[PB032] モチベーション志向情報教育システム(SIEM)の継続的実践効果VIII
プログラミング教育のモチベーションの向上を目指すために
Keywords:モチベーション, プログラミング入門教育, SIEM
目 的
プログラミング入門教育を対象にモチベーション志向情報教育システム(SIEM)を開発し,その実践効果を継続的に分析している。プログラミングの入門を学習する「コンピュータプログラミングA」(以下,「コンプロA」と略)の授業を対象に,過去3年間についてCS(Customer Satisfaction)分析を行った。本論文では,「コンプロA」のCS分析結果を述べる。
方 法
「コンプロA」は,手続き型のプログラミングの基礎を学ぶ。分析対象は,2011年から2013年の受講者を対象に,5クラス分割で授業を行っているC先生のクラスである。目的変数をモチベーション,説明変数をSIEMアセスメント項目とし,目的変数と説明変数との単相関係数を関連度,説明変数の評価値を満足度とする。各々を偏差値化し,関連度偏差値(RLD: Related Level Deviation score),満足度偏差値(SLD: Satisfaction Level Deviation score)と呼ぶ。改善度指数(ILI: Improvement Level Index)は,CSグラフからRLDとSLD が50の点に原点を移動し,原点から各SIEMアセスメント項目までの距離lと,直線 とのなす角度θを使い(1)式で算出する。
第1象限は関連度が高く, 満足度も高い領域であり,「重点維持分野」と呼ばれている。これまでモチベーションを高めるために行ってきた努力の蓄積である。第2象限は満足度が高く, そのまま維持することが求められる領域であり,「維持分野」と呼ばれている。第3象限は関連度が低いものの満足度も高くなく,「改善分野」と呼ばれている。第4象限は関連度が高いが,満足度が低い領域であり,「重点改善分野」と呼ばれている(1)。したがって,第4象限に存在する項目が優先して改善すべき項目となる。ILIは,5以上が「要改善項目」,10以上が「即改善項目」とされ,授業戦略を検討する上での重要な目安となる。
結 果
CS分析結果の特徴を探るために,SIEMアセスメント項目のILIの値と,同項目がCSグラフの何象限に現れたかに着目し,3年間の推移を調査した。この結果を表 1に示す。特徴的なことは,「向上努力度」が恒常的に第1象限に存在していることであった。さらにSIEMアセスメント項目と象限の特徴を探るために, 各項目が第1象限から第4象限に出現した頻度を図 1に示した。第1象限(重点維持分野)に着目すると,前述した通り「向上努力度」が恒常的に存在しており,6回の頻度となった。これに続き「意義の明確度」と「将来への有用度」が,5回の頻度となった。第2象限(維持分野)に着目すると「所属集団の好意的反応度」が5回と最も多く,これに続き「コンテンツの合致度」と「参加意欲度」が4回の頻度となった。第3象限(改善分野) に着目すると「成功機会度」と「自己目標の明確度」が5回の頻度となった。第4象限(重点改善分野) に着目すると「愉楽度」が5回と最も多く,これに続き「理解度」が4回の頻度となった。
考 察
紙面の都合で第1象限と第4象に着目し,考察を行った。第1象限(重点維持分野)に「向上努力度」が恒常的に存在し,次いで「意義の明確度」と「将来への有用度」の頻度が高かったことは,受講者が努力しようという意識と,この科目の有用性を認識していることが伺える。この結果は,SIEMを継続的に実践することによる良い効果が現れていると考えられる。これとは対象的に,第4象限(重点改善分野) は「愉楽度」の頻度が最も高く,これに「理解度」が続いた。SIEMを実践する中で,プログラミングの楽しさを伝える工夫と,理解の向上を図る工夫が必要であることを示しており,今後の課題が明らかになった。今後もモチベーションの向上を目指しながら,さらに実践を続け,改善を図りたい。本研究の一部は,科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号24501214),東京電機大学総合研究所研究(Q12J-02)として調査した。
参考文献
