[PC090] 防災教育に対する教師の認知
防災教育の内容と教師の理解度
Keywords:防災, 災害, 教育
問題と目的
東日本大震災を受けて,学校における防災教育のあり方についての議論が活発に行われるようになった。平成24年4月には,防災を含む学校における安全に関する取組を総合的かつ効果的に推進するための「学校安全の推進に関する計画」が閣議決定された。防災教育のねらいは,次の3つにまとめられている(文部科学省,2010)。(1)自然災害等の現状,原因及び減災等について理解を深め,現在及び将来に直面する災害に対して,的確な思考・判断に基づく適切な意志決定や行動選択ができるようにする。(2)地震,台風の発生等に伴う危険を理解・予測し,自らの安全を確保するための行動ができるようにするとともに,日常的な備えができるようにする。(3)自他の生命を尊重し,安全で安心な社会づくりの重要性を認識して,学校,家庭及び地域社会の安全活動に進んで参加・協力し,貢献できるようにする。災害が多発する日本においては,上記の目標を達成するための防災教育が活発に行われる必要がある。しかしその一方で,現場の教師にとっては,授業時間数の増加や業務の多様化による多忙の中で,効果的な防災教育を行うことの難しさを感じているものも多いと考えられる。そこで本研究では,現在の学校における防災教育でどのような取り組みがされており,教師たちが防災教育についてどのような認識を持っているのかといった基礎的なデータを収集し整理することを目的とした。
方 法
調査対象者 2014年2月に,全国の小学校,中学校,高等学校の教師を対象とした防災教育に関するWEBアンケート調査を実施した。回答者は,小学校が534名(男性350名,女性184名),中学校が533名(男性408名,女性125名),高等学校が533名(男性455名,女性78名)の合計1,600名(男性1,213名,女性387名)であった。平均年齢は,小学校が47.1歳(SD =9.31),中学校が47.3歳(SD =8.28),高等学校が48.0歳(SD =8.19)であった。
調査内容 教師自身の個人属性のほか,災害リスク認知,防災に関する情報の情報源,防災教育の経験,災害や防災に関する知識,勤務先の学校の防災対策などについてたずねた。
結果と考察
災害や防災について教えた経験は,小学校の教師が最もあると答えており90.1%であった。中学校の教師は80.1%,高等学校の教師は52.3%と最も少なかった。また,どの科目で防災教育を行っているかをたずねたところ「総合的な学習」あるいは「特別活動」で教えたという回答が,小学校では88.1%,中学校では80.6%,高等学校では83.2%となっており,教科教育ではなく総合的な学習などの時間を使って防災教育が実施されていることが明らかになった。
教師は,地震や台風の発生の「メカニズム」については非常によく理解している一方で,「災害時要援護者」,「災害時における民生委員や自主防災組織の役割」など,「地域の守り手」に関する知識は十分ではなく,防災における地域コミュニティに対する理解が十分でないことが明らかになった(図1参照)。
謝 辞
本研究は,JST RISTEX「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」研究開発領域「大規模災害リスク地域における消防団・民生委員・自主防災リーダー等も守る「コミュニティ防災」の創造」の研究成果の一部である。
東日本大震災を受けて,学校における防災教育のあり方についての議論が活発に行われるようになった。平成24年4月には,防災を含む学校における安全に関する取組を総合的かつ効果的に推進するための「学校安全の推進に関する計画」が閣議決定された。防災教育のねらいは,次の3つにまとめられている(文部科学省,2010)。(1)自然災害等の現状,原因及び減災等について理解を深め,現在及び将来に直面する災害に対して,的確な思考・判断に基づく適切な意志決定や行動選択ができるようにする。(2)地震,台風の発生等に伴う危険を理解・予測し,自らの安全を確保するための行動ができるようにするとともに,日常的な備えができるようにする。(3)自他の生命を尊重し,安全で安心な社会づくりの重要性を認識して,学校,家庭及び地域社会の安全活動に進んで参加・協力し,貢献できるようにする。災害が多発する日本においては,上記の目標を達成するための防災教育が活発に行われる必要がある。しかしその一方で,現場の教師にとっては,授業時間数の増加や業務の多様化による多忙の中で,効果的な防災教育を行うことの難しさを感じているものも多いと考えられる。そこで本研究では,現在の学校における防災教育でどのような取り組みがされており,教師たちが防災教育についてどのような認識を持っているのかといった基礎的なデータを収集し整理することを目的とした。
方 法
調査対象者 2014年2月に,全国の小学校,中学校,高等学校の教師を対象とした防災教育に関するWEBアンケート調査を実施した。回答者は,小学校が534名(男性350名,女性184名),中学校が533名(男性408名,女性125名),高等学校が533名(男性455名,女性78名)の合計1,600名(男性1,213名,女性387名)であった。平均年齢は,小学校が47.1歳(SD =9.31),中学校が47.3歳(SD =8.28),高等学校が48.0歳(SD =8.19)であった。
調査内容 教師自身の個人属性のほか,災害リスク認知,防災に関する情報の情報源,防災教育の経験,災害や防災に関する知識,勤務先の学校の防災対策などについてたずねた。
結果と考察
災害や防災について教えた経験は,小学校の教師が最もあると答えており90.1%であった。中学校の教師は80.1%,高等学校の教師は52.3%と最も少なかった。また,どの科目で防災教育を行っているかをたずねたところ「総合的な学習」あるいは「特別活動」で教えたという回答が,小学校では88.1%,中学校では80.6%,高等学校では83.2%となっており,教科教育ではなく総合的な学習などの時間を使って防災教育が実施されていることが明らかになった。
教師は,地震や台風の発生の「メカニズム」については非常によく理解している一方で,「災害時要援護者」,「災害時における民生委員や自主防災組織の役割」など,「地域の守り手」に関する知識は十分ではなく,防災における地域コミュニティに対する理解が十分でないことが明らかになった(図1参照)。
謝 辞
本研究は,JST RISTEX「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」研究開発領域「大規模災害リスク地域における消防団・民生委員・自主防災リーダー等も守る「コミュニティ防災」の創造」の研究成果の一部である。