The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PD053] AD/HD児童とASD児童のかけ算習得時に見られる誤り

WISC-Ⅳにおける認知熟達度指標(CPI)との関連から

高畑英樹 (神戸市青陽西養護学校)

Keywords:九九習得, 認知熟達度指標, ワーキングメモリ

問題と目的
わが国の小学2年生で学習する乗法学習は九九学習といって,九九を唱えて記憶するという日本独自の学習方法である。
九九習得を情報処理プロセスに当てはめると,九九を唱えて音声として入力し,リハーサルによって,短期記憶から長期記憶への情報処理を行っている。必要なときに情報を取り出して計算に使用している。やがて,九九を唱えなくても九九にあたる答が瞬時に再生できる(これを自動化あるいは自動処理と定義)ようになる。新規学習である九九学習では,入力から統合,出力までのプロセスに負荷のかかる活動であるといえる。この段階におけるワーキングメモリの役割は大きく, ワーキングメモリに課題のあるAD/HD児童やASD児童には,習得に困難が予想される。そこで,本研究では,九九学習の習得状況(所要時間・正答数・自動化)とWISC-Ⅳによる認知特性,とくにワーキングメモリ指標(WMI)と処理速度指標(PSI)を1つの標準得点として統合した認知熟達度指標(CPI)との関連について検討することを目的とする。
方 法
対象
知的に遅れのない2年生児童4名(AD/HD児童2名,ASD児童2名)であった。なお,事前に研究の説明を本人と保護者に行い,承諾を受けた。
課題と手続き
被乗数1から9に,それぞれ乗数を1から9までをかけた81問のカードを用意し,問題をランダマイズして,「○×△=」の形で6列(1列14問,最終列のみ11問)のプリントをA4サイズで作成した。字体はHG教科書体を用い,ポイント数は16ポイントを使用した。「始め」の合図開始と同時に,所要時間を計測し,問題を解く様子を観察した。
結 果
以下(表1)に示したように,C児とD児に誤りが見られた。C児は,問題をみた後,何度も九九を唱えながら解答していた。
考 察
九九が自動化に至れば, ワーキングメモリの負荷が軽減されるため, 九九学習では,ワーキングメモリの弱い児童が自動化に達する支援を行うことが重要であろう。そのためにも,困難が予測される児童への早期からの支援が大切である。聴覚的ワーキングメモリの指標とされるWMIが弱いA児は自動化に至っている。同様にWMIが弱いC児は自動化に至っていない。C児の場合,GAIとCPIの比較で差が18と稀な差に近い値となっている。すばやい視覚処理と良好な心的コントロールによって代表される認知的情報処理の未熟さのため,九九学習の習得に苦戦したと推測される。知的に遅れがない児童で九九学習の習熟に苦労している場合,WMIとPSIのどちらにも負荷がかかる可能性が高く,CPIに着目してみることが重要であることが示唆された。