日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PC020] プログラムの構造に関する文字認知の分析

宮川治1, 土肥紳一1, 今野紀子1, 高野辰之2 (1.東京電機大学, 2.関東学院大学)

キーワード:教授, 認知

1.目的
プログラム中の分離子(丸括弧,角括弧と波括弧)と引用符は,その構造を表現する文字として用いられている.これらの文字は「開き」「閉じ」が対となる.特に分離子は入れ子の構造を表現している.我々は初学者に文字列を出力する簡単なプログラムを入力させ,そのキーボード入力を分析し,「開き」「閉じ」の入力順序に関する検討を行った.この結果,予め「開き」「閉じ」の対を入力し,後から,その間を入力する手順を用いていた初学者の割合が丸括弧では約3割であることが分かった.また,文字の種類により,その割合が異なり,波括弧に至っては,1割未満であった.プログラムの入力順序は,プログラムの構造を理解する手助けになるため,「開き」「閉じ」の対をあらかじめ入力することが重要である.本論文では,これらの文字に関して,初学者と経験者の認知に違いがあるのかを報告する.

2.調査対象講義
2013年度の後期に本学で開講されたコンピュータプログラミングA(Java言語入門)を対象に,プログラムの構造に関する文字(丸括弧,角括弧,波括弧と引用符)の「知っているか」と「使用経験」の質問と,「プログラミング経験」を調査した.調査日は初回の講義とした.

3.プログラムの構造
Java言語でのプログラムの構造に関する文字の使用例は
①クラスの宣言:外側のブロックは波括弧{ }
②振る舞いの宣言:内側のブロックは波括弧{ }
宣言の一部には丸括弧 ( ) ,その内側に角括弧[ ]
③出力命令文
出力命令文は丸括弧 ( ),その内側にダブルクォート””
である.これらの文字は「開き」「閉じ」が対となり,入れ子の構造となる.Java言語のプログラム例を図1に示す.

4.調査結果
プログラミングの講義を受講している96名からアンケートを取得した.プログラミング経験者24名,初学者72名であった.プログラムの構造に関する文字の丸括弧,角括弧と波括弧は「開き」「閉じ」の形が違うため3×2 = 6種類,引用符は「開き」「閉じ」の形が同じため2種類の合計8種類に関して「知っているか」と「使用経験」を調査した.ただし,選択肢は「はい/いいえ」とした.図2は「知っているか」と図3は「使用経験」に関してレーダーチャートを用いて,経験者と初学者の,それぞれの割合を比較した.これらの結果より,「知っているか」は
?経験者と初学者の比較
?丸括弧は差が少ない
?シングルクォートとダブルクォートは差が多い
?文字の比較
?経験者は全体的にバランスよく高い
?初学者は丸括弧と比べ,他の括弧は約2割低い
であった.「使用経験」では
?経験者と初学者の比較
?全種類で差が多い
?特にダブルクォートは差が多い
?文字の比較
?経験者は丸括弧とダブルクォートが高い
?初学者はシングルクォートが低い
であった.

5.考察
結果より,初学者は丸括弧と比べ,波括弧を認知している割合が少ないことが分かった.このことから,図1のプログラムのように,波括弧の「開き」「閉じ」が同じ行にない場合には,対応関係の理解が難しいことが予想される.まず,教授者はプログラムの構造に関する文字が対であることを理解させる必要があると考えられる.また,経験者のダブルクォートの認知の割合が高いのは文字列リテラルの引用符であることが影響していると推測される.

6.まとめ
プログラミングの受講生に関して,プログラムの構造に関する文字に関する「知っているか」と「使用経験」のアンケート結果を分析した.この結果,初学者の波括弧の認知の割合は,他の括弧に比べ低いことが確認できた.本論文では,これらの結果・考察から,初学者には括弧と引用符の対の関係に着目した教授の提案を行った.今後は実践を通しての教授改善が課題である.
本研究の一部は,科学研究費補助金(基盤研究(C) 課題番号24501214)として調査した.