The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC062] 就業力育成のためのルーブリックの開発と試行

芝崎良典 (くらしき作陽大学)

Keywords:就業力, ルーブリック, ボランティア

ボランティアは学生時代に就業体験をもつことのできる貴重な機会である。しかしながら,就業力育成についてボランティアがもつ教育的意義あるいは効果についての研究報告は少ない(川崎・岩本・仲川,2011)。川崎・岩本・仲川 (2011) は学生がボランティアを経験するうちでどのような学びの過程があるか分析している。彼らは,学びの過程には,リアリティショック型,葛藤克服型,螺旋式葛藤克服型の3種類あると考察している。いずれのタイプも挫折を経験しながら,最終的には何かを得てボランティアを終了している。興味深いのはいずれのタイプに属さない学生たちである。この学生は全体の5%程度おり,ボランティアを経験しても特に意欲,態度等で変化の認められなかった学生たちである。この学生の特徴として,ボランティアに対する期待感が欠如していたことを 川崎・岩本・仲川 (2011) は報告している。川崎・岩本・仲川 (2011) の報告が興味深い点は,ボランティアをする意義などを事前に学生が理解しておかなければ,ボランティアが本来もつ教育的効果があらわれないという点である。ボランティアを行う前にルーブリックによる評価の観点を示し,ボランティアから何を学ぶことが期待されているかを示すことで,学生のボランティア経験に深まりはでるのであろうか。

方法

学生の保育現場での経験が,就業力を構成する4つの要因とどのように関連するのかを検討した。

調査対象者 保育者養成課程に在籍する大学1年生 80 名。
手続き ボランティアを実施する前に,後述するルーブリックによる評価票を学生に示し,今後経験する就職活動において,4つのちから(計画力,志望動機,課外活動,自己理解)を培うことが重要であることを説明した。学生には授業外で自分自身で幼稚園あるいは保育所と交渉し,ボランティアを行うよう求めた。なお,ボランティアの参加は任意であり,不参加による不利益は学生には生じないようした。
ルーブリック 就業力のルーブリックは4つの観点からなる。ひとつは計画力であり,到達目標として「志望する職種に就くために必要となることがらについて把握するとともに,内定を得るための計画をたて実際に準備をすすめることができる」を設定した。水準は4水準あり,1水準が「志望する職種を挙げることができる」,2水準が「志望する職種に就くために必要となることがらについて述べることができる」,3水準が「志望する職種に就くために必要となることがらについて把握しており,内定を得るための計画をたてることができる」,そして4水準が,「志望する職種に就くために必要となることがらについて把握するとともに,内定を得るための計画をたて実際に準備をすすめることができる」であった。ふたつめの観点は,志望動機であり,到達目標は「業界研究にもとづいた説得的な志望動機を述べることができるとともに,自身の主張に説得性を持たせるために課外活動等に取組んでいる」であり,各水準は低いものから,「志望動機を述べることができる」,「業界研究にもとづいた志望動機を述べることができる」,「業界研究にもとづいた説得的な志望動機を述べることができる」,「業界研究にもとづいた説得的な志望動機を述べることができるとともに,自身の主張に説得性を持たせるために課外活動等に取組んでいる」であった。みっつめの観点は課外活動であり,到達目標は「目的をもって課外活動を行うとともに,自身の活動のふりかえりを記録に残し,自己理解を深めている」であり,各水準は低いものから,「課外活動を行っている」,「目的をもって課外活動を行っている」,「目的をもって課外活動を行うとともに,自身の活動のふりかえりを記録に残すことができている」,「目的をもって課外活動を行うとともに,自身の活動のふりかえりを記録に残し,自己理解を深めている」であった。よっつめの観点は,自己理解であり,その到達目標は「自身の志望する業界に適しており,かつ根拠のある長所を述べることができるとともに,その長所をいかにして在学中に伸ばしてきたか述べることができる」であった。各水準は低い水準から,「自身の長所を述べることができる」,「自身の志望する業界に適した長所を述べることができる」,「自身の志望する業界に適しており,かつ根拠のある長所を述べることができる」,「自身の志望する業界に適しており,かつ根拠のある長所を述べることができるとともに,その長所をいかにして在学中に伸ばしてきたか述べることができる」であった。

結果と考察

ボランティアは総計で 198 回参加していた。学生のボランティア経験が就業力を構成する4つの観点にどのような影響を及ぼすかを検討するため,ボランティア回数と各観点の得点との間の kendall の順位相関係数を算出した。結果,課外活動との間では .29 であり,両変数間の相関は有意であった (z =3.2, p <.01)。ボランティア回数が増えるほど,目的をもってボランティアに参加するようになっている。また,実習実習の経験数と計画力との間の相関は有意であった (z = -3.38, p < .01)。これはボランティアをすればするほど,就職活動に向けて具体的に計画をすることができていないと学生が感じることを意味している。現場で実際の保育を体験すればするほど,自身に足りないもの,これから学び習得していかなければならないことがらの多さに気づくためであろう。