The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(501)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 501 (5階)

[PC081] 大学生用トラブルチェックリスト開発の試み

橋本剛 (静岡大学)

Keywords:大学生, 適応, ライフイベント

問題と目的
現代の大学生には、学業面はもちろん、対人関係や健康管理、消費行動やネット利用など、種々の問題への対処が求められている。大学生が日々直面している悩みごとやトラブルの把握は、大学教育においても重要な課題であろう。
これまでにも、ストレス理論を援用する形で、大学生が直面する悩みやトラブルをライフイベントやストレッサーと見なし、大学生用ライフイベント尺度やストレッサー尺度を作成する試みは行われてきた(e.g., 久田・丹羽, 1987; 尾関他, 1994; 高比良, 1998; 丹波・小杉, 2006)。しかし、これらの既存尺度には、その古さゆえに悪質商法やネット利用などの現代的問題群が含まれていないという質的問題、そして項目数が多すぎるので実施が容易でないという量的問題がある。
そこで本研究では、それらの問題点を改善し、現代の大学生が経験するトラブルを簡便かつ網羅的に把握しうる「大学生用悩みごとチェックリスト」の開発を試みる。
方法
調査の概要 2013年11月~12月に、静岡県内の大学生に質問紙を実施し、241名(男子123名、女子118名、平均19.2歳)の有効回答を得た。
質問紙の構成 質問紙では最初に、今回開発された大学生用トラブルチェックリストを実施した。ここでは既存尺度を参考にしながら、大学生がトラブルを経験しうる生活領域を12項目設定して、最近3ヶ月の経験頻度を4件法(1.まったくなかった、2.ほとんどなかった、3.ややあった、4.かなりあった)で尋ねた。
さらに基準関連妥当性の検討のために、ビッグ・ファイブ尺度(小塩他, 2012)、一般的信頼尺度(山岸, 1999)、文化的自己観尺度(高田, 2000)、自尊感情尺度(Mimura & Griffiths, 2007)、ソーシャル・サポート尺度(福岡, 2007を若干修正)、他者軽視尺度 (Hayamizu et al., 2004) 、心理的不健康尺度(GHQ-12: 井上,2012を若干修正) も実施した。
結果と考察
トラブル経験状況 トラブルチェックリストの全項目で「まったくなかった」「ほとんどなかった」という回答が過半数を占めていたが、学業、進路や就職、アルバイト、健康や生活の豊かさ、居住環境、サークル活動は、相対的に「ややあった」「かなりあった」という回答が多かった(Table 1)。反社会的被害とネット利用のトラブル経験率は低かった。本研究では12項目の単純加算をトラブル得点とした(M=21.2、SD=5.0、Me=21)。
基準関連妥当性の検討 トラブル得点と心理的不健康はr=.45(p<.001)と高い正の相関を示した。よってトラブルチェックリストはストレッサー尺度としても妥当性を有していると考えられる。
一方、トラブル得点と個人特性の関連では、協調性、一般的信頼、相互独立的自己観、自尊感情、サポートが負の(rs=-.21~-.13, p<.05)、神経症傾向、相互協調的自己観、他者軽視が正の(rs=.19~.22, p<.01)有意な相関を示した。ただし、それらの相関係数はいずれもそれほど高いものではなかった。トラブル経験には状況要因も少なからず影響すると考えられるので、個人特性との関連の弱さは、トラブルチェックリストの弁別的妥当性を示す論拠と考えられよう。