The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC014] その行為は誰がやったものなのか?

課題の難易度が低い共同における自己への誤帰属と引用の関係

太田礼穂 (筑波大学大学院)

Keywords:共同活動, 幼児, 学習

問題と目的 大人と協力して課題を解決した後に,子どもに行為主体を想起させると,自身の行為を「あなた(大人)が行った(You did it error:YE)」と誤帰属するよりも大人の行為を「私(子ども)が行った(I did it error:IE」と誤帰属する傾向ある(e.g.,Ratnerら, 2002)。共同後に自己への誤帰属傾向(IE>YE)を示した場合,幼児ならびに小学校低学年の子どもについては,他者への誤帰属傾向を示した子どもよりも成績の伸びが大きいことが知られており,自己への誤帰属は共同を通じた学習メカニズムの解明につながるものとしてその意義が認められつつある(e.g.,奈田ら, 2012)。ただし誤帰属が生起するやりとりについては十分に明らかではない。とくに課題の難易度をふまえたやりとりと誤帰属の関係は明らかではない。そこで, 本研究では(1)大人とのやりとりの成果の引用と(2)誤帰属傾向の関係を検証する。以下では難易度が低い場合について議論を行う。

方法【実験参加者】年長児44名(男児21名,女児23名)【実施期間】2013年7月~9月【道具】絵本「どうぞのいす」,質問シート,帰属テスト,パズル【手続き】①読み聞かせの後,②各場面が俯瞰できる質問シートを用いて共同読み活動を実施した。まずEx.2(実験者2)は各場面に関する問いを子どもに尋ね,答えを確認する(プレテスト)。その後Ex.2は子どもによりよい答えになるよう大人(Ex.1)との話し合いを促した。Ex.1のやりとりは[条件1]答えへのつけたしの有無を子どもに確認のみ,[条件2]子どもの答えに登場人物などの外的特徴を付け加える働きかけ,[条件3]子どもの答えに登場人物の感情を付与するような働きかけを用意した。話し合いが終了するとEx.2は,Ex.1か子どもどちらかを指名し,再度問いを尋ね答えさせた。話し合いの結果の答えは,“まとめ”として記録した。またこの時,共同を参照するかも確認した。全10問を終了後③妨害課題を実施し④帰属テストを行い,各問いでまとめたのは誰かを確認した。⑤最後にポストテストを行った。

結果 (1)課題の難易度の確認:子どもにとって課題が容易であったかを確認するために,プレテストの正答率を確認した。その結果,条件1は88.7%,条件2は90.0%,条件3は94.5%であった。問いの難易度は低かったといえる。(2)誤帰属の生起数:条件1~3の誤帰属(IE・YE)の平均と標準偏差を表1に示した。条件×誤帰属の2要因分散分析の結果,条件間で有意差はみられなかった(F(1,82)=3.34, n.s.)(表1)。(3)引用:共同場面で子どもが自発的に引用した平均回数は5問中,条件2は3.28,条件3は1.66であり,条件2は有意に多く共同活動を引用していた(t(27)=2.22, p<.05)。ただしポストテストでのまとめの平均引用数は,10問中,条件2が3.35,条件3は0.60であり,どちらの条件でもあまり引用されていなかった。

まとめ 本研究では簡単な課題を大人と共同して解決したあと,誤帰属傾向がみられるか,またやりとりの内容が引用されるかを検討した。結果,条件1~3いずれにおいても,共同活動を行っていたのに自己への誤帰属傾向が見られなかった。また,条件3よりも条件2はやりとりが引用される傾向があったが,ポストテストではあまり引用されていなかった。簡単な課題の場合,やりとりの内容を引用する必要が少なかったといえる。このような共同活動では自己への誤帰属傾向が生起にくい可能性が示唆された。