The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(501)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PB093] 加害児の謝罪意志による謝罪介入の効果の違い

芝崎美和1, 山崎晃2 (1.新見公立短期大学, 2.明治学院大学)

Keywords:謝罪, 幼児, 罪悪感

目的
加害児に謝罪の意志があるか否かによって,謝罪を促す介入の効果は異なるであろうか。本研究では,謝罪を促す介入の効果について加害児の謝罪の意志と被害児の表情の視点から検討する。
方法
調査対象児 4歳児39名(男児19名,女児20名),5歳児40名(男児18名,女児22名),6歳児42名(男児24名,女児18名)であった。
手続き 被害児の表情に関して調査対象児を2群(ネガティブ表情群,ポジティブ表情群)に振り分けた。課題文を提示した後,加害児の行動を予測するよう求め(質問1),加害児の予測に関わらず,加害児に謝罪を求めるために「加害児は謝罪した」という一文を挿入した上で罪悪感(質問2),補償行動(質問3),違反の反復抑制(質問4)を3段階で評定させ,得点化した。
結果と考察
質問1に対する回答に基づき,調査対象児を2群(謝罪群:謝罪意志のある群,自己中心的方略群:謝罪意志のない群)に分けた。
1.謝罪群における介入の効果
1)被害児の表情による謝罪の種類の違い
質問2の回答から,加害児の謝罪が誠実な謝罪か道具的謝罪かを判断した。2つの謝罪について年齢×表情の逆正弦変換を用いた分散分析を行ったが,主効果と交互作用はいずれも有意ではなかった。
2)介入後の加害児の罪悪感,補償,違反の反復抑制意識
質問2~4の各得点について年齢×表情の2要因分散分析を行った。補償行動得点については交互作用に有意傾向が見られ(F(1, 55) = 2.97, .05 < p < .10),多重比較の結果,ネガティブ表情群では4歳児よりも5歳児,ポジティブ表情群では5歳児よりも6歳児の得点が高かった。違反の反復抑制得点に関しては年齢の主効果が有意であり(F(2, 55) = 8.30, p < .01),年齢×表情の交互作用に有意傾向が見られた(F(2, 55) = 2.86, .05 < p < .10)。多重比較の結果,4歳児ではネガティブ表情群よりもポジティブ表情群,ポジティブ表情群では4歳児よりも5・6歳児で得点が高かった。
2.自己中心的方略群における介入の効果
1)被害児の表情による謝罪の種類の違い
2つの謝罪について年齢×表情の逆正弦変換を用いた分散分析を行ったところ,年齢×表情の交互作用が有意であった(χ2(2) = 10.66, p < .01)。下位検定したところ,表情群における年齢の単純主効果と年齢における表情の単純主効果が有意であり,ライアン法による多重比較の結果,ネガティブ表情群では4・5歳児に比べ6歳児で誠実な謝罪が多く,6歳児よりも4・5歳児で道具的謝罪が多かった。また,5歳児では誠実な謝罪はネガティブ表情群よりもポジティブ表情群で,道具的謝罪はポジティブ表情群よりもネガティブ表情群で多かった。他方,6歳児では誠実な謝罪はポジティブ表情群よりもネガティブ表情群で,道具的謝罪はネガティブ表情群よりもポジティブ表情群で多かった。
2)介入後の加害児の罪悪感,補償,違反の反復抑制意識
質問2~4の各得点について年齢×表情の2要因分散分析を行った結果,いずれの得点についても主効果,交互作用は有意でなかった。
以上のことから,謝罪意志のある加害者に謝罪を求めた場合,被害児の表情によって補償意識や違反の反復抑制の程度が異なることが示された。一方,謝罪意志のない加害児に謝罪を求めた場合は,罪悪感や補償意識,違反の反復抑制に被害児の表情は影響しないが,被害児が笑顔であれば6歳児であっても道具的謝罪が引き出されることが示された。