[PC072] クライシス・カウンセリングの研究
消防職員のカウンセリング希求性について
Keywords:東日本大震災, クライシス・カウンセリング, 消防職員
【目的】
東日本大震災後,消防職員に対するクライシス・カウンセリングの需要が高まっている一方,外部のカウンセラーによる活動が進んでいない現状がある。本研究では,消防職員に対するカウンセリングを外部機関が実施するうえでの障害について検討した。
【方法】
調査協力者:関東地方にあるA県消防機関職員76名(男性66名,女性10名,平均勤務年数22.30年,SD8.98)。ディブリーファー資格保有者5名,支援ディブリーファー資格保有者68名,不明3名。
質問項目: ①フェイスシート:性別,勤務年数,現在の職位,支援ディブリーファー研修の受講期,資格(支援ディブリーファー/ディブリーファー)で構成された。②東日本大震災に関する質問:「Q1)2011年3月11日の東日本大震災が起きた時に何をしていましたか」,「Q2)東日本大震災が起きる前と起きた後で人生観に変化は有りましたか」,「Q3)(あった場合は)消防職員の職業の何に影響を与えましたか」。③消防職員としてのストレス発生要因:「Q4)消防職員としてあなたが被るストレス発生要因としてどの要因が考えられますか」とたずね,(1)義務としての出動,(2)職業意識,(3)組織風土,(4)社会的期待の中から複数回答で選択させた。④危機介入に関する質問:「Q5)消防職員として危機介入(ファーストエイド)を知って,実践していますか」,「Q6)危機介入の手法の一つであるCISM(Critical Incident Stress Management)を知って,実践していますか」,「Q7)カウンセリングが消防組織として行われていますか」,「Q8)業務である「消火活動」「救急活動」「地域の防災活動」その他のどの分野でカウンセリングが必要でしょうか」,「Q9)あなたの家族への心理的支援が組織的に行われていますか」,「Q10)もしカウンセラーが,外部から消防署へ出向き活動する場合に何が課題ですか」,「Q11)消防署にカウンセリングルームができた時に消防官は,相談に行き相談室が活用されると思われますか」。フェイスシートとQ4以外はすべて自由記述形式で回答を求めた。
手続き:本調査は平成26年2月にA県消防機関の支援ディブリーファー研修の中で行われた。回収率は100%であった。
【結果と考察】
人生観の変化
自由記述の回答をもとに分類を行った結果,東日本大震災を受けて人生観に変化があったと答えた者が44名,なかったと答えた者が30名,無回答が2名であった。そこで,無回答の2名を除いて,人生観に変化があった「有群」と変化がなかった「無群」に分けた。
カウンセリングに対する意識調査
Q7~Q11の回答内容を分類した。Q7に「行われている」と回答したのは有群25名,無群15名,「行われていない」と回答したのは有群16名,無群11名であった。Q8に「消防・救急活動 」を挙げたのは有群20名,無群13名,「地域の防災活動」は有群4名,無群0名,その他として「全て」は有群9名,無群5名,「社会からの重圧」は有群0名,無群1名,「職場の人間関係」は有群3名,無群4名,「必要ない」は有群1名,無群0名であった。Q9に「行われている」と回答したのは有群10名,無群7名,「行われていない」と回答したのは有群34名,無群16名であった。Q10に「勤務体制(多忙さ)」は有群2名,無群2名,「プライバシーの保護」は有群6名,無群2名,「上司・組織の理解」は有群11名,無群12名,「カウンセラーが消防を理解すること」は有群14名,無群5名,「外部を受け入れる体制づくり」は有群8名,無群2名,「課題はない」は有群1名,無群2名であった。Q11に「思う」は有群11名,無群9名,「思わない」は有群33名,無群16名であった。χ2検定を行った結果,有意差が認められたのはQ9(p<.01)とQ11(p<.05)であった。
現状では外部のカウンセラーが消防施設で活動を行うことが難しいと消防職員は考えており,その理由として組織風土やカウンセラーに対する不信を挙げていた。カウンセラーが実際に活動を行う以前から,特に幹部に対してカウンセリングへの偏見をなくすような講習・研修を積極的に行い,部下がカウンセリングを気軽に受けられるような組織の意識改革が必要であると考える。
