[PB086] 現代青年の自立性に関する研究(6)
交流分析における透過性調整力の高・低と自立・自律性
Keywords:現代青年, 自立・自律性, 交流分析
目 的
菱田ら(2011)を考慮しつつ,現代青年の自立・自律性と想定したTEG類型と透過性調整力(Permeability Control power:以下PCと略記) の高低別類型が,筆者らの自立・自律性因子の特性とどのように関わるのか,どの自立・自律性特性を有する自立・自律類型であるのかを明らかにする。更に,PCが高ければ,自立・自律もしくは非自立・非自律類型に関わらず対人適応・社会適応するという想定にもとづき,この傾向が認められるか否かを検討する。具体的には,各自我状態にもとづく青年の自立傾向を示すと我々が想定した5類型,更にPC 値を含む15類型と,自立・自律性尺度8因子との関係を明らかにする。
方 法
対象 大学生,短期大学生,専門学校生473名
手続き 調査実施は2013年7月。菱田ら(2011)の36項目に,「適切な依存」と思われる10項目,「不適切な依存(甘え)」と思われる項目8項目を追加,計54項目(4件法)からなる項目を自立・自律性尺度として使用。更に透過性調整力とエゴグラムをみるために新版PCエゴグラムⅡ型の70質問(3件法)を使用。分析対象は、明らかに不適切な回答をした者を除いた412名(平均年齢18.8歳),エゴグラムについては 395名。
結果と考察
自立・自律性尺度の検討
自立・自律性尺度項目54項目について8因子解が得られ,依存に関する2因子以外,菱田ら(2011)と類似した因子構造を示した。
PCを含むTEG類型と自立・自律性の関係
PC値が高ければ非自立・非自律型であっても自立・自律性の様相を示すことを予想したが,「影響受けやすさ」,「対人協調」,「やる気なさ」等をはじめとしていくつかの自立・自律性因子において,類型間の違いがみられたものの,透過性調整力との明確な関連を示すことはできなかった。但し,自立・自律性尺度の因子得点平均値が、仮に平均値から1/2標準偏差以上の隔たりを特徴あるものと考えると,統計的有意性は認められないものの,PC値の高い者は自立・自律性傾向が高いことが窺われる(Table 1)。「CP優位型」に関しては仮説に反し,PC値が高い者も低い者も自立・自律傾向を示した。この他,NPを高めることで対人協調の特性を獲得できること,反抗を含んだ従順性ACの高い自我状態は非自立・非自律の典型であることも確認された。今後の課題として, CPのエゴグラムの解釈(自分の判断を正しいものとし,批判,非難を行い,目標が高く理想を追求)からも, CPの高さが青年の自立・自律と肯定的に関わっていることも窺われ,これまで青年の自立・自律に関わる自我状態として注目してきたFCと共にCPの関与を調べたい。エゴグラムのパターン数が多く,少数のパターンもあり,有意な差の検討に向けて,今後より多くの標本を対象として検証を重ねる必要もある。加えて,自立・自律性は,甘えの観点も含め,適切な他者依存の特性を含むと考えているが,明確な立証に至っていない。立証が困難である要因も探りつつ,引き続き検討,検証を重ねたい。
菱田ら(2011)を考慮しつつ,現代青年の自立・自律性と想定したTEG類型と透過性調整力(Permeability Control power:以下PCと略記) の高低別類型が,筆者らの自立・自律性因子の特性とどのように関わるのか,どの自立・自律性特性を有する自立・自律類型であるのかを明らかにする。更に,PCが高ければ,自立・自律もしくは非自立・非自律類型に関わらず対人適応・社会適応するという想定にもとづき,この傾向が認められるか否かを検討する。具体的には,各自我状態にもとづく青年の自立傾向を示すと我々が想定した5類型,更にPC 値を含む15類型と,自立・自律性尺度8因子との関係を明らかにする。
方 法
対象 大学生,短期大学生,専門学校生473名
手続き 調査実施は2013年7月。菱田ら(2011)の36項目に,「適切な依存」と思われる10項目,「不適切な依存(甘え)」と思われる項目8項目を追加,計54項目(4件法)からなる項目を自立・自律性尺度として使用。更に透過性調整力とエゴグラムをみるために新版PCエゴグラムⅡ型の70質問(3件法)を使用。分析対象は、明らかに不適切な回答をした者を除いた412名(平均年齢18.8歳),エゴグラムについては 395名。
結果と考察
自立・自律性尺度の検討
自立・自律性尺度項目54項目について8因子解が得られ,依存に関する2因子以外,菱田ら(2011)と類似した因子構造を示した。
PCを含むTEG類型と自立・自律性の関係
PC値が高ければ非自立・非自律型であっても自立・自律性の様相を示すことを予想したが,「影響受けやすさ」,「対人協調」,「やる気なさ」等をはじめとしていくつかの自立・自律性因子において,類型間の違いがみられたものの,透過性調整力との明確な関連を示すことはできなかった。但し,自立・自律性尺度の因子得点平均値が、仮に平均値から1/2標準偏差以上の隔たりを特徴あるものと考えると,統計的有意性は認められないものの,PC値の高い者は自立・自律性傾向が高いことが窺われる(Table 1)。「CP優位型」に関しては仮説に反し,PC値が高い者も低い者も自立・自律傾向を示した。この他,NPを高めることで対人協調の特性を獲得できること,反抗を含んだ従順性ACの高い自我状態は非自立・非自律の典型であることも確認された。今後の課題として, CPのエゴグラムの解釈(自分の判断を正しいものとし,批判,非難を行い,目標が高く理想を追求)からも, CPの高さが青年の自立・自律と肯定的に関わっていることも窺われ,これまで青年の自立・自律に関わる自我状態として注目してきたFCと共にCPの関与を調べたい。エゴグラムのパターン数が多く,少数のパターンもあり,有意な差の検討に向けて,今後より多くの標本を対象として検証を重ねる必要もある。加えて,自立・自律性は,甘えの観点も含め,適切な他者依存の特性を含むと考えているが,明確な立証に至っていない。立証が困難である要因も探りつつ,引き続き検討,検証を重ねたい。