The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC065] 教師と児童の“授業ルール”認識のズレの特徴とその解消(1)

授業ルール設定の目的の認識に着目して

笹屋孝允1, 児玉佳一1, 川島哲1 (東京大学大学院)

Keywords:授業ルール, 小学校

問題と目的
教室には,社会的文脈の中で教師が児童に期待する,学習や相互行為に関する一定のやり方である「授業ルール」がある(Shultzら, 1983; 有馬, 2000)。授業ルールの遵守は授業を円滑に進めるための手段であり,授業ルールが設定される目的を児童が理解することが重要である(Boostrom, 1991)。近年,高学年の児童の規範意識の低下により,教師と児童の間の授業ルール認識のズレが生じ,そのズレが問題視されている(淵上, 2009)。しかし,授業ルールが設定される目的の認識について,教師と児童の間でどのようなズレがあるのかについてはこれまでに詳細な分析が行われていない。本研究は高学年の児童と教師の間で,授業ルールが設定される目的についてどのような認識のズレがあるのか,その特徴と要因を分析することを目的とする。
方 法
研究協力者 都内公立小学校5年1組にご協力いただいた。男児19名,女児13名の学級であり,担任は教師歴7年目の男性教諭であった。帰国子女の男児1名と,調査時に欠席した女児1名は分析から除外したため,回答者は児童30名と教師1名であった。
予備調査 学級の授業ルールを特定するため,「あなたのクラスで,授業中(先生や友達の話を聞くとき,発表をするとき,グループで話し合うとき,教科書やプリントの問題に答えるとき,など)に守らなければならないきまりやルールを,1行に1つずつ,できるだけたくさん書いてください。」という教示文の質問紙を作成し,教師と児童に自由記述で回答を求めた。(2013年10月)
質問紙調査 予備調査の結果から,児童の回答数が多かった12種類の授業ルールを抽出し,それぞれの授業ルールについて,「それぞれのルールが何のためにあるのか,その理由を書いてください。分からないときは書かなくてもかまいません。」と教示文を提示して,各授業ルールが設定されている目的を児童と教師がどのように認識しているのか調査する質問紙を作成し実施した。また,それぞれの授業ルールを遵守することがどの程度重要だと思うか,5件法で回答を得て遵守重要認識度を得点化し,全児童の平均点を算出した。(2013年11・12月)
結果と考察
教師と児童の質問紙調査の結果を比較し,児童ごとに授業ルールの目的が教師と一致している数を算出した。
共著者間(2名)の相関係数はr=.83であり,不一致項目については協議して決定した。教師と児童の一致率は12種類平均で41.1%であった。一致率が低かった3種類の授業ルールと教師の回答,教師と一致しなかった回答で人数が多かった児童の回答は表の通りである。
主体認識のズレ 表中下線部の回答から,授業ルールが誰のために設定されているのか,その主体(自分・他児・教師)の認識がズレていると言える。例えば②の授業ルールでは,教師は児童(児童にとっては自分)のため,児童は教師や他児のためと認識している。
教師による目的の非表示 教師の回答(①)から,教師が授業ルールの設定されている目的について詳細に児童に表現していないこともズレ要因の1つと推察される。
目的の無認識 遵守重要認識度の平均点が高いものの,児童の未記入が多いことから,児童は遵守の重要性を認識しながらも,授業ルールが設定されている目的を理解していないと言える。
考察 教師が児童との間に授業ルール認識のズレがあると感じた場合,児童の規範意識を高めるだけでなく,教師が積極的に授業ルール設定の目的を伝え,その理解を児童に促すことがズレ解消につながると示唆される。