日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(501)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 501 (5階)

[PD073] 子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(8)教師の保護者・地域への信頼

連携を支えるアンカーポイント行動への積極性の観点から

酒井厚1, 眞榮城和美2, 梅崎高行3, 前川浩子4, 則定百合子5, 上長然6, 田仲由佳7 (1.山梨大学, 2.清泉女学院大学, 3.甲南女子大学, 4.金沢学院大学, 5.和歌山大学, 6.佐賀大学, 7.神戸医療福祉大学)

キーワード:信頼, 仲間関係, 地域連携

目的 子どもの社会性は、家庭-学校-地域が有機的に機能した生態学的システムのなかで発達していく(Bronfenbrenner, 1978)。小泉(2002)は、この三者間の関係性をより良くするために、学校が地域に位置づき人と環境の相互交流を促進するアンカーポイント機能を発揮することが重要であると主張した。学校が家庭や地域とより良い関係を構築するためには、個人レベルにおいて教師が保護者や地域住民への信頼を抱くことが重要であり、信頼は教師が両者と協働する経験を通じて育まれていくことが予想される。本研究では教師による保護者や地域住民との連携を支えるアンカーポイント行動に注目し、その積極性が教師による両者への信頼とどのように関連するかを検討する。
方法 対象者はA県内4つの市町の公立小学校の教員271名であった(平均年齢は44.9歳)。
調査内容 ①対象者の年齢や性別などの属性、勤務校の地域が出身地あるいは居住地かを尋ねた。②対象者が勤務校の地域を生活空間として意識している程度を評価するため斉藤(1989)の社会考慮尺度を改変して使用した(5項目・5件法)。③勤務校による地域との連携経験を尋ねた。④対象者による保護者-学校-地域間の連携活動への積極性を評価する「連携におけるアンカーポイント行動尺度」を作成した。23項目(5件法)の因子分析(主因子法・promax回転)の結果、「子どもの仲間づくりの協働」、「子どもを地域につなげる活動」、「地域への貢献活動」の3因子が抽出された。⑤対象者の保護者への信頼を評価するため酒井(2005)の対人的信頼感を改変したものを使用した(6項目・5件法)。⑥対象者の地域への信頼を評価するためWilliams(2006)によるSocial Capital Bonding Scaleを邦訳したものを使用した(4項目・5件法)。
結果と考察 教師によるアンカーポイント行動への積極性と保護者や地域への信頼との関連について、他の変数との関連も考慮して検討するため階層重回帰分析を実施した(表1)。その結果、保護者への信頼の高さには、「地域考慮度の高さ」と「子どもを地域につなげる活動への積極性」が有意に予測していた。「子どもを地域につなげる活動」は、児童に地域の人的資源(商店街や農家など)を利用した体験学習や地域イベントへの参加を促すことを意味している。こうした活動には保護者の協力が求められるものであることから、教師が保護者に依頼し保護者がそれを受けるやり取りを通じて教師の信頼が高まるプロセスが考えられよう。一方、地域への信頼の高さには、「地域考慮度の高さ」の他に「子どもの仲間づくりの協働への積極性」が有意に予測していた。「仲間づくりの協働」は、保護者や地域住民が一緒になり子ども同士を関わらせる機会を提供する項目で構成されている。子どもの社会性を育むという共通した目的のもとに複数の大人同士が取り組む経験が、教師が所属する地域への信頼を醸成することが伺われる。