[PC021] プロジェクト型学習における役割意識の構築過程
Keywords:プロジェクト型学習, コミュニケーション, ネットワーク
1.問題と目的
近年,高等教育では知識伝達型ではない授業形態が導入されてきた。その具体的な方法の一つとして注目されているのが,プロジェクト型学習(PBL)である。Jones(1997)は,「複雑な課題や挑戦に値する問題に対して,学生がデザイン・問題解決・意思決定・情報探索を一定期間,自律的に行い,実際的な制作物もしくはプレゼンテーションを目的としたプロジェクトに従事すること」と定義している。本研究ではPBL参加学生の役割意識の構築過程を明らかにすることを目的とする。
2.方法
調査対象は東京大学生産技術研究所村松研究室が近隣の渋谷区立上原小学校とともに9年継続して行ってきた地域学習実践プロジェクト「ぼくらはまちの探検隊」である。 本研究では,このプロジェクトに関わる人々のうち,大学生・研究生・大学院生・教員(以下,プロジェクトメンバー)に着眼し,高等教育におけるPBLと捉える。調査期間は,2013年4月20日~7月23日である。プロジェクトメンバー29人全員が,調査への協力を承諾した。本研究では,マルチメソッドを採用し,質問紙調査,参与観察,インタビュー調査を組み合わせた。インタビューの中で,プロジェクトメンバーのうち,教員を除く28名の一覧をインタビュー協力者に見せ,その中から一番よくコミュニケーションをとったと思う人から順に1番目から5番目まで数字を振ってもらった。
3.結果
プロジェクトメンバーは,大きく3つの「デザインされた役割」に分けることができた。
隊長:隊におけるリーダー。授業内で探求するテーマである「指令」を,小学校での授業開始よりも前に考え,PBL支援者とともにブラッシュアップさせる。小学生の探究活動を助ける具体的な方法を考え実践する。最終成果を報告する日まで支援を続ける。
副隊長:隊における大学生・大学院生のメンバー。隊長を助けながら,小学生とともに探究活動を行う。小学生の探究活動を助ける。最終成果を報告する日まで支援を続ける。
PBL支援者:隊に属さず, PBLへの学習支援を行っている人たちを指す。PBL支援者は,教員1名,コーディネーター3名,撮影係1名,アドバイザー1名から成っていた。
次に,インタビュー協力者15名について,誰とコミュニケーションを取っていたか整理し,質的に分析した。その結果,(1)チームメンバー間のフォーマルなコミュニケーション,(2)チームメンバー間のインフォーマルなコミュニケーション,(3)チームメンバー外とのインフォーマルなコミュニケーション,という3パタンにおいて,参加した学生はPBL支援者が予め与えた「デザインされた役割」を咀嚼し,自分なりの「役割の発見」を行っていたことが確認できた。
4.結論
本研究から,(1)学生はチームメンバー同士だけではなくチーム外とのコミュニケーションにおいても学習をしていたこと,(2)学生は他者とのコミュニケーションを通じ「デザインされた役割」を深め自分なりの「役割の発見」を行っていく過程でプロジェクトへの参画を果たしていくこと,(3)PBLにおいて予め「デザインされた役割」は学生個々の「役割の発見」にとって重要なトリガーになっていること,が明らかになった。
参考文献
Jones, W.T.(2000) A review on project based learning. CA: Autodesk Foundation.
近年,高等教育では知識伝達型ではない授業形態が導入されてきた。その具体的な方法の一つとして注目されているのが,プロジェクト型学習(PBL)である。Jones(1997)は,「複雑な課題や挑戦に値する問題に対して,学生がデザイン・問題解決・意思決定・情報探索を一定期間,自律的に行い,実際的な制作物もしくはプレゼンテーションを目的としたプロジェクトに従事すること」と定義している。本研究ではPBL参加学生の役割意識の構築過程を明らかにすることを目的とする。
2.方法
調査対象は東京大学生産技術研究所村松研究室が近隣の渋谷区立上原小学校とともに9年継続して行ってきた地域学習実践プロジェクト「ぼくらはまちの探検隊」である。 本研究では,このプロジェクトに関わる人々のうち,大学生・研究生・大学院生・教員(以下,プロジェクトメンバー)に着眼し,高等教育におけるPBLと捉える。調査期間は,2013年4月20日~7月23日である。プロジェクトメンバー29人全員が,調査への協力を承諾した。本研究では,マルチメソッドを採用し,質問紙調査,参与観察,インタビュー調査を組み合わせた。インタビューの中で,プロジェクトメンバーのうち,教員を除く28名の一覧をインタビュー協力者に見せ,その中から一番よくコミュニケーションをとったと思う人から順に1番目から5番目まで数字を振ってもらった。
3.結果
プロジェクトメンバーは,大きく3つの「デザインされた役割」に分けることができた。
隊長:隊におけるリーダー。授業内で探求するテーマである「指令」を,小学校での授業開始よりも前に考え,PBL支援者とともにブラッシュアップさせる。小学生の探究活動を助ける具体的な方法を考え実践する。最終成果を報告する日まで支援を続ける。
副隊長:隊における大学生・大学院生のメンバー。隊長を助けながら,小学生とともに探究活動を行う。小学生の探究活動を助ける。最終成果を報告する日まで支援を続ける。
PBL支援者:隊に属さず, PBLへの学習支援を行っている人たちを指す。PBL支援者は,教員1名,コーディネーター3名,撮影係1名,アドバイザー1名から成っていた。
次に,インタビュー協力者15名について,誰とコミュニケーションを取っていたか整理し,質的に分析した。その結果,(1)チームメンバー間のフォーマルなコミュニケーション,(2)チームメンバー間のインフォーマルなコミュニケーション,(3)チームメンバー外とのインフォーマルなコミュニケーション,という3パタンにおいて,参加した学生はPBL支援者が予め与えた「デザインされた役割」を咀嚼し,自分なりの「役割の発見」を行っていたことが確認できた。
4.結論
本研究から,(1)学生はチームメンバー同士だけではなくチーム外とのコミュニケーションにおいても学習をしていたこと,(2)学生は他者とのコミュニケーションを通じ「デザインされた役割」を深め自分なりの「役割の発見」を行っていく過程でプロジェクトへの参画を果たしていくこと,(3)PBLにおいて予め「デザインされた役割」は学生個々の「役割の発見」にとって重要なトリガーになっていること,が明らかになった。
参考文献
Jones, W.T.(2000) A review on project based learning. CA: Autodesk Foundation.