[PD059] 障がい児保育の経験と保育士が持つ保育環境に対する意識の関係について
保育士の持つ負担感に対する支援のありかたを考える
Keywords:障がい児保育, 保育士の資質向上, 育ち合う関係
I.研究の目的
本研究では、保育士が、肉体的な疲労やストレス、無力感や挫折、絶望感を感じながらも、自らも学び「育つ」楽しさ、そして援助者として「育てる」楽しさを、どうすれば獲得することができるのかを考えていきたい。
ここでは、保育士が今抱えている問題を具体的に整理し、保育士間で、それらに対する認識の違いや対処能力の違いを作り出している要因を明らかにすることを目的としている。このために、調査票を作成し、障がい児保育の経験が保育士の認識とどのような関係を持っているのかを検討する。これらの分析を通じて、保育士の資質向上に向けての障がい児保育の取り組みや援助の方法、他機関との連携システム作りを模索し、保育所における障がい児保育がより充実するためには、どのような研修体系や教育システム、制度が必要かを考えていきたいと思っている。
II.研究の方法
質問紙によるアンケート調査
1)調査対象
私立保育所に勤務する保育士 32名
知的障害児通園施設に勤務する保育士 20名
の計52名を対象にしている。
A)保育士という職業に対する意識項目
(1)保護者に対しての意識(17項目)
(2)保育士という仕事に対しての意識(25項目)
(3)保育の施策や制度に対しての意識(12項目)
B)職業性ストレス簡易調査項目
保育士の個人的ストレス状況を確認した。
調査項目は、仕事の量的質的負担度や対人ストレス度、仕事のコントロール度、上司や同僚の支援度、仕事の適正度や働きがい度など57項目から成り立っており、これを4件法で回答してもらった。
2)分析方法
分析は統計ソフトSPSSを用いて行われた。単純集計の後、各基本属性とのクロス集計を行った。
Ⅲ.結果と考察
保育の現場で保育士が感じている感情の多くは、「できた」「うれしい」「かわいい」などポジティブなものであった。特に成長発達が著しい乳幼児期は、運動能力(這う、伝い歩き、独歩など)の発達や生活習慣(排泄・食事・衣服の着脱など)の獲得、子どもとの表情や言葉でのやりとりの中に、その成果を直感できる機会が多くあり、自分がやったことの成果がはっきりわかり、手ごたえや、やりがい、仕事の効力感につながっていると思われる。
また、肉体的な負担は感じていても、精神的な健康度は高く、仕事や家庭生活に満足している保育士が多いという結果がえられた。上司や先輩から適切に指導や助言がもらえている、保育士同士が連携して子どもを見ていると感じるなどの質問に対して「はい」と答える割合が高く、保育士を支える背景としては、上司からの助言や同僚との協力が大きくなっていた。
研修の機会も6割は十分に取れていると回答しているが、継続した研修の機会が少ないこと、非常勤職員に任されることが多い障がい児保育であるが、非常勤職員の研修の機会は少ないなど、研修の質や内容には課題が残ると考えられる。
障がい児保育経験のある人のほうが、気になる子が増えている、育児力が低下していると感じる割合が高く、子どもや子どもを取り巻く状況について敏感に反応していた(図1)。また、労働条件が厳しい、職員同士の連携が取れていないと感じている人が多いことがわかった。障がい児保育担当になると、子どもとのかかわりの中で悩むことも多く、担任と連携が取れていないと孤独感を持ったり、精神的に負担を感じたりすることも多いのではないかと考えられる。また、障がい児保育の経験の無い人のほうが、障がい児保育はしんどくないと感じている人が多く、保育に対して困り感をあまり持っていないことが示された。このことは、実際の保育経験が認識と強く関係していることを示唆している。
本研究では、保育士が、肉体的な疲労やストレス、無力感や挫折、絶望感を感じながらも、自らも学び「育つ」楽しさ、そして援助者として「育てる」楽しさを、どうすれば獲得することができるのかを考えていきたい。
ここでは、保育士が今抱えている問題を具体的に整理し、保育士間で、それらに対する認識の違いや対処能力の違いを作り出している要因を明らかにすることを目的としている。このために、調査票を作成し、障がい児保育の経験が保育士の認識とどのような関係を持っているのかを検討する。これらの分析を通じて、保育士の資質向上に向けての障がい児保育の取り組みや援助の方法、他機関との連携システム作りを模索し、保育所における障がい児保育がより充実するためには、どのような研修体系や教育システム、制度が必要かを考えていきたいと思っている。
II.研究の方法
質問紙によるアンケート調査
1)調査対象
私立保育所に勤務する保育士 32名
知的障害児通園施設に勤務する保育士 20名
の計52名を対象にしている。
A)保育士という職業に対する意識項目
(1)保護者に対しての意識(17項目)
(2)保育士という仕事に対しての意識(25項目)
(3)保育の施策や制度に対しての意識(12項目)
B)職業性ストレス簡易調査項目
保育士の個人的ストレス状況を確認した。
調査項目は、仕事の量的質的負担度や対人ストレス度、仕事のコントロール度、上司や同僚の支援度、仕事の適正度や働きがい度など57項目から成り立っており、これを4件法で回答してもらった。
2)分析方法
分析は統計ソフトSPSSを用いて行われた。単純集計の後、各基本属性とのクロス集計を行った。
Ⅲ.結果と考察
保育の現場で保育士が感じている感情の多くは、「できた」「うれしい」「かわいい」などポジティブなものであった。特に成長発達が著しい乳幼児期は、運動能力(這う、伝い歩き、独歩など)の発達や生活習慣(排泄・食事・衣服の着脱など)の獲得、子どもとの表情や言葉でのやりとりの中に、その成果を直感できる機会が多くあり、自分がやったことの成果がはっきりわかり、手ごたえや、やりがい、仕事の効力感につながっていると思われる。
また、肉体的な負担は感じていても、精神的な健康度は高く、仕事や家庭生活に満足している保育士が多いという結果がえられた。上司や先輩から適切に指導や助言がもらえている、保育士同士が連携して子どもを見ていると感じるなどの質問に対して「はい」と答える割合が高く、保育士を支える背景としては、上司からの助言や同僚との協力が大きくなっていた。
研修の機会も6割は十分に取れていると回答しているが、継続した研修の機会が少ないこと、非常勤職員に任されることが多い障がい児保育であるが、非常勤職員の研修の機会は少ないなど、研修の質や内容には課題が残ると考えられる。
障がい児保育経験のある人のほうが、気になる子が増えている、育児力が低下していると感じる割合が高く、子どもや子どもを取り巻く状況について敏感に反応していた(図1)。また、労働条件が厳しい、職員同士の連携が取れていないと感じている人が多いことがわかった。障がい児保育担当になると、子どもとのかかわりの中で悩むことも多く、担任と連携が取れていないと孤独感を持ったり、精神的に負担を感じたりすることも多いのではないかと考えられる。また、障がい児保育の経験の無い人のほうが、障がい児保育はしんどくないと感じている人が多く、保育に対して困り感をあまり持っていないことが示された。このことは、実際の保育経験が認識と強く関係していることを示唆している。