The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(501)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 501 (5階)

[PC097] 援助動機と援助行動の影響要因についての研究

大学生を対象として

李艶 (聖泉大学)

Keywords:援助同期・援助行動・大学生

目 的
途上国のさまざまな困難と問題を解決するためには,先進国からの援助が必要不可欠であり,個人でも募金などの援助を行うべき状況である。ところが,海外への経済的援助活動に関心を持つ人は多いが,実際に援助活動を行う人が少ないのが実状である。
これまで,人がどのような動機・理由で援助行動を行うかについては,多くの研究で取り上げられている。援助行動が生じる要因を大別すると,個人的要因と状況的要因の2つに分けられる(中村, 1976)。従来の援助行動に関する研究では,状況的要因の方が個人的要因よりも,援助するかしないかを決定する際には,大きくかかわっていることが示唆されている(原田・狩野,1982)。しかし,現実の援助場面では,状況的要因のプロセスごとに明確に意識して決定するより,無意識的に判断する場合が多い。ではどのような要因が,援助行動に影響しているのだろうか。先行研究では,次のようにプロセス化されている。状況の発見→援助の必要性の認知→自己責任の確認→援助方法の決定→得失の計算→援助の実行(Latan’e, B Darley,J. M, 1970,)。本研究では,個人から集団への援助行動であっても,責任の分散効果からプロセスの自己責任の確認が低下し,援助行動抑制に影響を与えているのではないだろうか。また,他にはどのような要因が影響するのであろうかについて検討する。そこで本研究は,個人の集団つまり途上国への援助行動を抑制される理由を,個人的要因,状況的要因に着目し,調査研究を行い,それらの要因間の関係を解明するより,(途上国への)援助動機・援助行動を明らかにすることを目的とした。
方 法
被調査者:近畿の大学に在籍する大学生186名(男子97名,女子89名)対象にして,質問紙による調査を実施した。
調査項目:1.個人的要因:個人的要因については,社会適応性,個人志向性・社会志向性,非競争性,外向性,内部統制型,共感性を下位尺度として,計32項目があり,5件法で調査した。2.状況的要因:状況的要因については,状況の発見,援助の必要性の認知,自己責任の確認,援助方法の決定,得失の計算,援助の実行を,個人からの国際援助の場面に当てはめ,オリジナルで質問項目を作成し(李, 2009),計20項目があり,5件法で調査を行った。
状況の発見については,個人からの国際援助の場面に当てはめ,「私は世界の経済格差についてある程度知っている」等の質問項目(問1~4),援助の必要性の認知については,個人からの国際援助の場面に当てはめ,「私は貧しい国への援助は必要だと思う」等の質問項目(問5~7),自己責任の確認については,個人からの国際援助の場面に当てはめ,「自分には,貧しい国の人を援助する責任があると思う」等の質問項目(問8~12),援助方法の決定については,個人からの国際援助の場面に当てはめ,「私は具体的な援助方法を知っている」等の質問項目(問13~14),得失の計算については,個人からの国際援助の場面に当てはめ,「私が援助を行っても,自分が大きな損をするわけではないと思う」等の質問項目(問15~16),援助の実行については,個人からの国際援助の場面に当てはめ,「私は実際に援助を行おうと思う」等の質問項目(問17~20)を作成した。
3.自由記述
援助を抑制される理由,またどうすれば国際格差が縮まるかについて自由記述をしてもらった。
結 果 と 考 察
まず,個人的要因尺度の因子分析を行ったところ,「社会適応性」」,「共感性」,「外向性」「自己中心性」,「非競争性」,「内部統制型」の6因子が抽出された。この結果は,予測していた6側面とほぼ同様の結果であった。つぎに,状況的要因尺度の因子分析を行ったところ,「援助に対する責任」,「援助の必要性の認知」,「援助方法の理解」,「事態の発見」,「得失の計算」,「他者の援助行動の認知」の6因子が抽出された。この結果についても,予測していた6側面とほぼ同様の結果であったといえる。援助行動経験ありの人(1群)と援助行動経験なし,将来しない人(3群)との間に有意差があったことから,また,個人的要因には有意差はみられず,状況的要因に有意差がみられたことから,個人的要因よりも状況的要因の方が援助行動に影響を及ぼすことが確認された。
援助行動経験ありの人(1群)と援助行動経験なし,将来しない人(3群)における個人的要因の因子では,「社会適応性」,「外向性」に有意差があり,1群のそれぞれが有意に高いことがわかった。このことから,社会に適応しており,関心が自己の外側に向かいやすい性格の人の方は,援助行動が生じる傾向があるといえる。逆に,社会への適応が不十分であり,関心が自己の内側に向きやすい人の方は,援助行動が生じにくい傾向があるといえる。すなわち,国際経済格差は社会問題であり,自己の外で起きていることなので,このような人には援助行動が生じにくいと考えられる。
国際援助場面において,状況的要因のプロセスの援助の必要性の認知,自己責任の確認,援助方法の決定が高いほど,援助行動が生じる傾向があるといえる。逆に,低いほど援助行動が生じにくい傾向があるといえる。つまり,プロセス自己責任の確認の低下が援助行動を抑制しているのではないかという仮説を支持した結果といえる。また,プロセス援助の必要性の認知や援助方法の低下も援助行動を抑制している可能性があるといえる。
文 献
中村陽吉 1976 援助行動の研究‐援助しやすい人の性格特性 東京都立大学人文学部 人文学報111,11-22.
酒井・山口・久野 1998 心理測定尺度集Ⅱ 価値志向性尺度