The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC050] 教具による学習効果の違いに関する研究

板書・実物投影機・デジタルペンの活用に関する検討

寺本貴啓1, 高垣マユミ2, 福地孝倫3 (1.國學院大學, 2.津田塾大学, 3.広島大学附属東雲小学校)

Keywords:教具, 小学校, デジタルペン

1.研究の背景
国立教育政策研究所(2013)では,社会の変化に対応して求められる資質・能力を「21世紀型能力」と提案し,「基礎力」「思考力」「実践力」の3要素を提案している。中でも,これらの能力は「思考力」を中核としており,「一人ひとりが自ら学び判断し自分の考えを持って,他者と話し合い,考えを比較吟味して統合し,よりよい解や新しい知識を創り出し,さらに次の問いを見つける力(p.27)」としている。つまり,他者と話し合い,自分の考えを共有し検討するこることが重要であると言える。また,国立教育政策研究所(2014)で「「知識の活用や創造」,「異質な他者との交流」,「ICT も含めた道具の活用」といったことが社会で生きていくために求められていることがうかがえた(p.9)」とあるように,時代の変化に合わせた指導法の検討が重要になると言える。このような背景から,時代の変化に合わせた「思考力」の育成のための指導法の検討は重要である。
2.研究の目的
小学校理科における表現力(予想や考察などの記述)を育成する指導において,板書,実物投影機,デジタルペンの教具の提示機能に限定した場合,学習効果がどの程度異なるのか検討する。
3.方法
(1)対象
公立小学校第5学年4クラス(黒板群1クラス32名,実物投影機群1クラス32名,デジタルペン群2クラス63名)授業並びにテストの欠席者を除き(プレ・ポスト一方でも欠席は欠損扱い),分析対象は黒板群27名,実物投影機群26名,デジタルペン群55名とした。
(2)手続き
調査は「植物の発芽,成長,結実」の単元で行った。
黒板群,実物投影機群,デジタルペン群の3つの群を用意。
(3)プレ・ポストテストの採点
3つの群に対してプレテスト・ポストを実施し,根拠がある考察を問う問題を出題した。調査内容は,小学校理科における「問題解決の過程」のうち,「考察」の場面で理由付きで説明させるものである。説明の妥当性の度合いにより,教職経験者2名により9段階(0~8点)で評価した。
(4)分析方法
分析は3つの群のプレ,ポストテスト成績を元に共分散分析(共変量:プレテスト成績)を行った。そして,推定平均値の差から教具による学習効果について検討した。
4.結果
ポストテストの推定平均値は,黒板群:5.03,実物投影機群:6.71,デジタルペン群:6.38,であり,主効果の検定(共変量:5.26)では群間に有意差が認められた(F(2,104)=5.84,p<.05)。多重比較の結果,黒板群-実物投影機群,黒板群-デジタルペン群に有意差が認められ,実物投影機群-デジタルペン群には有意差が認められなかった。
5.考察
本結果より,子どもたちの一斉に提示する機能に限定した場合,実物投影機とデジタルペンは板書よりも効果があり,実物投影機とデジタルペンでは効果に違いがなかった。まず,「実物投影機とデジタルペンは板書よりも効果がある」ことからは,どのような教具を活用しても「提示する機能」の条件(子どもに対する提示内容・提示回数)が同じであれば学習効果は変わらないということが明らかになった。次に,「実物投影機とデジタルペンでは効果に違いがなかった」原因としては,子どもたちに対して説明をするために提示する回数が異なった点にあると言える。
【参考・引用文献】
国立教育政策研究所(2013)社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理
国立教育政策研究所(2014)資質や能力の包括的育成に向けた教育課程の基準の原理