(1)南 学,学生による授業評価へのCS分析の適用,三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要,pp.29-34,2007
プログラミング入門教育を対象にモチベーション志向情報教育システム(SIEM)を開発し,その実践効果を継続的に分析している。プログラミングの入門を学習する「コンピュータプログラミングA」(以下,「コンプロA」と略)の授業を対象に,過去3年間についてCS(Customer Satisfaction)分析を行った。本論文では,「コンプロA」のCS分析結果を述べる。
方 法
「コンプロA」は,手続き型のプログラミングの基礎を学ぶ。分析対象は,2011年から2013年の受講者を対象に,5クラス分割で授業を行っているC先生のクラスである。目的変数をモチベーション,説明変数をSIEMアセスメント項目とし,目的変数と説明変数との単相関係数を関連度,説明変数の評価値を満足度とする。各々を偏差値化し,関連度偏差値(RLD: Related Level Deviation score),満足度偏差値(SLD: Satisfaction Level Deviation score)と呼ぶ。改善度指数(ILI: Improvement Level Index)は,CSグラフからRLDとSLD が50の点に原点を移動し,原点から各SIEMアセスメント項目までの距離lと,直線 とのなす角度θを使い(1)式で算出する。
第1象限は関連度が高く, 満足度も高い領域であり,「重点維持分野」と呼ばれている。これまでモチベーションを高めるために行ってきた努力の蓄積である。第2象限は満足度が高く, そのまま維持することが求められる領域であり,「維持分野」と呼ばれている。第3象限は関連度が低いものの満足度も高くなく,「改善分野」と呼ばれている。第4象限は関連度が高いが,満足度が低い領域であり,「重点改善分野」と呼ばれている(1)。したがって,第4象限に存在する項目が優先して改善すべき項目となる。ILIは,5以上が「要改善項目」,10以上が「即改善項目」とされ,授業戦略を検討する上での重要な目安となる。
結 果
CS分析結果の特徴を探るために,SIEMアセスメント項目のILIの値と,同項目がCSグラフの何象限に現れたかに着目し,3年間の推移を調査した。この結果を表 1に示す。特徴的なことは,「向上努力度」が恒常的に第1象限に存在していることであった。さらにSIEMアセスメント項目と象限の特徴を探るために, 各項目が第1象限から第4象限に出現した頻度を図 1に示した。第1象限(重点維持分野)に着目すると,前述した通り「向上努力度」が恒常的に存在しており,6回の頻度となった。これに続き「意義の明確度」と「将来への有用度」が,5回の頻度となった。第2象限(維持分野)に着目すると「所属集団の好意的反応度」が5回と最も多く,これに続き「コンテンツの合致度」と「参加意欲度」が4回の頻度となった。第3象限(改善分野) に着目すると「成功機会度」と「自己目標の明確度」が5回の頻度となった。第4象限(重点改善分野) に着目すると「愉楽度」が5回と最も多く,これに続き「理解度」が4回の頻度となった。
考 察
紙面の都合で第1象限と第4象に着目し,考察を行った。第1象限(重点維持分野)に「向上努力度」が恒常的に存在し,次いで「意義の明確度」と「将来への有用度」の頻度が高かったことは,受講者が努力しようという意識と,この科目の有用性を認識していることが伺える。この結果は,SIEMを継続的に実践することによる良い効果が現れていると考えられる。これとは対象的に,第4象限(重点改善分野) は「愉楽度」の頻度が最も高く,これに「理解度」が続いた。SIEMを実践する中で,プログラミングの楽しさを伝える工夫と,理解の向上を図る工夫が必要であることを示しており,今後の課題が明らかになった。今後もモチベーションの向上を目指しながら,さらに実践を続け,改善を図りたい。本研究の一部は,科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号24501214),東京電機大学総合研究所研究(Q12J-02)として調査した。
参考文献
(1)南 学,学生による授業評価へのCS分析の適用,三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要,pp.29-34,2007