日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(501)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 501 (5階)

[PC095] もったいない情動喚起場面における児童の反応パターンの発達的変化

黒川雅幸 (愛知教育大学)

キーワード:情動

問 題 と 目 的
 本研究の目的は,もったいない情動の喚起について,発達的変化を明らかにするために,もったいない情動喚起場面における児童の反応を自由記述にて求め,その学年差を明らかにすることである.その際に,黒川 (2012) で明らかにされた5つの認知的評価を抽出する場面を用いる.
方 法
調査対象者 小学校1年生93名,2年生133名,3年生153名,4年生159名,専門学校生93名の計631名であった.
手続き 小学生は,担任の先生のもとで,専門学校生は,筆者のもとで質問紙調査を行った.
質問紙の構成 専門学校生には年齢を尋ねている点と小学生用はふりがなを振っている点が異なるが,それ以外は同じ内容である.
もったいないと感じられる場面:Kurokawa (2011) をもとに作成したもったいないと感じる5つの場面を作成した.4コマ漫画形式であり,最後のコマでの反応を自由記述で求めた.(a) 無駄な出費場面 クレヨンをなくした後,新しいものを買ってもらうが,なくしたクレヨンがみつかったという設定であった.(b) 価値あるものの未発揮場面 もらったジュースを飲もうとしたが,転んでしまい,ほとんど口をつけないまま全部こぼしてしまったという設定であった.(c) 投資分の未回収場面 砂場で城をつくり,友だちに見せようとしたが,友だちを呼びにいく間に城が壊れてしまっていたという設定であった.(d) 価値の損失場面 電気をつけっぱなしのまま外出してしまい,帰宅後に気づくという設定であった(Figure1). (e) 再利用・再生利用可能性の消失場面 姉が着られなくなってしまった服を母親に渡すと,母親が妹に渡すという設定であった.
結 果
反応の分類 各場面における反応の分類を行ったところ,無駄な出費場面では19カテゴリー,価値あるものの未発揮では20カテゴリー,投資分の未回収では17カテゴリー,価値の損失場面では23カテゴリー,再利用・再生利用可能性の消失場面では15カテゴリーに分類可能であった(不適切なものやその他を除く)。心理学を専攻する大学生3名に,独立して反応を分類してもらい,筆者との一致率を算出したところ,κ係数はκ=.76,.76,.67と十分な値を示した。
学年差 各分類に対して,カイ2乗検定を行い(1×5(学年)),有意差がみられた場合において,組み合わせによる比率の差の検定(Ryan法,Bonferroniの修正)を行った.以下,有意差がみられた結果のみ記述する(数字は学年を示す).
(a) 無駄な出費場面
後悔     2,3,4,専>1 2,4,専>3 4>専
罪悪感    専>1,2,3,4 4>3
嬉しい・安心 専>1,2,3 4>1,2,3 3>2,1 2>1
叱責不安   1,4>専 4>2 1>2,3,4 3>2
経済観念   専>1,2,4 4>1,2 3>1,2 2>1
(b) 価値あるものの未発揮場面 
もったいない 専>4,3,2,1 4>3,2,1 3>1
悲しみ    専>4 2>3,4,専 1>3,4,専
困惑     1>2,3,4
失敗への反応 3>1,2,4
(c) 投資分の未回収場面 
原因の追求  専>1,2 4>1,2,3,専 3>1,2
気分を害す  1,2,3>4
悲しみ    1>3,4 2>3,4
怒り     専>2,3,4
(d) 価値の損失場面 
もったいない 専>1,2,3,4 4>2,1 3>1,2 2>1
行動の改善  専>1,2,3 4>1,2,3
後悔     4>3,専 2>1>専 3>専
困惑     1>4 2>3
経済観念   3>1,2,4,専 4>1,専 2>1,専
(e) 再利用・再生使用可能性の消失場面 
もったいない 専>3
罪悪感    専>2,3,4
嬉しい・安心 1>2,3,4,専
気遣い・心配 2,3,4>1