[PC003] 学習環境にデザインされた属性(1)
性に関する学習における自己関与性
Keywords:性教育, 自己関与性, 高校生
【本研究の目的】
有元・尾出・岡本(2011)は,学習環境のデザインを「モノ・ヒト・コトの布置と各々へのアクセスの工夫による学び方,考え方のデザイン」と定義し,学習者の深い動機を伴った参加とその為の適切な学習環境のデザインが教育現場に必要であると述べている。本研究ではこうした観点から,性について単に知識の教授を行うのではなく,ワークショップ的活動や,自分たちの性に関する意識調査(同性愛・避妊に関する内容を含む)の結果を用いた参加型の授業によって,自己の性に対する主体的な再考を促す授業デザインを実施した。本発表では特に,学習内容が自分ごととして捉えられるかどうか,つまり自己関与性(self-relevance)の高さについて検討し,そうした認識の理由を明らかにすることを目的とした。
【方法】
本研究は,首都圏の公立高校2年生212名(男子110名,女子100名,「どちらでもない」回答2名)を対象に行った。90分の授業の構成は,(1)性とは何か?(15分),(2)自分は誰か?(性同一性:40分),(3)誰を好きか?(性的指向:15分),(4)性交渉について(20分)であった。授業後,「本授業がどの程度自分に関係があると思うか」について6件法(とても関係がある・まあまあ関係がある・あまり関係がない・まったく関係がない・よくわからない・その他)で質問紙調査を行い,その回答の理由も記述させた。得られた回答をKJ法によって分類した。
【結果と考察】
本授業の内容が,自分にとってどの程度関係があるかを質問した結果,「とても関係がある」と回答したのは男子33名,女子42名,「まあまあ関係がある」と回答したのは男子60名,女子53名,「あまり関係がない」と回答したのは男子9名,女子3名,「まったく関係がない」と回答したのは男子6名,女子1名,「よくわからない」と回答したのは男子6名,女子1名であった。「その他」の回答者はおらず,「どちらでもない」回答をした2名は,無記入だった(表1参照)。
表1の通り,男子85%,女子95%は「とても関係がある」「まあまあ関係がある」と回答しており,自己関与性を高く認識する授業デザインであったことが示された。また,前述のように回答した理由の自由記述は,「人間として共通の課題」「生涯の課題」「現在の課題」「将来の課題」「性別自認」「学習に適切な時期」「大切な事」「知識の獲得」「他者の考えを知る機会」「よくわからない」「なんとなく」「理由なし」「その他」の13のカテゴリに分類された。それぞれの回答例は以下の通りである(表2参照)。
また,自己関与の理由とその程度の関係を集計すると以下の通りであった(表3参照)。
表3に示した通り,「とても関係がある」「まあまあ関係がある」と回答されたカテゴリは,回答数順に「将来の課題」「人間共通の課題」「性別自認」「知識の獲得」であった。つまり現在の状況よりも将来の自己を想定した課題の重要性を認識していると言える。一方「あまり関係がない」「まったく関係がない」と回答したものは,「該当していないから」「現在恋愛等をしていないため」といったように,自らの性を自己の目下の状況との関連で限定的に捉えている事が明らかになった。以上のことから自己の性について,現在の状況に限定的ではなく,将来も見据えて広く捉えられるような授業デザインの検討が必要であるといえる。
有元・尾出・岡本(2011)は,学習環境のデザインを「モノ・ヒト・コトの布置と各々へのアクセスの工夫による学び方,考え方のデザイン」と定義し,学習者の深い動機を伴った参加とその為の適切な学習環境のデザインが教育現場に必要であると述べている。本研究ではこうした観点から,性について単に知識の教授を行うのではなく,ワークショップ的活動や,自分たちの性に関する意識調査(同性愛・避妊に関する内容を含む)の結果を用いた参加型の授業によって,自己の性に対する主体的な再考を促す授業デザインを実施した。本発表では特に,学習内容が自分ごととして捉えられるかどうか,つまり自己関与性(self-relevance)の高さについて検討し,そうした認識の理由を明らかにすることを目的とした。
【方法】
本研究は,首都圏の公立高校2年生212名(男子110名,女子100名,「どちらでもない」回答2名)を対象に行った。90分の授業の構成は,(1)性とは何か?(15分),(2)自分は誰か?(性同一性:40分),(3)誰を好きか?(性的指向:15分),(4)性交渉について(20分)であった。授業後,「本授業がどの程度自分に関係があると思うか」について6件法(とても関係がある・まあまあ関係がある・あまり関係がない・まったく関係がない・よくわからない・その他)で質問紙調査を行い,その回答の理由も記述させた。得られた回答をKJ法によって分類した。
【結果と考察】
本授業の内容が,自分にとってどの程度関係があるかを質問した結果,「とても関係がある」と回答したのは男子33名,女子42名,「まあまあ関係がある」と回答したのは男子60名,女子53名,「あまり関係がない」と回答したのは男子9名,女子3名,「まったく関係がない」と回答したのは男子6名,女子1名,「よくわからない」と回答したのは男子6名,女子1名であった。「その他」の回答者はおらず,「どちらでもない」回答をした2名は,無記入だった(表1参照)。
表1の通り,男子85%,女子95%は「とても関係がある」「まあまあ関係がある」と回答しており,自己関与性を高く認識する授業デザインであったことが示された。また,前述のように回答した理由の自由記述は,「人間として共通の課題」「生涯の課題」「現在の課題」「将来の課題」「性別自認」「学習に適切な時期」「大切な事」「知識の獲得」「他者の考えを知る機会」「よくわからない」「なんとなく」「理由なし」「その他」の13のカテゴリに分類された。それぞれの回答例は以下の通りである(表2参照)。
また,自己関与の理由とその程度の関係を集計すると以下の通りであった(表3参照)。
表3に示した通り,「とても関係がある」「まあまあ関係がある」と回答されたカテゴリは,回答数順に「将来の課題」「人間共通の課題」「性別自認」「知識の獲得」であった。つまり現在の状況よりも将来の自己を想定した課題の重要性を認識していると言える。一方「あまり関係がない」「まったく関係がない」と回答したものは,「該当していないから」「現在恋愛等をしていないため」といったように,自らの性を自己の目下の状況との関連で限定的に捉えている事が明らかになった。以上のことから自己の性について,現在の状況に限定的ではなく,将来も見据えて広く捉えられるような授業デザインの検討が必要であるといえる。