The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(501)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 501 (5階)

[PC075] Coparentingの勢力基盤が子どもの愛着に及ぼす効果に関する発達的差異

下斗米淳 (専修大学)

Keywords:愛着, 社会的勢力, coparenting

Bowlby(1969, 1973)は,原初的な愛着は行動レベルから表象レベルへと発達しながら,その後の社会的適応を規定するとした。初期の愛着対象は養育者とされるが,その後には友人や恋人を愛着対象とするようになっていく(e.g., Hazan & Shaver, 1987; Connolly, et al, 1996)。しかし青年期においても,社会的適応上の問題や課題の解決に際して親が愛着対象として選択される(e.g., Hendry, et al,1992; Nickerson & Nagle, 2005)。またCauce, et al(1990)や下斗米(2001)は,親に対して子どもは,自身よりも優れた心理資源を有する者として特定の道具的機能をもつ「専門家」として見なすようになると論じる。これらからは,親が愛着対象として重要であり続けると共に,愛着への影響因である養育行動の認知も変化していく(e.g., Bonds, et al, 2002; Karantzas & Cole, 2011)と言える。子どもが認知する親の勢力基盤が表象としての愛着に影響を及ぼすと共に,この勢力基盤に従った父母間のCoparentingのありようは,愛着を規定し,結果として子どもの社会的適応を左右することになると考えられよう(e.g., Floyd, et al., 1998; Teubert & Pinquart, 2010)。以上より,本研究では,父母への子どもの勢力認知及び父母間の勢力基盤類似性が,父母への愛着にいかなる影響を及ぼし,また発達的差異の探索を通して,Coparentingの愛着への効果に関する議論の材料を得ることが目的である。
方法
調査対象者 公立中学1-3年生44名(男12名,女32名,平均年齢14.32歳),公立高校1-3年生88名(男43名,女45名,平均年齢17.27歳),私立大学生1-4年生61名(男24名,女37名,平均年齢20.54歳)。
質問紙の構成 1)フェース・シート:性別,年齢,学年,父母同居状況を尋ねた。2)社会的勢力尺度:今井(1996)の6勢力下位尺度から3項目ずつ選択し,父母毎に“非常に当てはまる”(3点)から“全く当てはまらない”(-3点)までの7件法で回答を求めた。3)親への愛着尺度:佐藤(1993)の尺度15項目について,父母毎に“非常に当てはまる”(2点)から“全く当てはまらない”(-2点)までの5件法で回答を求めた。
結果
勢力基盤と愛着の構造 両尺度の因子分析結果,今井(1996)及び佐藤(1993)と同因子構造が認められたため,各因子構成項目の平均評定値を下位尺度得点とした。
勢力及び愛着の変化 各尺度得点について,父母別に,勢力/愛着*性*学齢段階の3要因分散分析を行った結果,父母共勢力主効果と,母親勢力で性の主効果が認められた。愛着については,父母共愛着と学齢段階の主効果,及び母親愛着において性の主効果が認められた。(表1)
Coparenting類似の群分け 対象者毎に,父母間の6勢力尺度得点の個人内相関係数を算出した上で,分散分析の結果を踏まえ,学齢段階*性計6属性毎に,相関係数値上下位2群に分け,高/低類似者とした。
愛着規定因としての勢力基盤 父母の愛着得点を目的変数,全父母勢力得点を説明変数とする重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。(表2)Coparenting類似効果 父母別に,愛着得点について,愛着*Coparenting*学齢段階の3要因分散分析を行った結果,父母共に3要因の主効果が,また父親では愛着とCoparentingの交互作用効果,母親では愛着と学齢段階及び3要因交互作用効果が認められた。(表3)
考察
表1では,学齢が進むほど概ね専門勢力認知が高くなっており,Cauce, et al(1990)や下斗米(2001)と整合している。表2からは,高校生の父/母親への愛着は父/母親の勢力に規定されており,父母間を独立に捉える傾向をうかがわせるが,中学・大学生においては,父母間の養育行動の組み合わせにより父母それぞれへの愛着が規定されており,一方の親への愛着は他方の親への愛着と相互に依存(Fox, et al, 1991)するものと考えられよう。その組み合わせとしての勢力の父母間の非類似は不信拒否や分離不安を高める傾向がうかがわれた。今後は,補完関係など詳細にCoparentingパタンを検討していく必要があろう。