[PC088] 成人男性の性的欲求に関する研究(3)
男性用性的欲求認知尺度の妥当性・関連要因の検討
Keywords:性的欲求, 自尊感情, 異性不安
問 題
下坂(2014a:カウンセリング学会発表)では,男性の性的欲求に関する体験の質的分析にもとづくモデルを生成し,下坂(2014b:日心発表)では男性用性的欲求認知尺度(Sexual Desire Cognit-ion Inventory for Male: 以下,SDCI-M)19項目を作成した。SDCI-Mは4因子構造で十分な信頼性が確認された。本研究では,SDCI-Mの構成概念妥当性の検討と,人口統計学的変数との関連性を検討する。
方 法
1.調査対象者 下坂(2014b)と同様で,成人男性300名,平均年齢35.7歳(標準偏差8.01), 20~49歳の範囲。そのうち,パートナーとのセックス経験がないとした53名を除外した247名。
2.調査時期 2014年2月
3.調査手続き インターネット調査を専門とする業者に委託し,匿名でのWeb上における質問紙調査を実施した。
4.調査内容
(1) SDCI-M 「深い満足」「自己処理」「性的開示」「浮気衝動」の4因子,19項目,5段階評定。
(2)自尊感情 山本ら(1982)による自尊感情尺度10項目,5段階評定。
(3)異性不安 富重(1994)による異性不安尺度9項目,5段階評定。
(4)順法的態度 下坂(2014b)の項目分析で天井効果を示した性的欲求認知に関する5項目が,α係数.716と構成概念としてまとまりがあることが示唆されたので変数化した。
(4)年齢や職業などフェイスシート項目
結 果
1.構成概念妥当性の検討
SDCI-Mの各下位尺度得点と自尊感情,異性不安,順法的態度の合計得点の相関を検討した(Table 1)。「深い満足」は自尊感情と,「自己処理」は異性不安とそれぞれ有意な正の相関を示した。順法的態度の間では「深い満足」「自己処理」が有意な正の相関,「性的開示」は有意な負の相関を示した。これらの結果からSDCI-Mにおける構成概念妥当性の一端が示されたと考えられる。
2.SDCI-Mの年齢要因の検討
調査対象者を世代によって3群に分け,各下位尺度得点の一要因分散分析を行った。分析の結果,「自己処理」(F(2,244)=3.56,p<.05),「性的開示」(F(2,244)=6.97,p.<01)で世代の効果がそれぞれ有意であった。多重比較(LSD法)の結果,「自己処理」は30代・40代より20代が高く(MSe=12.68,5%水準),「性的開示」は40代より20代・30代が高かった(MSe=9.72,5%水準)。
3.関連要因の検討
現在の就業状況を3つに分類し,①正社員(N=190),②契約・派遣・パート・アルバイト(N=25),③離職中・無職(N=12)の3群間でSDCI-Mの各下位尺度得点の一要因分散分析を行ったところ,「自己処理」のみで有意差がみられ(F(2,224)=3.49,p<.05),LSD法による多重比較の結果,契約社員等の群が無職等の群よりも高かった(MSe=12.63,5%水準)。
結婚歴がある対象者において,「子の有無」2群(有=108,無=39)によってSDCI-Mの各下位尺度得点のt検定を行ったところ,「深い満足」で有意差がみられ,子どもがいる群で高かった(t(145)=2.06,p<.05)。
「性風俗サービスの利用経験の有無」(有=141,無=106)によってSDCI-Mの各下位尺度得点のt検定を行ったところ,「性的開示」(t(245)=2.01,p<.05),「浮気衝動」(t(245)=5.16,p<.01)でいずれも利用経験があるとした群が有意に高かった。
4.まとめ
自尊感情,異性不安との相関,および就業状況,子の有無,性風俗サービスの利用状況との関連性の検討結果から,SDCI-Mの一定の妥当性が示されたと考えられる。
注)本研究はJSPS科研費(25590181)の助成を受けた。
下坂(2014a:カウンセリング学会発表)では,男性の性的欲求に関する体験の質的分析にもとづくモデルを生成し,下坂(2014b:日心発表)では男性用性的欲求認知尺度(Sexual Desire Cognit-ion Inventory for Male: 以下,SDCI-M)19項目を作成した。SDCI-Mは4因子構造で十分な信頼性が確認された。本研究では,SDCI-Mの構成概念妥当性の検討と,人口統計学的変数との関連性を検討する。
方 法
1.調査対象者 下坂(2014b)と同様で,成人男性300名,平均年齢35.7歳(標準偏差8.01), 20~49歳の範囲。そのうち,パートナーとのセックス経験がないとした53名を除外した247名。
2.調査時期 2014年2月
3.調査手続き インターネット調査を専門とする業者に委託し,匿名でのWeb上における質問紙調査を実施した。
4.調査内容
(1) SDCI-M 「深い満足」「自己処理」「性的開示」「浮気衝動」の4因子,19項目,5段階評定。
(2)自尊感情 山本ら(1982)による自尊感情尺度10項目,5段階評定。
(3)異性不安 富重(1994)による異性不安尺度9項目,5段階評定。
(4)順法的態度 下坂(2014b)の項目分析で天井効果を示した性的欲求認知に関する5項目が,α係数.716と構成概念としてまとまりがあることが示唆されたので変数化した。
(4)年齢や職業などフェイスシート項目
結 果
1.構成概念妥当性の検討
SDCI-Mの各下位尺度得点と自尊感情,異性不安,順法的態度の合計得点の相関を検討した(Table 1)。「深い満足」は自尊感情と,「自己処理」は異性不安とそれぞれ有意な正の相関を示した。順法的態度の間では「深い満足」「自己処理」が有意な正の相関,「性的開示」は有意な負の相関を示した。これらの結果からSDCI-Mにおける構成概念妥当性の一端が示されたと考えられる。
2.SDCI-Mの年齢要因の検討
調査対象者を世代によって3群に分け,各下位尺度得点の一要因分散分析を行った。分析の結果,「自己処理」(F(2,244)=3.56,p<.05),「性的開示」(F(2,244)=6.97,p.<01)で世代の効果がそれぞれ有意であった。多重比較(LSD法)の結果,「自己処理」は30代・40代より20代が高く(MSe=12.68,5%水準),「性的開示」は40代より20代・30代が高かった(MSe=9.72,5%水準)。
3.関連要因の検討
現在の就業状況を3つに分類し,①正社員(N=190),②契約・派遣・パート・アルバイト(N=25),③離職中・無職(N=12)の3群間でSDCI-Mの各下位尺度得点の一要因分散分析を行ったところ,「自己処理」のみで有意差がみられ(F(2,224)=3.49,p<.05),LSD法による多重比較の結果,契約社員等の群が無職等の群よりも高かった(MSe=12.63,5%水準)。
結婚歴がある対象者において,「子の有無」2群(有=108,無=39)によってSDCI-Mの各下位尺度得点のt検定を行ったところ,「深い満足」で有意差がみられ,子どもがいる群で高かった(t(145)=2.06,p<.05)。
「性風俗サービスの利用経験の有無」(有=141,無=106)によってSDCI-Mの各下位尺度得点のt検定を行ったところ,「性的開示」(t(245)=2.01,p<.05),「浮気衝動」(t(245)=5.16,p<.01)でいずれも利用経験があるとした群が有意に高かった。
4.まとめ
自尊感情,異性不安との相関,および就業状況,子の有無,性風俗サービスの利用状況との関連性の検討結果から,SDCI-Mの一定の妥当性が示されたと考えられる。
注)本研究はJSPS科研費(25590181)の助成を受けた。