[PC005] 学習環境にデザインされた属性(3)
公立中学校における特別な支援が必要な生徒への学習支援:横浜国立大学教育実践演習の取り組みから
Keywords:学習環境デザイン, アシスタントティーチャー, 特別支援
1.問題と目的
近年,特別支援学校や特別支援学級に在籍している児童生徒が増加する傾向にあり,通級による指導を受けている児童生徒も平成5年度の特別支援教育の制度開始以降増加してきている(文部科学省,2012)。文部科学省が平成24年に実施した調査では,学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒数は,全体の6.5%程度の割合で通常の学級に在籍している可能性が示された。各教育現場では,大学生の養成や研修と合わせて,教室での児童生徒や教員のサポートとして,アシスタントティーチャー(以下,AT)が積極的に活用されるようになってきている(佐々木・有元, 2013)。
本研究では,横浜国立大学の教育実践演習の取り組みとして,公立の中学校に大学生がATとして参与する実践を報告する。この実践から,(1)特別な支援が必要な生徒の学習支援のあり方,及び(2)大学と学校現場の連携のあり方について検討していくことを本研究の目的とした。本研究で取り上げる「教職実践演習」とは,教員養成系学部の学生が在学中に身に付けた資質能力が,教員として最小限必要な資質能力として有機的に統合され,形成されたかについて,課程認定大学が最終的に確認するものである(中央教育審議会,2006)。
2.方法
横浜国立大学教育人間科学部の学生18名及び大学教授1名・大学院生1名による,教職実践演習の取り組みとして,公立中学校(以下A中学校)において,特別な支援が必要な生徒への教室でのATまたは取り出し指導を行った。
実習は,2013年9月2日~2013年10月30日の期間で2名1班で1週2日(火曜・水曜)ずつ支援を行った。実習後,筆者が学部生とともに振り返りを行い,インタビューに協力してもらった。また,学部生のインタビューをもとに,大学教授・大学院生・横浜国立大学附属特別支援学校養護教諭との間で,実習の様子や支援の方針についてメールや対面で情報共有を行った。インタビュー記録及びメール,学校への配布資料も合わせて考察のためのデータとした。
3.結果と考察
A中学校では「特別支援」の取り組みとして,普通級での学習が困難な生徒に対して別室登校という措置をとり,ワークや問題集などの課題を与えていた。教員の人手を十分に割くことのできない環境であり,特別支援級の生徒は,その課題に単独で取組むことが多かった。ATとして参与した学生のインタビューからは共通して特別支援級の生徒たちにとって,コミュニケーションの機会の獲得や,学習スタイルの改良が必要であるという意見が得られた(表1参照)。
例えば,車椅子を利用する人は,階段の利用は困難だが,スロープがある事でこの「ハンディキャップ」は解消される。つまり個人の能力や障害の有無といった属性は,環境のデザインに相対的であり,社会的に構成され顕在化される。特別支援級に所属する生徒たちは,他者との共同学習やコミュニケーションの機会が十分であったとは言えず,このことは学習環境によって立ち現れ、ATの学生達の目に可視になっていたと考えられる。
今回の実践では,ATの学生一人一人が,特別支援級の生徒の課題を発見し,学習方法を発案し,実践した。それぞれの取り組みは,ノートによって次の学生に引き継がれ,またA中学校の管理職,生徒指導担当者との情報共有も行われた。こうした取り組みの中で,学生だけでなく,中学校,大学教授など,関係者それぞれの中での同時多発的な学びが得られた。このように養成,研修,研究,実践が一体となった連携(有元, 2013)が今後重要になると考えられる。
近年,特別支援学校や特別支援学級に在籍している児童生徒が増加する傾向にあり,通級による指導を受けている児童生徒も平成5年度の特別支援教育の制度開始以降増加してきている(文部科学省,2012)。文部科学省が平成24年に実施した調査では,学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒数は,全体の6.5%程度の割合で通常の学級に在籍している可能性が示された。各教育現場では,大学生の養成や研修と合わせて,教室での児童生徒や教員のサポートとして,アシスタントティーチャー(以下,AT)が積極的に活用されるようになってきている(佐々木・有元, 2013)。
本研究では,横浜国立大学の教育実践演習の取り組みとして,公立の中学校に大学生がATとして参与する実践を報告する。この実践から,(1)特別な支援が必要な生徒の学習支援のあり方,及び(2)大学と学校現場の連携のあり方について検討していくことを本研究の目的とした。本研究で取り上げる「教職実践演習」とは,教員養成系学部の学生が在学中に身に付けた資質能力が,教員として最小限必要な資質能力として有機的に統合され,形成されたかについて,課程認定大学が最終的に確認するものである(中央教育審議会,2006)。
2.方法
横浜国立大学教育人間科学部の学生18名及び大学教授1名・大学院生1名による,教職実践演習の取り組みとして,公立中学校(以下A中学校)において,特別な支援が必要な生徒への教室でのATまたは取り出し指導を行った。
実習は,2013年9月2日~2013年10月30日の期間で2名1班で1週2日(火曜・水曜)ずつ支援を行った。実習後,筆者が学部生とともに振り返りを行い,インタビューに協力してもらった。また,学部生のインタビューをもとに,大学教授・大学院生・横浜国立大学附属特別支援学校養護教諭との間で,実習の様子や支援の方針についてメールや対面で情報共有を行った。インタビュー記録及びメール,学校への配布資料も合わせて考察のためのデータとした。
3.結果と考察
A中学校では「特別支援」の取り組みとして,普通級での学習が困難な生徒に対して別室登校という措置をとり,ワークや問題集などの課題を与えていた。教員の人手を十分に割くことのできない環境であり,特別支援級の生徒は,その課題に単独で取組むことが多かった。ATとして参与した学生のインタビューからは共通して特別支援級の生徒たちにとって,コミュニケーションの機会の獲得や,学習スタイルの改良が必要であるという意見が得られた(表1参照)。
例えば,車椅子を利用する人は,階段の利用は困難だが,スロープがある事でこの「ハンディキャップ」は解消される。つまり個人の能力や障害の有無といった属性は,環境のデザインに相対的であり,社会的に構成され顕在化される。特別支援級に所属する生徒たちは,他者との共同学習やコミュニケーションの機会が十分であったとは言えず,このことは学習環境によって立ち現れ、ATの学生達の目に可視になっていたと考えられる。
今回の実践では,ATの学生一人一人が,特別支援級の生徒の課題を発見し,学習方法を発案し,実践した。それぞれの取り組みは,ノートによって次の学生に引き継がれ,またA中学校の管理職,生徒指導担当者との情報共有も行われた。こうした取り組みの中で,学生だけでなく,中学校,大学教授など,関係者それぞれの中での同時多発的な学びが得られた。このように養成,研修,研究,実践が一体となった連携(有元, 2013)が今後重要になると考えられる。