日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD043] 教員養成課程学生における自律的な学習動機づけ像の再検討

課題価値と自己決定理論(有機的統合理論)の関係から

伊田勝憲 (静岡大学)

キーワード:自律的動機づけ, 統合的調整

問題と目的 自己決定理論(Ryan & Deci,2002なと?)における有機的統合理論て?は,内発的動機つ?け(内発的調整)か?最も自己決定性の高い状態として描かれ,統合的調整や同一化的調整とあわせて自律的動機つ?けと括られることもある。しかし,統合的調整は質問紙法の下位尺度として設定されないことも多い。また,大学生を対象に調査した伊田(2003)は,自我同一性や自己充実的達成動機などを自律性の指標として,Eccles & Wigfield(1985)による課題価値の概念的枠組みを精緻化して関連を検討した結果,教職第一志望の学生群では,課題を楽しいと感じる興味価値よりも,将来の職業実践に役立てるという実践的利用価値の方が自律性指標との関連が強かった。伊田(2014,発心発表)では,学期始めの統合的調整がすべての課題価値の希求と有意な正相関を示した。本研究では,同一講義の学期末時における課題価値評定を取り上げ,各調整段階との関連を検討する。
方法 (1)調査時期:2014年1月。(2)対象:4年制国立大学の教員養成課程の心理学系必修教職科目受講生91(男性44,女性45,不明2)名。主に2年生で,平均年齢は20.02(SD=0.97)歳。(3)質問紙の内容:①課題価値測定尺度(評定)……伊田(2001)による5下位尺度,計30項目。7段階評定。②自己決定理論(有機的統合理論)に基づく項目……岡田・中谷(2006)およびWilson, Rodgers, Loitz, & Scime(2006)などを参考に作成した5下位尺度,計30項目。7段階評定。
結果 (1)尺度の構成:下位尺度間相関および各下位尺度の内的整合性による信頼性係数の推定値は,課題価値測定尺度がr =.456(公的獲得価値と制度的利用価値)~.820(制度的利用価値と実践的利用価値),α=.87~.95,自己決定理論に基づく尺度項目がr =.376(内発的調整と取り入れ的調整)~.796(取り入れ的調整と外的調整),α=.80~.91であった。(2)尺度間相関:すべての組合せで有意な正相関(r=.395~.854)が見られた。自己決定理論に基づく項目について,各調整段階と課題価値の関連を検討するため,他の4つの調整段階を統制して課題価値との偏相関係数を算出した(Table)。各調整段階において2つ前後の課題価値と有意な偏相関が認められた。
考察 自律的と言われる3つの調整段階に着目すると,同一化的調整は教職志望を軸に採用試験突破を含む目標に焦点が合わせられている一方,統合的調整は,自己の成長に重点を置き,試験対策の自己目的化を抑制しているように見える。また,内的調整は楽しさと同程度に他者から見た望ましさの獲得と関連しており,楽しさを“演出”していることも危惧される。今後,複数の調整段階が同時に機能した場合の課題価値との関係からも検討したい。