[PC085] 学校における様々なリスク事象に対する認知
社会人を対象としたWEB調査データからの検討
Keywords:学校, 社会人, リスク認知
問題
多数の人が集まり、様々な学習を行う学校には、元来、様々なリスク事象が存在している。それらは地震や台風といった天変地異、火災、感染症の蔓延、給食等での食中毒、教師-生徒間あるいは生徒間での暴力、テロなどの第三者による攻撃、授業内の実験での事故など、枚挙のいとまがないほどである。一方で、社会変化に伴い、学校が責任対象として追究されるケースは増加しているといわれている(河内・植村、2014)。したがって、学校におけるリスク管理は、近年一層重要になっているといえる。
リスクへ管理を考える際、関係者のリスク認知の様態を知る必要がある。河内・植村(2014)は、現役教員を対象として、複数のリスク事象に対する認知を検討し、体罰といじめは実態に比して発生頻度が過大視され、授業中の事故と部活中の事故は過小視されているという結果を得た。しかしこの研究では、保護者サイドのリスク認知は検討されていない。一般の人々が、一般的なリスク事象に対して持つ認知については、これまでに様々な研究があるが(Slovic, 1987など)、学校でのリスク事象に対する認知を検討した研究は多くない。そこで、ここでは、学校で起こりうる様々なリスク事象を取り上げ、それらに対して、保護者を含め一般の人が有している認知を検討した。
方法
調査時期 2014年3月に(株)サーベイリサーチセンターを活用して、WEB調査をおこなった。
調査参加者 全国から男性93名、女性42名の参加者を得た。平均年齢は、51歳(SD=8.46、最小値29-最大値76)で、18歳以下の子どもがいる人が53名、いない人が82名であった。
調査項目 河内・植村(2014)を参考に、学校でのリスク状況として、次の12の状況をあげた。「体育の授業での事故」、「クラブ活動中の事故」、「理科や家庭科での実験や実習中の事故」、「修学旅行や社会見学などの校外活動での事故」、「体罰」、「いじめ」、「登下校時の交通事故」、「食べ物や動物に対するアレルギー反応事故」、「インフルエンザなどの感染症の蔓延」、「地震」、「火事」、「給食での食中毒」。これらそれぞれに、Slovic(1987)を参考に準備した12の形容詞(例:「恐ろしい」、「コントロール困難な」)がどの程度当てはまるかを11段階で評定させた。
結果と考察
リスク事象をまとめて因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行ったところ、先行研究の結果に近い2次元構造が得られた(因子抽出後の累積負荷量平方和は70.25%)。第1因子は「恐ろしさ」(「恐ろしい」、「致死的な(死に至る)」など)、第2因子は「新奇性」(「新しいものだ」、「科学的に未解明な」)と解釈された。2因子に負荷が高い項目の得点を合成して、リスク事象ごとに下位尺度得点を生成し、2次元上にプロットした(Figure 1)。
Figure 1からは、「地震」や「いじめ」など、発生したときに印象に残りやすい事象の「恐ろしさ」が高く認知されていることが見て取れた。逆に、「クラブ活動中の事故」や授業などの教育に関連した活動中の事故の「恐ろしさ」および「新奇性」は、相対的に低く認知されていた。一般の社会人から、これらの活動は安全であることが当たり前と捉えられている可能性が示唆された。
※本研究はJSPS科研費23531068の助成を受けたものです。
多数の人が集まり、様々な学習を行う学校には、元来、様々なリスク事象が存在している。それらは地震や台風といった天変地異、火災、感染症の蔓延、給食等での食中毒、教師-生徒間あるいは生徒間での暴力、テロなどの第三者による攻撃、授業内の実験での事故など、枚挙のいとまがないほどである。一方で、社会変化に伴い、学校が責任対象として追究されるケースは増加しているといわれている(河内・植村、2014)。したがって、学校におけるリスク管理は、近年一層重要になっているといえる。
リスクへ管理を考える際、関係者のリスク認知の様態を知る必要がある。河内・植村(2014)は、現役教員を対象として、複数のリスク事象に対する認知を検討し、体罰といじめは実態に比して発生頻度が過大視され、授業中の事故と部活中の事故は過小視されているという結果を得た。しかしこの研究では、保護者サイドのリスク認知は検討されていない。一般の人々が、一般的なリスク事象に対して持つ認知については、これまでに様々な研究があるが(Slovic, 1987など)、学校でのリスク事象に対する認知を検討した研究は多くない。そこで、ここでは、学校で起こりうる様々なリスク事象を取り上げ、それらに対して、保護者を含め一般の人が有している認知を検討した。
方法
調査時期 2014年3月に(株)サーベイリサーチセンターを活用して、WEB調査をおこなった。
調査参加者 全国から男性93名、女性42名の参加者を得た。平均年齢は、51歳(SD=8.46、最小値29-最大値76)で、18歳以下の子どもがいる人が53名、いない人が82名であった。
調査項目 河内・植村(2014)を参考に、学校でのリスク状況として、次の12の状況をあげた。「体育の授業での事故」、「クラブ活動中の事故」、「理科や家庭科での実験や実習中の事故」、「修学旅行や社会見学などの校外活動での事故」、「体罰」、「いじめ」、「登下校時の交通事故」、「食べ物や動物に対するアレルギー反応事故」、「インフルエンザなどの感染症の蔓延」、「地震」、「火事」、「給食での食中毒」。これらそれぞれに、Slovic(1987)を参考に準備した12の形容詞(例:「恐ろしい」、「コントロール困難な」)がどの程度当てはまるかを11段階で評定させた。
結果と考察
リスク事象をまとめて因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行ったところ、先行研究の結果に近い2次元構造が得られた(因子抽出後の累積負荷量平方和は70.25%)。第1因子は「恐ろしさ」(「恐ろしい」、「致死的な(死に至る)」など)、第2因子は「新奇性」(「新しいものだ」、「科学的に未解明な」)と解釈された。2因子に負荷が高い項目の得点を合成して、リスク事象ごとに下位尺度得点を生成し、2次元上にプロットした(Figure 1)。
Figure 1からは、「地震」や「いじめ」など、発生したときに印象に残りやすい事象の「恐ろしさ」が高く認知されていることが見て取れた。逆に、「クラブ活動中の事故」や授業などの教育に関連した活動中の事故の「恐ろしさ」および「新奇性」は、相対的に低く認知されていた。一般の社会人から、これらの活動は安全であることが当たり前と捉えられている可能性が示唆された。
※本研究はJSPS科研費23531068の助成を受けたものです。