The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PD040] 聴覚障害者のS-HTPについての一考察

粟村昭子 (関西福祉科学大学)

Keywords:聴覚障害, S-HTP

問題と目的
描画テストはパーソナリティテストとしてまた知能測定のために使用されてきた歴史がある。S-HTPはBuckのHTPとは異なり、一枚の絵の中に家と木と人を入れて自由に描いてもらうものである。はじめてこの技法を本格的に研究した三上(1995)はその利点について、別描きHTPよりも受検者に与える心理的負担が軽度で、組み合わせて描くことでより信頼性の高い評価が可能となると述べている。
ところで、聴覚障害者への心理臨床は意外にもかなり最近になって始まったところである。聴覚障害者の問題はコミュニケーションの問題ともいわれるが、健康な聴覚障害者の基礎的資料はまだそろっているとはいえない。今回、聴覚障害者の方々にS-HTPを描いてもらう機会を得た。本研究では、視覚優位の認知的特性をもっている聴覚障害者のS-HTPにおける特徴を調べることを目的とする。

方法
調査参加者は10代後半から40代前半までの聴覚障害者、男性14名、女性10名である。調査期間は2013年3月より2014年5月までであった。参加者はすべてことばを獲得する以前に聴力の障害をもち、現在、自立して生活している。
教示は手話ではイメージを固定してしまう恐れがあったために文章で提示した。

結果と考察
得られた結果の一部をTable 1に示す。
田畑(2006)の大学生被検者での調査結果と同様に、統合性や遠近感において三上(1995)のそれと比べるとかなり低い値を示しているといえる。三沢(2008)や渋川、松下(2007)などが指摘している発達停滞という問題が聴覚障害者にも生じていることが考えられるかも知れない。
しかしその一方で聴覚障害者は日常的に絵をことばの代わりとして使うことも多いことから、描画のもつ意味合いが健聴者のそれと異なることも否定できない。実際、非常に説明的な絵が多くみられた。遠近感の独特な表現などもあり、判断に迷うことが多かった。今後、さらに被検者数を増やし検討を加える必要があると考える。