The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB

(501)

Fri. Nov 7, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PB096] メンタルローテーションと自己制御との関連性(2)

エフォートフル・コントロールについて

野田満1, 落合洋子2 (1.江戸川大学, 2.えどがわ森の保育園)

Keywords:メンタルローテ―ション, 自己制御, 注意

 目的
 メンタルローテーション課題を遂行する場合、刺激対象の回転と同じ方向に手などを動かすと成績が良くなるという刺激対象‐行為の適合性(compatibility)がある(Wexler,et al.,1998)。Frick,et al.(2009)によると5歳や8歳児でも回転方向の一致不一致で成績の差異が報告されている。こうした研究からEstes(1988)の指摘のように自らの心的活動に意識を向けることが大切であるだけでなく、身体・運動的な制御がイメージ操作上で重要な役割を担っていることがわかる。自己制御の研究では近年、注意と自己制御が神経ネットワーク形成の上で重要視され(森口,2008;中川,2011)、ワーキングメモリーに近い概念である実行機能の効率性を表すものとしてエフォートフルコントロール(EC)を位置付けようとする研究などが現れてきた(山形ら,2005;Rueda et al.,2004)。
 前報では、メンタルローテーションでの誤反応と自己制御との関連性は見いだされたが、反応時間との関連は判明しなかった。その理由として探索的に異同判断を求めるという特殊な設定で課題を行ったことがあげられる。そこで本研究では探索的な異同判断ではなく、回転させて解くという教示のもとでメンタルローテーションを行なうことにした。社会的な場面での自己制御は注意を要請する自らの身体制御と関連すると考えられ、回転と言う教示に従い適切に身体・運動面を制御できる子どもであれば、メンタルローテーションのレベルが高くなるであろうと考えられる。よってメンタルローテーションの指標が自己制御尺度(大内ら,2008)に反映するものと予想された。
    方法
 参加者:3歳4か月~6歳7か月の千葉県にある保育園幼児62名(3歳児20名、4歳児24名、5歳児18名)、保育士4名。
 メンタルローテーション課題:21.5インチディスプレー左側に標準刺激、右に比較刺激を同時呈示。比較刺激は0,45,90,135,180°の傾きで正像か鏡像のどちらかをランダムに呈示した。ディスプレーは平面に配置した。他の実験セッションとの関係で幼児用ヘルメットと右手首にリストを装着している。練習の後に本実験を行った。flag刺激:矩形内の隅に小円がひとつ描かれた幾何刺激と、gee刺激:矩形内の図柄に女児が木馬に乗った刺激の2条件を実施した。各条件とも2試行実施し本実験は計40試行となった。反応時間(ms)と誤反応を記録した。角度を独立変数、反応時間を従属変数として得られる決定係数(r2)と誤反応を求めた。決定係数はあてはまりの良さを表し、メンタルローテーションレベルの指標とした。
 自己制御質問紙:自己主張、自己抑制、注意の移行、注意の焦点化から成る(大内ら,2008)。評定者のバイアスを低くするために、その年齢児において最も一般的な幼児を基準に定め、その子どもからの差異を意識して評定するようにした。
    結果
 1)相関分析:4種類の自己制御とflag・gee刺激の誤反応と決定係数間の無相関検定を行った。自己制御間では全てに有意な相関が認められた。flagとgee刺激における誤反応の相関(r=.78)に有意差が認められた。メンタルローテーションと自己制御間においては、flag刺激の決定係数と自己抑制(r=.30,p<.05)、並びに注意の移行(r=.27,p<.05)の間での相関に有意差が認められた。gee刺激では有意差は認められなかった。
 2)成績の比較①:決定係数によりメンタルローテータとノンローテータに区分し(Estes,1988)、自己制御尺度の各得点の比較を試みたが有意差は認められなかった。
成績の比較②:単純に各自己制御の成績を2分し決定係数の比較を試みたところ、高自己抑制群の方が低抑制群よりflag決定係数が高くなる傾向が示された(t=1.96,def=56,p=.054)。また高注意移行群の方が低注意移行群よりflag決定係数が有意に高い値を示した(t=2.02,def=56,p<.05)。
    考察
 自己抑制と注意の移行というEC下位尺度がメンタルローテーションの遂行に関与することが示された。ここからイメージの操作を適切に行うために不適切な行為の抑制や注意の切り替えといった前頭葉と関わる働きが関与することが推測される。ひきうつし(野田,2001)という身体的なかかわりからも、身体の制御や注意の切り替えがイメージの変換に重要な働きを担うものと思われる。
 本研究は科研費(課題番号25560119)の助成を受けたものであることを付記する。