The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PB029] 児童の絵画を表現・評価する言葉の検討

自由記述に基づいた語句の収集

萩生田伸子1, 八桁健2 (1.埼玉大学, 2.東京学芸大学大学院)

Keywords:SD法, 絵画の評定

目的
子どもの描いた絵に対する評価に関して,有原ほか(2014,印刷中)は教育学部の学生,および現職の教員が評価した場合にどのような相違が見られるかについて比較をおこなった。この評定にはSD法を用いているが,評定語を採用するに当たって,絵画の評定以外の文脈で使用されている形容詞対も含めて収集したため,子どもの描画を評定する語句としては不十分な内容となっている可能性も考えられる。そこで本稿では,まず子どもが描いた絵を参照しながら作品の印象や評価を自由に記述してもらうことによって,評定語としてよりふさわしい語句の収集を試みる。そして語句収集方法の相違の影響,SD法による評定との違いについて明らかにすることを目的とする。
方法
調査内容および手続き:小学1~6年生が描いた3つのテーマ(友だちや自分の顔,大きな木,運動会の思い出)の絵について美術を専門とする大学教員の監修の元,各5枚ずつ計15枚を選び出した。教育学部に所属する学生90名に対して,選出された絵画について一人当たり3つのテーマについて少なくとも1枚ずつ,計4枚の絵をランダムに組み合わせてA5サイズで提示した。そして各絵画に対して「絵の印象を表現する語句の列挙」「個人的な感想を文章で表現」「学校の先生としての講評を文章で表現」するように依頼した。調査時期は2013年11~12月である。これとは別に一部の絵についてSD法による評定がおこなわれている。
自由記述データの整理:誤字,脱字,前後の文脈から確実に誤記と判断される文言の修正(ex.書き治した→描き直した,みたいもの→みたいなもの),表記の揺れの統一(ex.うんどう会→運動会),意味上は一単語と判断される語(ex.ヘアピン,ワンシーン)を一語扱いする処理の上,回答者の属性,絵の種類,品詞別に各単語の出現頻度や共起関係等について整理をおこなった。
結果と考察
本稿では「絵の印象を表現する語句の列挙」の結果を中心に取り上げる。 有原ら(2014)が使用したSD法の20対40語のうち,児童が描いた絵を見ながら印象の自由記述をした際にも使用された語は「明るい,暗い,鮮やか,地味,冷たい,柔らかい,力強い,弱々しい,分かりやすい,動的,単調,落ち着き,好き,良い,悪い,面白い」等である。ただし自由記述における「好き」は,「好きな果物」,「良い-悪い」は「元気が良い,バランスが悪い」等のように用いられ,SD法上での総合的評価項目とは異なる用法であった。また,SD法の尺度に含まれていないが自由記述では使用された語句としては「元気な,大きい,楽しい,寂しい,細かい,怖い,カラフル-モノクロ,丁寧-雑,可愛い,シンプル,ダイナミック,迫力,勢い,一生懸命,上手-下手」等が挙げられる。評定の目的にも依存するが,色数の多寡,勢いの有無,粗密などの絵画の特徴を端的に表した言葉は今後採用を検討する価値がありそうである。
さらに自由記述の内容とSD法による評定との対応関係の確認をおこなった。図1に複数の回答者によって「雑」とされたK01,「上手・丁寧・かわいい」とされたK03,「上手・ダイナミック」とされたK04のプロフィールを示す。自由記述での「ダイナミック」とSD法での「力強い」等で対応関係が見られる一方で同義語の「動的」とは関係が不明瞭である。また,総合評価と考えられる「上手」とSD法での「良い・面白い・好き」の評定も必ずしも対応関係にない。この点からも評定項目の適否についてさらに検討が必要と考えられる。


文献
児童の描画に対する評価の観点についての研究Ⅰ ―教員養成系大学美術専修学生による評価の分析 ― 埼玉大学紀要教育学部63-1,p.31-46.2014年 (有原穂波・萩生田伸子・小澤基弘)
児童の描画に対する評価の観点についての研究Ⅱ―教員による評価の分析― 埼玉大学紀要教育学部,印刷中(有原穂波・萩生田伸子・小澤基弘)