC法の実施を行うことを説明し同意を得た上で実施した。統制群:介入群と同じ大学で別の心理学関係の実験を受講する学生を対象とした。なお講義と実験を両方受講した学生については分析から除いた。
【手続き】LAC法は本来10段階の手続きをふむが,今回は講義中に集団で実施することをふまえ一部を省略,改変して行った。
(1)現在やらなければならないことややりたいことを付箋紙に書き出す(ラベルの作成)。
(2)ラベルを学業,就職など関係するものごとに分類し,カテゴリ名をつける。
(3)ラベルごとに必要性(N),可能性(P),その平均点(M)を主観的に100点満点で点数化する。
(4)点数の高いものから順にLAC用紙に配列し,LAC表を作成する。
(5)ラベルの中から最重点目標を1~2項目選ぶ。
(6)LAC図をもとに日々行動を評価し,達成できたものはマーカーでチェックする。
(7)1か月後に達成状況や問題点をチェックし,振り返る(独自に作成した振り返りシートへの記入)。できなかったラベルについては目標を細分化して新たなLAC表を作成する。
上記を繰り返し1か月おきに3回のLAC表作成を行った(本研究では1回目~2回目のLAC表作成時について検討した)。なお(6)以外は講義中に講師の指導のもと集団で行った。
【質問紙】LAC法実施前と LAC表作成終了後に質問紙調査を行った。質問紙は(1)フェイスシート,(2)CES-Dの日本語版(島・鹿野・北村・浅井,1985),(3)精神的回復力尺度(小塩・中谷・金子・長峰,2002)であった。1回目の調査(プレテスト)は2013年10月,2回目の調査(ポストテスト)は2013年11月に行われた。
<結果>
分析対象者:すべてのLAC表作成と調査に参加した介入群13名(男性12名,女性1名,平均年齢21.92歳,SD=2.29)と統制群8名(男性8名,平均年齢20.00歳,SD=0.50)であった。
介入の効果:プレテストにおける両群間に有意差がないことを確認し,CES-D得点と精神的回復力得点について分散分析を行った結果,抑うつについて群×時期の交互作用が有意であった(F(1,19)=9.69,p< .01)。そこで単純主効果の検定を行ったところ,統制群のみプレテストとポストテスト間に有意差がみられた(F(1,19)=6.63,p< .05)。このことからLAC法の実施により学生の抑うつ感の上昇が抑えられたと考えられる。精神的回復力についてはいずれの下位尺度も有意な差はみられなかった。プレテストからポストテストにかけてのCES-D得点の推移をFigure 1に示す。
<結果>
本研究の結果から,LAC法の実施が学生の悪化を抑える効果があることが示された。しかし本研究では対象者が少数であり,性別の偏りや,対象者に就職活動中の学生が含まれ,特に統制群においてプレテストから抑うつ得点が高い傾向がみられた。今後対象者の状況をふまえたより効果的な介入方法を検討する必要があるだろう。