[PC033] 外挿操作による課題解決の促進
Keywords:外挿操作, 力の合成分解課題, 等周長課題
問題と目的
ルール命題形式で記述可能な知識(言語教材)を内的に変換する「操作」は当該の知識の理解や問題解決を促進することがある。本研究では外挿という操作(関数関係にある2変数の1つを関係づけられている範囲外に想定し,他の変数の値を予想すること)の教授による問題解決の促進効果を検証する。学者内容には誤概念が現れやすい「力の合成分解問題」と「等周長問題」を取り上げた。
方 法
文系学生136名に異なる冊子をランダムに配布し,外挿法教示(教示)・外挿例示(例示)・統制の3群を構成した。手続きの概略は下図の通りであった。統制群は先行課題を欠き,3群共通の課題のみ行った。例示群は先行課題として「力の合成分解問題」に即して外挿事例による力の合成分解法則の解説を受けた。教示群には解説に加え,「鍵になる特徴の値を大きく変化させることが課題解決に有効な場合がある」旨の教授を行った。
結果と考察
先行問題 問題1での正答者率は,教示群・例示群を併せて53%であり,問題2では74%であった。極端な場合で考えさせることが,効果をもった。解説後の再問題解決での値は90%であった。
標的問題(1回目) ヘリコプタ問題では教示,例示,統制群の正答者率はそれぞれ76%,84%,37%であり,比率の差は教示?例示>統制となった。この結果について外挿を行ったからだとは直ちにいえない。力の合成分解法則の解説から得た知識をそのまま適用した可能性もある。
等周長問題における正答者率は,3群共に20%程度であり,差は有意ではなかった。異なる問題では先行課題が効果をもたなかった。
標的問題(ヒント提示後の2回目) ヒント提示後のヘリコプタ問題での正答者率は,教示,例示,統制群で80%,84%,50%であり,比率は教示,例示群で有意に高く,統制群が低かった。
前者2群の伸びは小さいが,天井効果による可能性もある。統制群では一定程の上昇があったが,外挿に関わるヒントが効果をもつ可能性を示す一方で,先行課題による外挿の学習を欠いたために,その効果は限定的だったことを示す。
等周長問題のヒント提示後の正答者率は教示,例示,統制群で63%,60%,46%であり,どの群も2回目が有意に高かった。また、2回目の正答者率は有意ではないが統制群は他の2群より低い。そこで,先行課題を行った2群を合併した先行学習群と統制群を比較したところ,比率の差は前者で有意に高かった。
等周長問題における2回目の問題解決での正答者の理由では,「押しつぶされて面積が狭くなった」など,外挿を行ったと考えられる者が,先行学習群では73%,統制群では54%であり,比率の差は有意であった。先行課題での学習により,別種の問題で自発的に外挿操作を行うことは困難であるが,その使用を外的に方向づけることで操作による問題解決が行われる可能性がある。
ルール命題形式で記述可能な知識(言語教材)を内的に変換する「操作」は当該の知識の理解や問題解決を促進することがある。本研究では外挿という操作(関数関係にある2変数の1つを関係づけられている範囲外に想定し,他の変数の値を予想すること)の教授による問題解決の促進効果を検証する。学者内容には誤概念が現れやすい「力の合成分解問題」と「等周長問題」を取り上げた。
方 法
文系学生136名に異なる冊子をランダムに配布し,外挿法教示(教示)・外挿例示(例示)・統制の3群を構成した。手続きの概略は下図の通りであった。統制群は先行課題を欠き,3群共通の課題のみ行った。例示群は先行課題として「力の合成分解問題」に即して外挿事例による力の合成分解法則の解説を受けた。教示群には解説に加え,「鍵になる特徴の値を大きく変化させることが課題解決に有効な場合がある」旨の教授を行った。
結果と考察
先行問題 問題1での正答者率は,教示群・例示群を併せて53%であり,問題2では74%であった。極端な場合で考えさせることが,効果をもった。解説後の再問題解決での値は90%であった。
標的問題(1回目) ヘリコプタ問題では教示,例示,統制群の正答者率はそれぞれ76%,84%,37%であり,比率の差は教示?例示>統制となった。この結果について外挿を行ったからだとは直ちにいえない。力の合成分解法則の解説から得た知識をそのまま適用した可能性もある。
等周長問題における正答者率は,3群共に20%程度であり,差は有意ではなかった。異なる問題では先行課題が効果をもたなかった。
標的問題(ヒント提示後の2回目) ヒント提示後のヘリコプタ問題での正答者率は,教示,例示,統制群で80%,84%,50%であり,比率は教示,例示群で有意に高く,統制群が低かった。
前者2群の伸びは小さいが,天井効果による可能性もある。統制群では一定程の上昇があったが,外挿に関わるヒントが効果をもつ可能性を示す一方で,先行課題による外挿の学習を欠いたために,その効果は限定的だったことを示す。
等周長問題のヒント提示後の正答者率は教示,例示,統制群で63%,60%,46%であり,どの群も2回目が有意に高かった。また、2回目の正答者率は有意ではないが統制群は他の2群より低い。そこで,先行課題を行った2群を合併した先行学習群と統制群を比較したところ,比率の差は前者で有意に高かった。
等周長問題における2回目の問題解決での正答者の理由では,「押しつぶされて面積が狭くなった」など,外挿を行ったと考えられる者が,先行学習群では73%,統制群では54%であり,比率の差は有意であった。先行課題での学習により,別種の問題で自発的に外挿操作を行うことは困難であるが,その使用を外的に方向づけることで操作による問題解決が行われる可能性がある。