日本教育心理学会第56回総会

講演情報

ポスター発表 » ポスター発表 PC

ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PC040] 学習の継続性に関係する学習動機と授業に対する意識

履修科目全体に関する授業満足度と満足授業率との相違

鈴木賢男 (文教大学)

キーワード:授業満足, 学習動機, 学習不安

【目的】主体的に学習を進める態度が形成されることは望ましいことである。しかしながら,授業内で種々の困難にあるとき,その主体性自体が失われる可能性があるのもまた事実であろう。「教授法についての研究を進めれば進めるほど,その要諦は学生の学習を促進することにあるということがわかってきた(近田・戸田山他 2007)」とすれば,学習者への支援は,学習活動における彼らの主体性をどのように促進し,または保護するかという視点に立って考える必要が出てくるだろう。また,福祉等の領域では,ソーシャル・サポート(支援)の視点を道具・情報・情緒・評価的の4つとしている(House, 1981)ことから,学習支援においても感情的側面への着目が有用になってくると思われる。本研究では,学校環境における学習の主体性(継続性)や授業に対する満足度が,学習者の学習動機や学習時の心的状態,また,学習者が望む支援の在り方とどのように関連しているかを検討した。
【方法】調査実施日:2014年1月末(試験後)。対象者:4年制大学教育系大学生2年生82名(男性56,女性26)。平均年令19.2才SD=0.68。質問紙:A. 学生生活の取組み内容(例;部活動,授業,友人との交流)10項目に関して,懸命に取り組んだものを複数選択で回答させた。B. 授業に関しては,1.後期の履修科目数,2.満足できた科目数,3.出席をよくした科目数,4.良い授業にするための学生自身の責任分担率,5.主観的授業満足率(%)の5つについて,直接記述方式で回答させた。C. 学習への継続性や期待については10項目を7段階で,D. 学習動機については36項目(市川, 2001)を5段階で,E. 授業時の気持ちや意識については25項目を7段階で,F. 授業時に要望する支援としては28項目を7段階評定で,それぞれ回答させた。手続き:以上の項目を含む質問紙は配布後その場で記入・回収した。
【結果と考察】授業の満足に関する指標 満足できた授業数を受講した科目数で除算した割合を履修科目全体における満足授業率とし,その平均値を算出したところ0.49(SD=0.27)となっていた。また,履修科目全体に対する主観的割合としての授業満足率の平均は58.7%(SD=21.14)であった。学習継続志向性 共通性の低かった項目を除いた9項目に対して,最尤法による因子分析を行い,固有値1.0以上を基準として3因子を抽出した後,回転バリマックス解を得た(累積寄与率62.2%)。その結果,学習継続志向性は,「学校親和」「学習意欲」「好奇動機」に分類され,平均値は,学習意欲が最も高く(6.2),次いで学校親和(5.0)と好奇動機(4.9)が同程度であった。これらの得点を合計し学習継続志向性得点とした(平均=16.1, SD=2.53)。学生生活の取組み 友人との交流やアルバイトに懸命に取り組んだとする率は5割を超え,次いで部活動が4割程度であったが,学校での授業は3割程度に収まり,趣味(余暇活動)と同程度となった。学習動機 最も平均点が高かったものは,実用志向(24.2)であり,次いで充実志向(23.2),訓練志向(22.4)で,いずれも内容関与動機に該当するものであり,内容分離動機に属する自尊志向(20.0),報酬志向(19.0),関係志向(18.1)は比較的低い値を示すこととなった。授業時の意識 主因子法による因子分析を行い,固有値の減衰率を基準として4因子を抽出した後,回転バリマックス解を得た(累積寄与率49.5%)。その結果,学習時における感情状態は,「効力感」「達成感」「非充実感」「負担感」に分類され,負担感に関しては,該当項目のみ再度,同様にして因子分析を行い,3因子を抽出後,バリマックス解を得た(累積寄与率51.1%)。その結果,負担感は「重圧感」「閉塞感」「脱落感(劣等感)」に分類することができた。期待される授業支援 共通性の低かった5項目を除外して因子分析を行い,固有値の減衰率を機銃として4因子を抽出後,回転バリマックス解を得た(累積寄与率46.7%)。その結果,授業支援としては,「活性型」「軽減型」「平静型」「個別型」に分類され,平均値は,軽減型(3.8)を除く3種に関しては同程度に高かった(4.6~4.9)。学習感に影響する変数 学習継続志向性を目的変数とし,上記の因子を尺度化した得点を説明変数としてステップワイズ法による重回帰分析を実施したところ,充実志向と効力感,非充実感(-),懸命に取り組んだ学生生活における活動数の4変数でF(4,65)=16.5となり,1%水準で有意となった(R2=0.47)。授業満足率を目的変数とした場合は,関係志向と非充実感(-),満足授業率では,劣等感(-)と学校親和となった。