[PC011] キャリア授業におけるクラス風土が生徒の動機づけに及ぼす影響(3)
自己決定理論の観点からの検討
Keywords:動機づけ, キャリア教育, 自己決定理論
問 題
自己決定理論(Deci & Ryan,1985)では、3つの基本的な欲求の充足を支援することで価値が内在化するとされる(Grolnick & Ryan,1987)。
実証研究として、Grolnick & Ryan(1989)は小学生の親の養育スタイルが子どもにどう関わるかを調査し、3つの支援は相関がなく相対的に独立すること、自律性支援はより内発的な自己調整と有能さ、関与は同一化と社会的価値の内在化を促進すること、また構造は子どもの自己調整の認知に関わって自律性を増加・減少させ学業成果と関連することを示した。
一方、キャリア関連授業のクラス風土と学業・ 就職への動機づけについては、大井・黒石(2012, 2013) が自己決定理論を参考にクラス風土を測定する尺度を作成し、高等学校において自律性支援と関連づけられる「意味や価値への方向づけ」が積極的学習活動と関連し、構造と関連づけられる「枠組みの強さ」が、積極的友人関係、無力感を減少させ意欲と関連していることを示している。
本研究では、小学校でなく従来研究されていない3年間のキャリアプログラムを推進しているある高等学校を取り上げ、3年終了時におけるキャリア関連授業ごとのクラス風土が学業および就職への動機づけに及ぼす影響について検討した。
方 法
調査対象 キャリアプログラムを推進している工業高校の第3学年全員117名を対象とし欠損値を含む対象者を除外し110名を有効回答とし、調査は第3学年の終了時とした。
使用尺度 大井・黒石(2012)で作成されたクラス風土を測定する尺度を使用した。「意味や価値への方向づけ」「枠組みの強さ」の2下位尺度から構成される。ここでは、3年次に実施される3つのキャリア関連授業(キャリアガイダンス:職業や勤労について考え進路についての自覚を深める、課題研究:自分たちで課題を決め課題解決に向けた取り組みを発表する、選択専門科目:専門技術に関するコースを選択し学習する)のそれぞれについて、クラス風土に関する回答を求めた。
学業的動機づけの測定には、中学生版無気力感尺度(笠井ら,1995)(①意欲減退・心身的不全感②充実感の欠如③消極的友人関係④無力感・あき
らめ⑤積極的学習活動の欠如の下位尺度から構成)
を使用、またキャリア関連の動機づけの測定には、職業忌避的傾向尺度(古市ら, 2007)を使用した。
結 果
キャリア関連授業のクラス風土と学業・就職への動機づけの指標の相関係数を算出した(表参照)。
「意味や価値への方向づけ」はすべての授業で有意に⑤「積極的学習活動の欠如」と負に、CG・選択専門科目の授業で④「無力感・あきらめ」と正に関連した。また「枠組みの強さ」は、すべての授業で①「意欲減退・心身的不全感」③「消極的友人関係」④「無力感・あきらめ」と負に、「職業忌避傾向」と負に有意に関連した。
考 察
先行研究と同様「意味や価値への方向づけ」と「枠組みの強さ」は相関がなく相対的に独立することが示された。また無力感が「意味や価値への方向づけ」と正に、「枠組みの強さ」とは負に関連したことから、無力感は枠組みの支援がある時は減少するが、自律性に委ねられる時は増加することが示された。
さらに「意味や価値への方向づけ」が動機づけを高め積極的学習活動を促進する可能性が示唆された。しかし、「枠組みの強さ」が無力感・職業忌避傾向を減少させ、意欲や友人関係を促進することはこれまで示されておらず、高校だけの特殊性また授業の風土によるものか、これらが自己調整の認知に関わって自律性を増加・減少させているのかについてはさらに検討が求められる。
自己決定理論(Deci & Ryan,1985)では、3つの基本的な欲求の充足を支援することで価値が内在化するとされる(Grolnick & Ryan,1987)。
実証研究として、Grolnick & Ryan(1989)は小学生の親の養育スタイルが子どもにどう関わるかを調査し、3つの支援は相関がなく相対的に独立すること、自律性支援はより内発的な自己調整と有能さ、関与は同一化と社会的価値の内在化を促進すること、また構造は子どもの自己調整の認知に関わって自律性を増加・減少させ学業成果と関連することを示した。
一方、キャリア関連授業のクラス風土と学業・ 就職への動機づけについては、大井・黒石(2012, 2013) が自己決定理論を参考にクラス風土を測定する尺度を作成し、高等学校において自律性支援と関連づけられる「意味や価値への方向づけ」が積極的学習活動と関連し、構造と関連づけられる「枠組みの強さ」が、積極的友人関係、無力感を減少させ意欲と関連していることを示している。
本研究では、小学校でなく従来研究されていない3年間のキャリアプログラムを推進しているある高等学校を取り上げ、3年終了時におけるキャリア関連授業ごとのクラス風土が学業および就職への動機づけに及ぼす影響について検討した。
方 法
調査対象 キャリアプログラムを推進している工業高校の第3学年全員117名を対象とし欠損値を含む対象者を除外し110名を有効回答とし、調査は第3学年の終了時とした。
使用尺度 大井・黒石(2012)で作成されたクラス風土を測定する尺度を使用した。「意味や価値への方向づけ」「枠組みの強さ」の2下位尺度から構成される。ここでは、3年次に実施される3つのキャリア関連授業(キャリアガイダンス:職業や勤労について考え進路についての自覚を深める、課題研究:自分たちで課題を決め課題解決に向けた取り組みを発表する、選択専門科目:専門技術に関するコースを選択し学習する)のそれぞれについて、クラス風土に関する回答を求めた。
学業的動機づけの測定には、中学生版無気力感尺度(笠井ら,1995)(①意欲減退・心身的不全感②充実感の欠如③消極的友人関係④無力感・あき
らめ⑤積極的学習活動の欠如の下位尺度から構成)
を使用、またキャリア関連の動機づけの測定には、職業忌避的傾向尺度(古市ら, 2007)を使用した。
結 果
キャリア関連授業のクラス風土と学業・就職への動機づけの指標の相関係数を算出した(表参照)。
「意味や価値への方向づけ」はすべての授業で有意に⑤「積極的学習活動の欠如」と負に、CG・選択専門科目の授業で④「無力感・あきらめ」と正に関連した。また「枠組みの強さ」は、すべての授業で①「意欲減退・心身的不全感」③「消極的友人関係」④「無力感・あきらめ」と負に、「職業忌避傾向」と負に有意に関連した。
考 察
先行研究と同様「意味や価値への方向づけ」と「枠組みの強さ」は相関がなく相対的に独立することが示された。また無力感が「意味や価値への方向づけ」と正に、「枠組みの強さ」とは負に関連したことから、無力感は枠組みの支援がある時は減少するが、自律性に委ねられる時は増加することが示された。
さらに「意味や価値への方向づけ」が動機づけを高め積極的学習活動を促進する可能性が示唆された。しかし、「枠組みの強さ」が無力感・職業忌避傾向を減少させ、意欲や友人関係を促進することはこれまで示されておらず、高校だけの特殊性また授業の風土によるものか、これらが自己調整の認知に関わって自律性を増加・減少させているのかについてはさらに検討が求められる。