[PC037] 概念変化を促す情報教示の影響が自己効力感によってどのように異なるか
知識の正確性/知識再構築に対する自己効力感の観点から
Keywords:自己効力感, 概念変化, 概念変化学習法
動機づけ研究における期待概念の中でもBandura(1977)による自己効力感は幅広く用いられている概念である。この自己効力感について,Pintrich, Marx & Boyle(1993)は,概念変化との関連において,思考への自信という観点から概念変化を促す側面と,既に持っている知識への自信という観点から概念変化をむしろ阻害する側面が考えられると示唆している。そこで,中西・大道(2014:発達心理学会)は,これらに対応する項目を作成し,因子分析の結果を基に,「既有知識の正確性に対する自己効力感」「知識再構築への自己効力感」「知識再構築に対する負の自己効力感」の3下位尺度からなる尺度を構成している。
本研究ではこのような自己効力感の違いが,実際に概念変化を促すような情報教示を行った際,概念変化にどのような影響を与えるかについて検討を行う。
【方法】対象:教養科目に該当する心理学の授業を受講している大学生ならびに短期大学生計135名(男性29名・女性106名,平均年齢19.47歳, SD 3.72)
質問紙:本研究では,質問紙の中で概念変化を促す情報教示がなされ,その前後における知識の変化について検討した。生物学領域の家畜に関する問題 植松・相澤・阿部(2005)で用いられていた題材を参考に作成した。ブタ・イヌ・ネコ・キンギョ・ニワトリ・ウサギ・ウマ・カイコ・モルモット・クジラ(家畜ではない)について,簡単な説明を教示した上で,それらが家畜と判断できるかどうか(または,分からないか)を尋ねた。自己効力感尺度 中西・大道(2014)において作成されている 「既有知識の正確性に対する自己効力感」,「知識再構築に対する自己効力感」,「知識再構築に対する負の自己効力感」の3下位尺度からなる14項目を用いた(7段階評定)。なお,この尺度は上記の家畜に関する問題に対する回答について尋ねるものとなっていた。概念変化を促す情報教示 植松ら(2005)で用いられていた方法に従い「家畜概念」について説明(2種類)を行った。上述の2つの質問はこの前後に行われた。なお,質問紙には他にも尺度や設問が含まれていたがここでは扱わない。
【結果】家畜に関する問題では,正しく判断されたものを1,正しく判断されていないものと分からないという判断がされたものをともに不正解であると考え,0とコード化した。また,自己効力感尺度については,各下位尺度において平均値を基に高群と低群に被験者を群分けした。さらに,植松ら(2005)に従い,教示前にブタを家畜と判断し,イヌ・ネコ・キンギョを家畜でないと判断した者のみを分析対象とした。家畜に関する問題の正解/不正解を従属変数とし,時期(2:教示前・後)×自己効力感の高低(2:高群・低群)の2要因分散分析を行った。その結果,被験者の選択に用いなかったニワトリ・ウサギ・ウマ・カイコ・モルモット・クジラの中で,有意な交互作用がみられたのは,モルモットとクジラであった。特に家畜ではないクジラについては,知識再構築の自己効力感が低い被験者の正答率が教示後に下がっている様相がみられたため,情報教示によって,知識再構築の自己効力感が低い被験者が既に持っている正しい知識を揺さぶられた可能性が考えられる。
本研究ではこのような自己効力感の違いが,実際に概念変化を促すような情報教示を行った際,概念変化にどのような影響を与えるかについて検討を行う。
【方法】対象:教養科目に該当する心理学の授業を受講している大学生ならびに短期大学生計135名(男性29名・女性106名,平均年齢19.47歳, SD 3.72)
質問紙:本研究では,質問紙の中で概念変化を促す情報教示がなされ,その前後における知識の変化について検討した。生物学領域の家畜に関する問題 植松・相澤・阿部(2005)で用いられていた題材を参考に作成した。ブタ・イヌ・ネコ・キンギョ・ニワトリ・ウサギ・ウマ・カイコ・モルモット・クジラ(家畜ではない)について,簡単な説明を教示した上で,それらが家畜と判断できるかどうか(または,分からないか)を尋ねた。自己効力感尺度 中西・大道(2014)において作成されている 「既有知識の正確性に対する自己効力感」,「知識再構築に対する自己効力感」,「知識再構築に対する負の自己効力感」の3下位尺度からなる14項目を用いた(7段階評定)。なお,この尺度は上記の家畜に関する問題に対する回答について尋ねるものとなっていた。概念変化を促す情報教示 植松ら(2005)で用いられていた方法に従い「家畜概念」について説明(2種類)を行った。上述の2つの質問はこの前後に行われた。なお,質問紙には他にも尺度や設問が含まれていたがここでは扱わない。
【結果】家畜に関する問題では,正しく判断されたものを1,正しく判断されていないものと分からないという判断がされたものをともに不正解であると考え,0とコード化した。また,自己効力感尺度については,各下位尺度において平均値を基に高群と低群に被験者を群分けした。さらに,植松ら(2005)に従い,教示前にブタを家畜と判断し,イヌ・ネコ・キンギョを家畜でないと判断した者のみを分析対象とした。家畜に関する問題の正解/不正解を従属変数とし,時期(2:教示前・後)×自己効力感の高低(2:高群・低群)の2要因分散分析を行った。その結果,被験者の選択に用いなかったニワトリ・ウサギ・ウマ・カイコ・モルモット・クジラの中で,有意な交互作用がみられたのは,モルモットとクジラであった。特に家畜ではないクジラについては,知識再構築の自己効力感が低い被験者の正答率が教示後に下がっている様相がみられたため,情報教示によって,知識再構築の自己効力感が低い被験者が既に持っている正しい知識を揺さぶられた可能性が考えられる。