The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PD070] 実験前後における「物の浮き沈み」説明の変化

材質の異なる物体の浮き沈みについて

阪脇孝子 (早稲田大学)

Keywords:科学的概念, 浮力

【目的】日下(1985)では「物の浮き沈み」に関して子どもが信念と矛盾する事態に直面した時の反応を検討している。阪脇(2014: 日本発達心理学会第25回大会論文集)でも,これと関連して,実験前後の物の浮き沈みに関する判断基準の変化に関連する検討を行っている。一方Koslowski (1996)においては,科学的課題において,信念と,データなどによって与えられた要因と結果の共変関係の情報とをどう関連づけるかを問題としている。浮き沈みの課題においても,実験で確かめられた浮く物・沈む物それぞれに共通する特徴と信念との関連づけを検討することで,変化をより明確に捉えることができるだろう。そのため,ここでは判断基準の変化のみではなく,上記のような点を特に考慮して検討を行う。
【対象者】小学校1, 2年生30名(うち1年生6名),3, 4年生26名(うち3年生8名),6年生27名。
【方法】ここでは、木とアルミを題材とした実験を取り上げる。浮き沈みに関する課題を複数,同時実施した中の一つである。(1) 対象者に木のブロック2つを見せた。片方は小さくて軽く,片方は大きくて重い。(2) 水に入れた時、これらが浮くか沈むかの予想と判断の理由を質問した。(3) 実際にこれらを水に入れて結果を確かめた。(4) 結果を見た後の説明の変化について質問を行い,必要に応じて追及を行った。(5) 対象者にアルミホイルとアルミの固まりを見せた。アルミの固まりは先に示した大きい方の木より重いものである。その上で木の場合と同様の一連の手続きを行った。(6) ここまでの手続きで浮き沈みの判断基準を明確に回答できない場合や一貫性のある説明をしていない場合などに必要に応じて追及の質問を行った。アルミホイルは表面張力が働かないように水に入れ沈むところを見せた。物質の比重を考えなくても,木が両方浮きアルミが両方沈むという結果から,木に共通する点,アルミに共通する点に注意しやすくなると考えられる。
【結果と考察】ここでは,木とアルミの浮き沈みに関する最初の信念と,それぞれの浮き沈み確認直後の説明を比較する。その際,冒頭で述べた目的に従い,2つの木の共通性, 2つのアルミの共通性を考慮している説明を区別した。予測に関しては,共通性を考慮していない説明としてa.「なんとなく」や過去の経験を述べるだけなど明確な理由説明がないもの, b. 大きい方と小さい方で異なる結果を予想し,単純な大きさ・重さ・長さなどの比較 (「重い方が沈む」,「軽い方が浮く」など)や 関連の低い特徴により説明をしているもの /同じ結果を予想していても,説明の要因に統一性のないものや主観性が強い説明,c.空気や力の働き,水と比較した重さなど一般性のある内容にふれるが,大きい方と小さい方で異なる結果を予想するもの(「アルミホイルは水より軽いから浮く」など)などを分類した。一方,共通性を考慮に入れた説明として,d1.「木でできたものは浮く」など同じ材質で共通した結果を予想するがそれ以上の説明がないもの,あるいは「(ほかの物と比べて)木は軽いから浮く」など共通する性質としての重さなどによる説明,d2.共通した結果を予想し,正確でなくても空気や材料の性質と関連づけた統一性のある説明があるもの(「空気の通り道があるので木が浮く」,「水をはじくアルミは沈む」など),d3.共通した結果を予想し,正確でなくても水との重さの比較や力の働きなどより一般的な性質にふれ,統一性のある説明を行っているものを分類した。「木は両方沈む」など判断が誤りで共通性を考慮した説明をする事例も含むため,判断の正誤とは一致しない。実験後の分類は,すでに事実を確認しているため,大きい方と小さい方について統一性のある説明があるかどうかを特に問題とするが,その他の点では実験前の基準に準じた。結果をそれぞれTable1,Table2に示した。なお手続きの不備や時間不足などによりアルミの質問ができない例がありTable1では1,2年から3名と6年から2名、Table2では1,2年から2名と6年から1名を分析から除外した。
実験前の信念に関しては,高学年の方がより共通性にふれた説明を行うとはいえないが,実験後では特にアルミに関して高学年に共通性を考慮した説明が目立つ。その中には明確な理由説明のない回答も多く,高学年ほど,明確な理由が説明できなくとも,実験で得られた情報を重視して説明しようとする傾向にあるといえる。今後,説明の変化の詳細を合わせて検討する必要がある。