1 質問文では「消防」と「救急」を分けていたが,両者を併記する回答者が多かったため,分析では一つの項目としてまとめた。
東日本大震災後,消防職員に対するクライシス・カウンセリングの需要が高まっている一方,外部のカウンセラーによる活動が進んでいない現状がある。本研究では,消防職員に対するカウンセリングを外部機関が実施するうえでの障害について検討した。
【方法】
調査協力者:関東地方にあるA県消防機関職員76名(男性66名,女性10名,平均勤務年数22.30年,SD8.98)。ディブリーファー資格保有者5名,支援ディブリーファー資格保有者68名,不明3名。
質問項目: ①フェイスシート:性別,勤務年数,現在の職位,支援ディブリーファー研修の受講期,資格(支援ディブリーファー/ディブリーファー)で構成された。②東日本大震災に関する質問:「Q1)2011年3月11日の東日本大震災が起きた時に何をしていましたか」,「Q2)東日本大震災が起きる前と起きた後で人生観に変化は有りましたか」,「Q3)(あった場合は)消防職員の職業の何に影響を与えましたか」。③消防職員としてのストレス発生要因:「Q4)消防職員としてあなたが被るストレス発生要因としてどの要因が考えられますか」とたずね,(1)義務としての出動,(2)職業意識,(3)組織風土,(4)社会的期待の中から複数回答で選択させた。④危機介入に関する質問:「Q5)消防職員として危機介入(ファーストエイド)を知って,実践していますか」,「Q6)危機介入の手法の一つであるCISM(Critical Incident Stress Management)を知って,実践していますか」,「Q7)カウンセリングが消防組織として行われていますか」,「Q8)業務である「消火活動」「救急活動」「地域の防災活動」その他のどの分野でカウンセリングが必要でしょうか」,「Q9)あなたの家族への心理的支援が組織的に行われていますか」,「Q10)もしカウンセラーが,外部から消防署へ出向き活動する場合に何が課題ですか」,「Q11)消防署にカウンセリングルームができた時に消防官は,相談に行き相談室が活用されると思われますか」。フェイスシートとQ4以外はすべて自由記述形式で回答を求めた。
手続き:本調査は平成26年2月にA県消防機関の支援ディブリーファー研修の中で行われた。回収率は100%であった。
【結果と考察】
人生観の変化
自由記述の回答をもとに分類を行った結果,東日本大震災を受けて人生観に変化があったと答えた者が44名,なかったと答えた者が30名,無回答が2名であった。そこで,無回答の2名を除いて,人生観に変化があった「有群」と変化がなかった「無群」に分けた。
カウンセリングに対する意識調査
Q7~Q11の回答内容を分類した。Q7に「行われている」と回答したのは有群25名,無群15名,「行われていない」と回答したのは有群16名,無群11名であった。Q8に「消防・救急活動 」を挙げたのは有群20名,無群13名,「地域の防災活動」は有群4名,無群0名,その他として「全て」は有群9名,無群5名,「社会からの重圧」は有群0名,無群1名,「職場の人間関係」は有群3名,無群4名,「必要ない」は有群1名,無群0名であった。Q9に「行われている」と回答したのは有群10名,無群7名,「行われていない」と回答したのは有群34名,無群16名であった。Q10に「勤務体制(多忙さ)」は有群2名,無群2名,「プライバシーの保護」は有群6名,無群2名,「上司・組織の理解」は有群11名,無群12名,「カウンセラーが消防を理解すること」は有群14名,無群5名,「外部を受け入れる体制づくり」は有群8名,無群2名,「課題はない」は有群1名,無群2名であった。Q11に「思う」は有群11名,無群9名,「思わない」は有群33名,無群16名であった。χ2検定を行った結果,有意差が認められたのはQ9(p<.01)とQ11(p<.05)であった。
現状では外部のカウンセラーが消防施設で活動を行うことが難しいと消防職員は考えており,その理由として組織風土やカウンセラーに対する不信を挙げていた。カウンセラーが実際に活動を行う以前から,特に幹部に対してカウンセリングへの偏見をなくすような講習・研修を積極的に行い,部下がカウンセリングを気軽に受けられるような組織の意識改革が必要であると考える。
1 質問文では「消防」と「救急」を分けていたが,両者を併記する回答者が多かったため,分析では一つの項目としてまとめた。