The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PB058] 学童保育と学校教育

放課後の生活とその理解

金谷有子 (埼玉学園大学)

Keywords:学童保育, 放課後の生活, 発達

問題・目的
筆者は学童保育の役割や意義を探究してきた。指導員への調査結果から,ストレスを抱えている子どもの問題や発達障害のある子どもの問題を調べた(金谷・赤津、2013;金谷、2014)。不登校の子どもの背景に発達のアンバランスがある場合が多いという指摘もある(河合、2013)。この育ちのつまずきを修復し成長を促進する仕組みとして,学童の存在の意義を主張する研究も出てきている。本報告では学童保育での子どもたちの生活を知ることが学校教育にとってどのような意義をもたらすかについて検討していく。
方法
首都圏中心に全国300の学童保育に放課後の生活に関するアンケート調査を郵送(2013年11月~12月)した。今回の報告では「指導員が子どものことで気になること」に焦点化し分析した。
結果
1. 子どものことで気になること
・行動の問題がある(65.8%)[例]多動、乱暴、集団行動ができない、待てない、逃亡する
・発達の問題がある(60.8%)[例] 発達障害、発達の遅れ、学習障害、学習面での送れ
・仲間関係の問題がある(60.8%)[例]仲間はずれ、意地悪、いさかい、からかい、ばかにする
・言葉の問題がある(51.9%)[例] 汚い言葉遣い、寡黙、コミュニケーション力が弱い、悪口
・家庭での問題がある(50.6%)[例]一人親家庭、
虐待、ネグレクト、親への不満
・学校での問題がある(39.2%)
2.学校での問題と対応の具体例
学校での問題の具体例は「先生に怒られた,友だちとけんかしたことを引きずって帰ってくる,授業妨害、暴言、いじめられる,立ち歩き,先生への反抗、授業を聞いていない,宿題がわからない,担任との相性の問題,学力の問題,子どもや保護者と担任との間に理解がない、勉強がわからないのに宿題が毎日出る、障害児への担任の対応の仕方,学校が荒れている、学校へ行けないのに学童には来る」等であった。これらの表現から子どもたちは学校での人間関係や勉強に大きなストレスを感じていることが示唆される。
学校での問題への対応例は「情報交換する、ケース会議に出席する、宿題等のサポートをする、保護者に苦手なところを伝え理解してもらう、学校での行動や対応を聞き,親が迎えに来た時に話をする、学校と協力して問題にあたる,積極的に学校に学童での様子や保護者の様子を伝えていく、連絡帳やノートを見る、学校で嫌なことがあった場合、保護者に伝え保護者から学校に話してもらう、担任の先生と連絡をとりあう、指導員としては授業参観に行ったり学童の様子を伝える手紙を担任に渡したりする」などであった。
考察
気になる子どもの問題は深刻なものから一過性のものまで多岐にわたっている。子どもたちの表す行動や発言は、様々な原因が考えられる。子どもの問題行動の原因が家庭環境や学校内でのものの場合にはお互いの連携が必要である。家庭や学校での様子を知ることで子ども理解が深まりよりよい対応も可能となろう。真田(2011)は学童保育が学校に新たな視点での子ども・保護者理解をもたらす可能性をもっていると指摘している。さらに学校教育にとって学童保育は未知の領域だが、社会的資源としてもっと踏み込むと発見が多いはずであると主張している。このような視点の重要性は本研究の結果からも示唆されている。
付記:本報告は一般財団法人こども未来財団平成25年度児童関連サービス調査研究事業(障害児の放課後の生活と実際)として行われた一部である。