[PC064] 高齢者の移動支援機器に対する心理的抵抗感
生活機能得点の高低による違い
Keywords:移動支援機器, 心理的抵抗感, 高齢者
1.研究の目的
高齢者の中には、杖、歩行補助車、車いすなどの移動支援機器を使用している者が多い。しかし、「歳をとったように思われる」などの理由から、機器の使用に対して心理的な抵抗(以下、心理的抵抗感)を示す者がいる(安心院,2013)。移動支援機器に対する心理的抵抗感を低めるためには、これらの機器の有効性について、高齢者に伝えていく必要がある。しかし、高齢者の認識を変えるための効果的な教育内容については明らかにされていない。そこで、本稿では、教育内容を精選するための基礎的資料を得ることを目的として、高齢者自身がこれらの機器に対して心理的抵抗感をどの程度持っているのか、また、活動能力の高低によってそれぞれの機器に対する心理的抵抗感に違いがみられるのかどうかについて明らかにしたいと考えた。
2.方法
(1)調査対象者:65歳~93歳までの高齢者161名であった。そのうち男性が73名(45%)、女性が88名(55%)であった。
(2)手続き:知人の高齢者および知人に紹介してもらった高齢者に対して直接個別ヒアリング調査を実施した。回答に要した時間は平均約30分であった。調査は2013年11月~2014年1月に実施された。質問項目は16項目であった。
3.結果と考察
(1)移動支援機器に対する心理的抵抗感
移動支援機器(杖・歩行補助車・車いす・ハンドル形電動車いす)に対して、どの程度の心理的抵抗感があるのかを、「非常に抵抗がある」を5点、「まったく抵抗がない」を1点としてその平均値を算出した。
杖の心理的抵抗感の得点は1.66、歩行補助車は3.11、車いすは3.90、ハンドル形電動車いすは3.89であった。これらの移動支援機器のうち車いす、ハンドル形電動車いすがほぼ同程度の強い抵抗感があり、杖は最も抵抗感が低いことが確認された。
(2)活動能力の高低による移動支援機器への心理的抵抗感の違い
老研式活動能力指標の生活機能得点の7点以下を活動低群、8点以上を活動高群とし、「活動能力の高低」と「それぞれの移動支援機器の心理的抵抗感」の平均の差の分析を行ったところ、車いす(t(161)=1.84,p<0.05)において有意差が、ハンドル形電動車いす(t(161)=2.20,p<0.10)において有意傾向が確認された(表1)。つまり、活動能力が低い高齢者よりも、活動能力が高い高齢者の方が、車いす、ハンドル形電動車いすに対して心理的抵抗感が高いと言える。
安心院(2012)は、「自立した安全な移動ができる」と認識している者は心理的抵抗感が低くなる傾向にあることを確認している。活動能力が高い者は、もともと自立した移動ができている状態であることが推測される。そのため、車いすやハンドル形電動車いすがどんなに安全で自立した移動が可能であると伝えても、実感が得られにくく、これらの機器に対する心理的抵抗感を低めることは難しいと考えられる。高齢者自身が、「長時間歩けなくなった」などと日常の生活で不便を感じ始めたときに、自身の身体機能の程度を認識してもらうことと同時に、車いすおよびハンドル形電動車いすを使用することによるメリットを伝え、機器の導入をすすめることで心理的抵抗感が低まるのではないかと考えられる。
高齢者の中には、杖、歩行補助車、車いすなどの移動支援機器を使用している者が多い。しかし、「歳をとったように思われる」などの理由から、機器の使用に対して心理的な抵抗(以下、心理的抵抗感)を示す者がいる(安心院,2013)。移動支援機器に対する心理的抵抗感を低めるためには、これらの機器の有効性について、高齢者に伝えていく必要がある。しかし、高齢者の認識を変えるための効果的な教育内容については明らかにされていない。そこで、本稿では、教育内容を精選するための基礎的資料を得ることを目的として、高齢者自身がこれらの機器に対して心理的抵抗感をどの程度持っているのか、また、活動能力の高低によってそれぞれの機器に対する心理的抵抗感に違いがみられるのかどうかについて明らかにしたいと考えた。
2.方法
(1)調査対象者:65歳~93歳までの高齢者161名であった。そのうち男性が73名(45%)、女性が88名(55%)であった。
(2)手続き:知人の高齢者および知人に紹介してもらった高齢者に対して直接個別ヒアリング調査を実施した。回答に要した時間は平均約30分であった。調査は2013年11月~2014年1月に実施された。質問項目は16項目であった。
3.結果と考察
(1)移動支援機器に対する心理的抵抗感
移動支援機器(杖・歩行補助車・車いす・ハンドル形電動車いす)に対して、どの程度の心理的抵抗感があるのかを、「非常に抵抗がある」を5点、「まったく抵抗がない」を1点としてその平均値を算出した。
杖の心理的抵抗感の得点は1.66、歩行補助車は3.11、車いすは3.90、ハンドル形電動車いすは3.89であった。これらの移動支援機器のうち車いす、ハンドル形電動車いすがほぼ同程度の強い抵抗感があり、杖は最も抵抗感が低いことが確認された。
(2)活動能力の高低による移動支援機器への心理的抵抗感の違い
老研式活動能力指標の生活機能得点の7点以下を活動低群、8点以上を活動高群とし、「活動能力の高低」と「それぞれの移動支援機器の心理的抵抗感」の平均の差の分析を行ったところ、車いす(t(161)=1.84,p<0.05)において有意差が、ハンドル形電動車いす(t(161)=2.20,p<0.10)において有意傾向が確認された(表1)。つまり、活動能力が低い高齢者よりも、活動能力が高い高齢者の方が、車いす、ハンドル形電動車いすに対して心理的抵抗感が高いと言える。
安心院(2012)は、「自立した安全な移動ができる」と認識している者は心理的抵抗感が低くなる傾向にあることを確認している。活動能力が高い者は、もともと自立した移動ができている状態であることが推測される。そのため、車いすやハンドル形電動車いすがどんなに安全で自立した移動が可能であると伝えても、実感が得られにくく、これらの機器に対する心理的抵抗感を低めることは難しいと考えられる。高齢者自身が、「長時間歩けなくなった」などと日常の生活で不便を感じ始めたときに、自身の身体機能の程度を認識してもらうことと同時に、車いすおよびハンドル形電動車いすを使用することによるメリットを伝え、機器の導入をすすめることで心理的抵抗感が低まるのではないかと考えられる。